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第57話 行動開始

 私がパフ様に事の顛末を伝えると、酷く「人間とは恐ろしいものよのう」と何度もしみじみと言っていた。


 私の心を壊す作戦といい、王達の濡れ衣謀略といい、シンプルな生活をするレッドドラゴン達からすれば考えられないのだろう。


 その後、適当に狩りをして帰ったら腹を空かせたオムが出迎えてくれた。


 いや、朝ご飯結構食べてたよね?


 その後結界の中でしか動いてないから別に運動もしてないよね?


 「頭とスキルを使うのは結構エネルギーを使うからお腹が空くんですよ。」


 確かに私にも覚えがあるから、急いでご飯を作ってあげることにした。


 そういえば私もスキル覚えたての頃は良くお腹が空いてたっけ。


 その都度私は生命の玉でエネルギーを補充できたし、自分自身を生命の玉で強化したことでそう簡単にはエネルギー切れを起こさなくなった。


 オムにも少しずつ生命の玉での強化をすることにしよう。


 「それで、どんな感じにすることにしたの?」


 お昼ご飯に狩ってきた猪の内臓を使った鍋を作りながら聞いてみる。


 「うん、色々考えたり調べたけど、まずはミコト1人で王宮に忍び込んで王様からスキルを奪ってきて欲しい。」


 「え?人探しはどうなったの?」


 「順を追って説明するよ。」


 そうしてオムが説明してくれた作戦は私では絶対に思いつかないものだった。


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 翌日の夜、赤竜島から全速力で空を飛び、王都にやってきた私は真っ直ぐ上空から王宮を目指す。


 見張りも門番も空から人が飛んでくるとは思っていないから難なく王宮の屋根に辿り着いた。


 もっとも、仮に上空を警戒していたとしても『迷彩』を発動中の私を見つけられるとは思わないけどね。


 オムによると王の居室があるのがこの王宮の最上階だということなので空から行くのが最短距離だ。


 最上階の窓を覗いて回ると、大きなバルコニーがある窓があった。


 おそらくはあそこが王の居室に違いない。


 やはり空を飛んでの侵入を想定していないらしく、兵士すら立っていない。


 中を覗くと大きなベッドで誰かが寝ているのが見える。


 今回は誰にも気付かれないように、とオムに念を押されているので壁や窓をぶち破って入るのではなくベッドサイドの空間と外の自分を入れ替える瞬間移動で音もなく侵入する。


 そして寝息を立てる男を鑑定、間違いなくこの国の王だ。


 『リーダーシップ』のスキルがあることからも間違いない。


 オムによるとこのスキルを持つのは王と王太子のみと聞いているが、目の前の男の年齢からしても王に間違いはないだろう。


 そっと左手で触れてリーダーシップスキルのみを奪う。


 そして来た時と同じように部屋を出て上空に飛び、赤竜島に帰還する。


 キャンプ地点に着陸すると、万が一があってはいけないとテント全体を覆っていた時間停止を解除する。


 時間停止している場所は襲撃の心配がない。


 並行作業が出来ないのが難点だけど、結界だと時間が読めない別行動をしている間に窒息されちゃうと困るから仕方がない。


 「あれ?ミコト早く行ってきなよ。」


 「馬鹿ねぇ、今帰ってきたところよ。ほら、ちゃんと奪ってきたわよ。」


 「あ、そうか。時間止まっていたせいで、まるで一瞬で全てが終わったみたいだね。何というか本当に反則なスキルだね。おかえりなさい。」


 「ただいま。私としては結構ドキドキしたのよ。絶対に見つかっちゃだめって言うからさ。」


 「まあまあ、これはこれで大事なことだからさ。ミコトなら問題なくできると思っていたよ。」


 「まあね、問題はなかったけどさ。緊張しないわけじゃないのよ。」


 「うんうん、良く出来ました。」


 そう言って何とオムは私の頭を撫でてきた。


 一瞬攻撃を警戒して身を固くしちゃったけど、相手が相手なので安心して身を委ねてみた結果、私は大いに混乱してしまった。


 頭を撫でられるなんて、ロッソ先生に何度かされたくらいしか記憶にない。


 色々あって町を出た後は何だかんだで1人で生きてきた。


 もちろん、近所づきあいや仕事の上でお世話になった人は一杯いるけど、こうして仲間って言うのは初めてだ(人間では)。


 しかも、年上で頼れる相手に褒められて頭を撫でられるなんて・・・


 体の芯がじんわりと暖かくなっていくのを感じて、いつまでもこの時間が続けばよいなと思った。

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