おはようございます
「うっ…」
頭が痛い。
殴られたような痛みが頭の中を走る。
目の前は真っ暗、右も左も分からない。
手を前に出すと、何かにぶつかった。
耳を澄ますと、息の音がした。
「起きてください‼」
私は誰かも分からない人を必死に起こした。
「うっ…うぅぅう」
「あなたは?」
「私はっ‼?」
部屋に光が灯った。
その部屋は、八畳くらいの窓もドアもない部屋だった。
「何これ?」
「ウゥゥゥーーーウゥゥゥー」
サイレンが部屋に鳴り響く。
何故だか分からないが、体中に鳥肌が立った。
「早く部屋からでなきゃ‼」
「少し落ち着いて‼」
彼の言葉で私は自我を取り戻した。
少しの間で色んなことがありすぎて、すこし動揺してただけだ。
「ゴゴゴゴゴ」
壁が段々こちらに向かってくる。
「何これ?」
「このままじゃ二人とも死んじまう」
「イヤァーーーーー‼」
私は必死に壁を叩いたり、思い付くことを色々した。
だが壁は進むのをやめない。
「死にたくない」
彼は小声で言った。
その時だった。
「ガチャンッ」
天井から、一本の注射器が落ちてきた。
「注射器?」
「どうするの?」
「分からない」
「何か書いてある」
注射器の裏にはアルファベットでbloodと書いてある。
「血を入れろってこと?」
「そうかもしれない」
「あたしの血を入れるわ」
もしかしたら、血をいれた人だけが逃げられるかもしれない。
考えれば考えるほど、色々な妄想が膨らむ。
「俺が入れるよ」
彼は震えた手で注射針を腕に刺した。
注射器の中にすこし黒色の血液が入っていく。
注射器が満タンになると、壁の動きが止まった。
「良かった」
私は床に崩れ落ちた、緊張の糸が解けたからだ。
「ゴゴゴゴゴ」
壁の動く音が再び鳴り始めた。
今度は廻りの壁じゃなく、床が動き始めた、上に上にと。
「さっきので終わりじゃないのか‼?」
彼は壁を何度も殴った。
手から血が流れる程に。
「やめて」
私は彼のことを止めた。
「ゴゴゴゴゴ」
私が彼を止めたところで、床の進行は止まらない、そんなの分かっていた。
「ガチャンッ」
又だ、天井から今度は箱が落ちてきた。
「ガチャッ」
私はとっさに箱を開けた、だが中にはノートの切れ端が一枚入ってるだけだった。
「ふざけんなっ‼」
箱を力一杯に壁に投げつけた。
「待って」
「その紙、何か書いてあるよ」
「え?」
私は紙に目をやると、紙に小さな字で。
生きること、それすなわち、死と隣合わせということ。
「謎解き?」
私は彼にもその手紙を見せる。
考えてる間にも、床は天井に向かって進んでいく。
「分かった‼」
分かった、そうだこの部屋での死は、天井と床に潰されること。
だったら死と隣合わせは、床に背をくっつけることだ‼
「分かったのか?」
「ええ」
「この部屋の床に背をくっつけるの‼」
「本当に?」
「そう」
私は彼に理由を説明した。
「そう言うことか」
「ありがとう、君のお陰で死ななくてすむ」
あたしと彼は、床に背をくっつけて、天井に目を向けた。
一行に止まらない、床に不安を抱えながら。
15秒後
床と天井の高さは、五十センチを切っていた。
「このままじゃつぶされちまうよ‼?」
「平気」
体が震える、体中から汗が吹き出る。
「マジで平気なのかよ‼?」
「平気よ、あたしを信じて」
「分かった‼」
私は力一杯に目を閉じた。
「‼?」
刃物のような鋭い音が、目の前でした。
床の動きは止まった。
目を少しずつ開く。
「‼?」
目の前には一般的な家庭ではまず目にすることのない大きさの、包丁が壁から突き出ていた。
「ゴゴゴゴゴ」
今度は床が下に動き始めた。
何分が経ったことだろう、体は動かない。
「ゴトンッ」
床の動きが再び止まる。
壁には、一つの扉がある。
私は扉に歩を進める。
扉を開けると、そこにはさっきの部屋とは比べ物にならない大きさの部屋が広がっていた。
それに、たくさんの人がいる。
「あんたも助かっ…」
「お前、どうしたんだ?」
一人の大柄な男が目の前に立ち塞がった。
「何が?」
私は、ニコッと男に笑みを向ける。
「こいつヤバイぞ‼」
男は部屋を見てから他の人に言った。
「こいつ、部屋の奴を殺してる」
「ザワザワザワザサワ」
一気に皆の私への視線は、同じ仲間から、ゴミを見るような目へと変わっていった。
「ハッハッハッ」
だってそうでしょ?
もしもあの部屋から出れるのが一人だけだったらどうするの?
そう言われてないだけで、そうだったら、皆はどうする?
殺さない?
私だったら速攻で殺すかな。
私は皆から部屋の端へと追いやられた。
血まみれの服、血まみれの顔、早くお風呂に入りたいな。
「ではこれより、休憩にします」
部屋に幾つかある、無線から無機質な声が流れる。
「部屋にはシャワー、ベッドなど色々な物が充実しています」
「ごゆっくりどうぞ」
やったー‼
お風呂に入れる。
足早に自分の部屋に向かった。
部屋は、マンガ喫茶のようなボックスが幾つも並んでるような物だった。