プロローグ
ここは日の本、大和の世界。
この世界には『刀』と呼ばれる魔剣が百本ある。
この百本の『刀』はすべからず、人智を超える恐ろしく大きな力を持っていると伝わっていた。
曰く、ある『刀』は一振りすれば山が割れ。
曰く、ある『刀』は一振りすれば海が割れ。
曰く、ある『刀』は持っているだけで「生まれてから今までいなかったのに、この『刀』を手に入れてから直ぐに彼女ができました!」などである。
しかし、ときたまこの『刀』を持って暴走する者が出た。
心が弱き者が『刀』持てば、『刀』に意識を乗っ取られ暴走してしまうのである
山を割る『刀』を持つ者は、ひたすら山を割りまくるだけの存在と成り。
海を割る『刀』を持つ者は、ひたすら海を割りまくるだけの存在と成り。
彼女が出来る『刀』を持つ者は「よー、お前さー、彼女作んねーの?」とひたすら周囲に問い掛ける存在と成る。
時に甚大な被害を色々なところにもたらした。
幕府はこのあまりに危険な『刀』を持って暴走する者が出ないよう御触れを出した。
これが『弱肉の御触れ』である。
『刀』を持つ者は何時いかなる時でも、挑戦を受けなければいけない、という御触れである。
この挑戦というのは、勝者は敗者に何をしたもいいという殺し合いの事である。
これによって弱き者が『刀』を持っても、すぐに殺されて『刀』を奪われるようにした。
クレームが来た。
質屋さんから。
『刀』を質に入れておいて、それをまた強奪する者が出たのである。
『刀』が質に入った時点で、その質屋が『刀』の所有者であるから、その質屋は何時でも挑戦を受けなければいけない。
で、襲撃される。
幕府にとっては全く予想出来ない、想定外の出来事であった。
幕府は考えた。
そしてまた御触れを出した。
これが『強食の御触れ』である。
『刀』を持つ者は何時いかなる時でも挑戦を誰にでも仕掛けていい、という御触れである。
これにより質屋だけでなく全ての店や人が平等に襲われるようになり、一応の決着をみた。
この二つの御触れが合わさって、『弱肉強食の御触れ』ができた。
つまり『刀』を取り巻く環境は、弱き者は死に強き者しか生き残れない、奪い奪われ戦国時代のわけわかめになった。
やがて世界で百人に入る強さを持つ者でないと、この百本しかない『刀』を持つ事は出来ない、といわれるようになった。
そしていつしか『刀』を持つ者だけを、世界で百人に入る強き者として『侍』と呼ぶようになっていた。