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【連載一時中断中】並みいるイケメン達よりも、なぜか(しかも美少女に)モテる平凡男子  作者: 波瀾 紡
伊田 天美編

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【34:茜を元気づける】

茜が「告られた」と言って、広志と話してるシーンの続きです

 広志が茜の目を見つめて優しく語りかけると、茜は少しとろんとした目つきになっている。


「茜はとーっても可愛くて、素敵な女の子だ。だからきっとみんなに好かれるよ。もしもうまくいかなかった時は、僕が必ず茜を慰めるからね。だから安心して」

「うん……」

「ほら、茜はとっても素敵だ。だから自分に自信を持って、茜のことを好きだっていう男の子と接したらいいよ」

「うん」


 広志は茜に自分の瞳を凝視させ、そして低めの優しい声で語りかけることで、茜の潜在意識に直接声を届ける。


 そうすることで広志の語ることが茜の心に届きやすくなり、そして茜の心はより癒される。


 これは母が亡くなった直後、一番茜が精神的に落ち込んでいた時に、茜に心理療法を施してくれた親戚の叔父さんに教えてもらった方法だ。


 その手法は催眠療法を応用したもので、優しく語り掛けることで暗示をかけて不安を取り、より深く心を癒すことができる。


 ちなみにテレビで見かける催眠術とは根本的な原理は同じだけど、目的と手法が異なる。日本では取り入れている医師は少数だが、海外では精神科医やプロスポーツ選手も取り入れている方法でもある。


「茜は大丈夫。なんだってできる。自信を持っていいんだよ」

「うん」


 しばらく広志の優しい言葉をかみ締めるようにしていた茜の肩を、広志は軽く数回ぽんぽんと叩いた。


「さあ茜。目を開けよう。すっきりと元気な状態で意識が覚醒するよ」


 そう言って広志は茜の肩を二、三度揺らした。目を開いた茜は、とてもすっきりとした表情をしている。


「ありがとう、広志君。すっきりした! 元気もりもりな感じが戻ったよ。ありがとー!!」

「うん、良かった。じゃあ晩御飯の用意をするか」

「はーい、待ってましたー」


 茜がかなり辛そうな時とか、自信をなくしてる時には、広志はこうやって癒しの暗示をかけてあげてる。


 それで結構茜は元気を取り戻すので、広志はこの手法を教えてくれた、心理療法師の叔父に感謝してる。


 でも、茜の心が本当に回復するには、まだもう少し時間がかかるかもしれないなと広志は思う。


 だけど茜のことを好きだと言ってくれる男の子の存在は妹の回復を早めてくれるかもしれない。


 そう思って、すっかり元気を取り戻した茜の顔を、広志は優しい気持ちで見つめた。





◆◇◆


 翌日の放課後。


 涼海すずみ りんは部活でサッカー部のマネージャー業務をしながら、すぐ隣の陸上トラックで練習をしている伊田いだ 天美あまみの姿をチラチラと見ていた。


 ケガから復帰後初の練習だから、そんなにハードなことはしてない。だけどここ最近は悲壮な感じや焦った感じの表情が多かった伊田さんが、今日は心から楽しんでいるような顔で練習をしてる。


 昨日広志から聞いたとおり、どうやら伊田さんは吹っ切れたみたいだと、凜はほっとした。



 一日の練習も終盤に差し掛かった頃に、凛がふと陸上部の方を見ると、伊田さんが100メートル走のタイムを取ろうとしてた。


 遠くの方からこちらに向かって、走ってくるみたいだ。


 伊田さんはスタートラインについて、スタートの合図を待ってる。


 手前の方にはゴールラインがあって、ストップウオッチを持った女子マネージャーと、その横には真田が立ってる。


 ──ぱぁーん!


 マネージャーの子が持つピストルが鳴った瞬間、伊田さんはバッと上半身を上げてダッシュした。


(あっ、凄い。伊田さん、綺麗!)


 凛が思わず見とれるほど滑らかで、綺麗なフォーム。伊田さんはあっという間に100メートルを走り切って、ゴールラインを越えた。


「12秒5!」


 ストップウオッチを持った女子マネージャーが声を出したけど、それがいいのか悪いのかは、凛にはまったくわからない。


 ゴールラインを超えて、走るスピードを落としながら近づく伊田さんの顔は、にかっと笑ってる。どうやら悪くないタイムだったみたいだ。


 伊田さんはそのまま凛の数メートル先にまで走ってきて、突然話しかけてきた。


涼海すずみさん。今日部活が終わったら、一緒に帰りたいんだけど……」


 伊田さんは申し訳なさそうな表情で、遠慮がちな感じ。


「うん、いいよ。一緒に帰ろ!」


 凛が笑顔で即答したら、伊田さんはホッとした顔つきで「ありがとう」と答えた。


 そして伊田さんはくるっと踵を返して、ゴールラインの方へと戻って行く。ゴールライン近くにいた真田が、伊田さんに話しかけるのが見えた。



「おい天美あまみ。病み上がりにしては凄いじゃないか」

「まぁね」

「これで全国大会も間に合いそうだな」

「そうだね。全国で一位になれるかは、まだわからないけどねー」


 今までよく見かけた伊田さんは、真田と話す時は、なんだか少し萎縮してるような感じだった。


 だけど今日の伊田さんは、伸び伸びと明るい感じで真田と接してる。


 真田もその異変に気づいたみたいで、ちょっと驚いた顔をした。


「おい天美。全国で一位を獲りたいんだろ?」

「そうだねぇー 獲りたいといえば獲りたいけど、それよりも楽しく走りたいかなっ!」

「えっ?」


 にこっと笑いながら真田君の前を通り過ぎる伊田さんを見て、「なんかいつもと違う!」ってな感じで、真田は驚いた顔で彼女の後姿を見送った。

作者は催眠誘導ができますので、茜への暗示のシーンは、ある程度専門知識をベースにしてます。

しかしフィクションとして、あえて描写を簡易にしてる部分があるので、その辺はご了承くださいm(_ _)m


次話は、凜と伊田さん二人での下校シーン。

二人で色々話しまーす。

次回「凜と伊田さん、一緒に帰る」をお楽しみに~

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=新連載のお知らせ=
双子なのに、性格も見た目も真逆な美少女姉妹は─→やっぱり僕に惚れている?』 【略称:真逆姉妹】
※結構王道なラブコメ。キュンとしてもらえたら嬉しいなぁ
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