表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/36

令嬢とメイドのお茶会

 

「一体どう言うことなの?」


 ここにきて又もやエメロードは困惑していた。

 何故ならば、城に着き次第すぐに王太子宮に連れて来られたのだ。

 しかも裏口から…。


「ねぇ、イリア。私達はなんで裏口から、王太子宮に案内されたんだと思う?陛下から任命を直々に貰ったのよ?扱いおかしくないかしら?しかも説明が一切ないのよ?私、帰りたい…」


「もろもろ分かりませんが、最後のお嬢様のお願いは、叶えられそうにありません……。先程、案内した者もこちらで、待つようにしか言わなかったので…」


 二人で顔を見合わすも全く以て理解が出来ない。

 何故ならここが『王城』ではなく『王太子宮』だからだ。


 エメロードは、王都の屋敷に行くつもりだったのだ。

 それが、屋敷に行けば『王城内に部屋を用意したから、そちらを使うように』と陛下から連絡があったらしい。

 なのに通されたのは、王太子宮。


 その名の通り、王太子宮は『王太子』の私室がある場所だ。

 今回、エメロードは『王太子殿下の教育係』に任命はされたので、こちらには来るかも知れない…とは思っていた。『教育』と言う関係上では…。

 思ってはいたが……思ってはいたのだが、ここに住むことになるとは思っていない。

 だが、エメロード達が居る部屋には、既に荷物が届けられており、これからこの部屋を使う事が容易に分かる。


「これは家への報告が大変だわ…。なんて説明したら良いと思う?」


「………ありのままが良いかと。下手に隠されても、後々にバレますから」


 そう言って天井を見るイリアに、エメロードも頷くしかなかった。


 そこへノックが。

 エメロードがイリアへ入室の許可を出す。

 現れたのは、一人の女官。


「失礼します、クリスタリザシオン様。王太子宮の女官長を任されているグルナ・レヴィジュと申します。本日より身の回りのお世話をさせて頂きますので、よろしくお願い致します」


 そう言ってお辞儀をした彼女は、女官長と言う割には若いように感じる。


(これからお世話になるのだから、いい人間関係が築けるといいな…)


「これからよろしくお願いしますね、レヴィジュ様」


「どうぞグルナとお呼び下さい、クリスタリザシオン様」


「分かったわ、グルナ。それで…さっそくなのですが、こちらの部屋は私が使う部屋で間違いがないのかしら?」


「はい。こちらのお部屋で間違いはありません。何か問題がございましたでしょうか?」


「いえ確認を、と。なにせ私は国王陛下に呼ばれたのに、王太子宮へ来たものだから…なぜこちらに部屋を用意したのか分かりますか?」


「それは…後ほど、陛下が御出でになります。陛下よりお話をお聞きください」


 そう言って一礼するとグルナは部屋を後にした。


「………ねぇ、イリア。どう思う?」


「そうですね…あんなに若い女官長は初めて会いました。人事的に問題があるのでしょうか?それに女官長の口から説明出来ない…それを考えると、思っていたよりも事態は、深刻なのではないでしょうか?」


「そうね…確かに王太子宮と言う割には人の気配が少ないわね。とにかく陛下を待ちましょうか」


 そう言って、イリアはエメロードにお茶を淹れさせた。

 本来であれば主人であるエメロード自身が、お茶を淹れる事はない。

 だが、イリアは敢えて自分でお茶を淹れる、エメロードを止める事もしない。

 何故ならエメロードの趣味が『お茶を淹れる事』であるからだ。

 その腕前は、イリアおも凌ぐ。

 下手をすれば、クリスタリザシオン家では一番上手いと思う。


 そのお茶を淹れる事で、敢えて心を落ち着かせようとしているエメロードを止める事は出来ないのだ。

 エメロードもイリアが分かっていてくれるので、自分でお茶を淹れている。


(こうやって、自分を分かってくれている人が側に居てくれるのは、とてもありがたいことだわ)


 そう思うからこそ、エメロードもイリアに頭が上がらないのだ。


 お茶を淹れ、そこから二人の御茶会と言う名の『作戦会議』が始まった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ