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第3話 山の中で①

 山に入って1日目の野宿だ。


 山の夜は空を木々で覆われているのでとても暗いのでユイちゃんじゃないけど、とても怖い。


 「今夜はここで野宿だ。火を熾すぞ。」


 先生は名前をロッソ先生と言い、守護の役目のリーダーだった。


 怖い外見としゃがれた声は怖かったけど、色々丁寧に指導してくれた。


 今も薪の組み方、火打石の使い方なんかを教えてくれた。


 乾燥した木を探してきて薄くナイフで削ったピラピラの木片を火口として作り、残った木を細かく割って火口の周りに組み上げる。


 そして、火打石で火口に火花を飛ばして火口にうまく着火して、それが細かい枝に燃え移れば火熾しの完成だ。


 最初は火口に火を点けても直ぐに消えてしまったり、小さな枝に燃え移っても中々大きめの枝に火が移らずに苦労したけど、ちゃんと火が育ったら凄く嬉しかった。


 「よし、ミコトは成功だな。ユイも頑張れ。火が熾せないと獣が寄ってくるし、水も湧かせないし体が冷えて命とりだからな。弓矢よりも生き残るために大事なことだ。」


 「はい、先生。頑張ります。」


 「ミコトは先に干し肉を枝に差して焙るんだ。山の中では世話役のジジババはいないからな。何でも自分でできなくちゃだめだ。」


 「はい、先生。」


 私は教えられるままに干し肉を枝に差して火の回りに差していく。


 ユイちゃんの火熾しが無事に成功した頃には、干し肉が焼けるいい匂いがしてきた。


 「よし、食うぞ。今日はお前らがうるさく歩くから鳥や小さな動物たちが逃げちまったんで干し肉だけになっちまったな。」


 「先生、獣以外にも狩りをするんですか?」


 「ああ、山では食料を現地調達して、本来は非常食にはなるべく手を付けずに山を下りるのが理想だ。」


 「そうなんですね。私頑張ります!」


 「私も山草とか探して採りますね。」


 ユイちゃんは弓はからっきし苦手みたいだけど、歩きながら道端を指さして『食べたことがある草』とか言ってたからそっちで頑張るみたい。


 私は先生みたくカッコ良く矢を射てるようになりたい。


 干し肉でお腹一杯になった私達は早々にうつらうつらしてきた。


 今晩は先生が最初の見張りをしてくれると言うので、遠慮なく2人で寄り添って眠りに就いた。


 朝目が覚めると、周囲は朝露でぐっしょりと濡れて焚火も消えていた。


 不機嫌そうな先生とユイちゃんが私を見ている。


 「おはようございます。」


 「やっと起きたか、眠り姫さん。どんなに起こしても起きないから見張りは俺とユイで交代でしたんだぞ。」


 「まったくミコトちゃんって昔から一度寝たら中々起きないけど、初めての山で良くあんなに熟睡できるわよね。」


 「あ、え~っと・・・ごめんなさい。」


 やってしまった。


 山では夜行性の動物や魔物に襲われる心配があるから寝ずの番を交代でやるっていうのは最初に聞いていたし分かっていたんだけど・・・


 「まあいい、その分今夜は一番の見張りを任せるし、ユイの荷物も一緒に持つんだぞ。」


 「はい!任せて下さい!」


 うん、それくらいはしないとね。たっぷり寝かせてもらったお陰で元気いっぱいだし。


 「さあ、出発するぞ。」


 こうして先生とユイちゃんと私の3人でまた山の見回りを開始した。


 今回は道中で山菜や果物を採取して、私が荷物持ちだ。


 途中で鳥やリスを見つけると立ち止まって狩りをするんだけど、先生はどんどん弓で狩るけど、私は中々当たらない。


 でも、矢の飛距離と正確性は徐々に上がっている気がする。


 外した分だけ矢を拾いに行くのが大変だけど、少しずつだけど上手くなっていっている高揚感があるから気にならない。


 川原で休憩しながら獲物を解体する方法を習う。


 ユイちゃんは完全に涙目だったので、私が殆どやらせてもらった。


 「おお、ミコトは中々見どころがあるな。普通は女の子はこういうの苦手なもんなんだけどな。」


 「だってご馳走になるんでしょ?頑張らなくちゃ。」


 「ハハハハハ!ミコトはそんなに肉が食べたいか?」


 「はい。野菜も好きですけど、やっぱりお肉は凄く美味しいですから。」


 「ううう、私もお肉は好きなんですけど、このナイフが刺さる感覚が苦手です・・・何かこう、本当に殺してるって感じがどうも・・・」


 ユイちゃんの一言が少し私のずっと持っていた疑問を蘇らせた。


 「先生、私達はこうやって魔物や動物を殺して食べるけど、魔物や動物も私達が育てた作物とか私達を食べたりするのよね?」


 「その通りだ。だから俺たちが頑張らないと皆が飢えて死んでしまうんだ。」


 「でも、私達は頑張って働いているのに貴族様とか市民様は私達を殴ったり殺したりするのは何でなんでしょうか?私達は決して彼らに危害は加えないですよね?」


 つい、溜め込んできた疑問を口にしてしまった。


 先生の纏う穏やかな雰囲気が一瞬にして変わったのを感じて私はゾクリとした。

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