表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【連載一時中断中】並みいるイケメン達よりも、なぜか(しかも美少女に)モテる平凡男子  作者: 波瀾 紡
伊田 天美編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/83

【21:伊田さんと真田】

神凪神社での伊田さんと広志の会話。

もう少し続きます。

 広志が伊田さんに「まだ真田とは付き合えてないの?」と訊くと、彼女は寂しそうな表情で「うん……」と答えた。


「だから今年はなんとしても全国で優勝したいと思って、一年間がんばってきたんだけどね。ここ最近は全然記録が伸びなくて……」

「そっか。だから僕に相談してきたのか」

「えっ? ……ああ、そう。そうなんだよ」


 伊田さんは顔をあげて、広志の顔を見た。広志はなんだか変なを感じて、少し疑問に思ったけど、それは口に出さずに彼女には柔らかな笑顔を見せながら話を続けた。


「真田は、あれかな? 伊田さんの記録が伸びるように、あえてそんなふうに言って、伊田さんのやる気を引き出そうって思ったのかな?」

「私もそうかなって思う時期はあったんだけどね」

「違うの?」

「去年優勝できなかった後くらいに、やっぱ違うんじゃないかって思い始めたんだ」


 伊田さんは少し横を向いたまま、寂しそうな表情を浮かべてる。


「なんかさあ、真田君って、すっごい自己中なんだよね。本気で『俺と付き合えるのは凄い女じゃないとダメだ』って言ってるんだと思う」

「いやいや、伊田さんは充分凄い女の子だよ! 陸上は全国レベルだし、すっごい美人だし、明るくて楽しくて性格もいいし!」


 伊田さんはふと広志の顔を真顔で見たあと、すっごいテレ顔になって広志の肩を手のひらでバンバン叩きだした。


「だーから、空野君は私を買い被り過ぎだって!! そんなに褒められたら、照れるじゃないかー!!」


 バンバン、バンバン、まだ叩いてる。よっぽど照れくさいようだ。


「あ、あの、伊田さん? 痛いんだけど……」

「えっ? ああ、ごめんごめん!」


 伊田さんはハッと気づいた顔になって、手を引っ込めた。


「でもさ……惚れた弱みって言うか、それでも全国で優勝して、真田君に気に入られたいってずっと思って、がんばってきたんだけど……この足のケガで、それももう無理だね」

「まだ無理だなんて決め付けなくていいでしょ。きっと早くケガが治って、全国優勝できるよ! そのために御守りを買ったんだし!」

「あ……」


 伊田さんは『あ』と言った形のまま口をあけて、広志の顔を見つめてる。そして急に笑顔になった。


「だね! 空野君の厚意を無駄にするようなことを言ってごめん!」

「いや、謝らなくていいから! 伊田さんのケガが早く治って、大会もうまくいったらいいなぁ、なんて思っただけだから」

「うん、ありがと」

「だから伊田さんは僕のこととか、真田のこととか気にしないで、ホントに楽しんで走ってよ」

「わかった。ありがとう。がんばってケガを早く治すよ。そしてやっぱり全国で優勝したい! もちろん自分のためにね!」


 伊田さんは笑顔だ。本心から自分のためにがんばろうと思ってるように見える。


「がんばるとか言っても、無理するなよー 伊田さんは一生懸命すぎるんだから」

「あははっ、一生懸命すぎるのは、空野君の方だよっ!」

「いや、そうでもないよ。僕は不器用でおっちょこちょいだから、一生懸命やらないとダメなんだ」


 伊田さんは心の底から楽しんでる感じで笑ってる。伊田さんがこの前向きな気持ちを維持できるように、サポートしてあげたいと広志は思った。


「そうだ。伊田さんのケガが治るまで、毎日こうやってカバンを駅まで持って行くよ」

「いや、それはダメだって! いくらなんでも空野君に申し訳なさ過ぎだよっ!」

「でも松葉杖をついて反対側の肩でそんな大きなスポーツバッグを抱えるなんて、重くてバランスが悪くて、足への負担が大きくなるよ。足への負担は、少しでも小さくした方がいいだろ?」

「いや、明日からは部活の道具は持ってこないから、もっと小さくて軽いリュックにするよ。だから大丈夫」


 伊田さんの顔を見ると、無理をしてる感じじゃなさそうで、広志は少し安心した。


「そっか、わかった。でも大変な時は無理しないで、いつでも僕を使ってよ」

「わかった、ありがとう。いやぁ空野君って、ホントに優しいな!」

「いやいや、そうでもないけど、とにかく伊田さんが前向きな気持ちになれたらって思ってさ」


 伊田さんは優しい笑顔を浮かべて、広志の顔をじっと見つめていた。




 それからその日は、二人で神様にお参りをして帰った。

次回は久々に、凜と広志のほのぼの回です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=335306559&s

=新連載のお知らせ=
双子なのに、性格も見た目も真逆な美少女姉妹は─→やっぱり僕に惚れている?』 【略称:真逆姉妹】
※結構王道なラブコメ。キュンとしてもらえたら嬉しいなぁ
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ