第十六話 ~明かされる真実、そして始まり~
王都に新しい国王が誕生した後、レスティ達は正式に冒険者として認められた。そして、レスティは現在、
なんでも屋の前に来ていた
「いろいろなことがあってここに来るのが遅れちゃったけど、やっぱりあの人には今回のことを含めてお礼は言っておかなくちゃ」
よし。と一呼吸おいてなんでも屋と書かれた扉を開けるレスティ、そして扉の向こうに居たのは剣を抜き放ち店内で出没したネズミと格闘しているカイトであった
「おらぁっ! てめぇ! また俺の大事な商品に手出しやがって! もう今日という今日はお前を細切れにして食ってやる!」
「ちょ...カイトさん! こんなところで剣なんか振り回したら危ないですよ!」
「おお! なんだレスティちゃん、来てたのか。待ってろ今この野郎をぶっ殺した後に料理にしてご馳走してやっから」
「い、いりませんそんなもの! いいから早く剣を収めてください!」
「なんだよ...そんなものとか言うなよ...けっこう丸焼きにしたら美味いんだぞ」
レスティの訴えにより剣を鞘に納めたカイトはその剣を近くにあったカウンターに置いた
「はぁ~...ここに来るのはまだ二回目ですけど、いつも騒がしいですね」
「まぁここはもうあちこちガタが来てるしな。ところで今日は何しに来たんだ?」
「あ、そうでした。実は...前にカイトさんが俺が剣を極めし者だ、て言ってたじゃないですか...」
「ああ、そうだよ。まぁ今じゃちょっと昔に比べて腕が鈍ってると思うが」
「そ、それで私...私が赤ん坊の時とルパスの森の時とで二度も命を救われてるからお礼がしたくてここに来たんですけど...実は最後にカイトさんに一つだけ聞きたいことがあって...」
「ふ~ん...あれか? 聞きたいことってのは俺が何で村人を皆殺しにして勇者を殺した後に行方知れずとなったのかってことか?」
「そ、そうです! 私その真実だけを最後にどうしても聞きたいんです!」
「真実ね...まぁお前には俺の正体もばらしたわけだし、話してやってもいいけどよ...俺からもお前に聞くがこの話は人々やこの世界の希望となりうる存在であった一つの光を失うような話だがほんとに聞きたいか?」
「はい!」
レスティはカイトの瞳をまっすぐ見据えて力強く肯定した
「わかった。そこまで言うなら話してやるよ...これは俺達が旅の途中で立ち寄った村で起こったことだが、俺達はその村で宿をとって休憩していたんだが、俺と勇者はいつも二人で最強の剣士をかけた試合をその日もしていたんだ」
「...」
カイトの話に一切横やりを入れずに聞くレスティを見て、カイトは話を続けていく
「最初の頃はお互い一歩も譲らず五分五分の勝率だったんだが、試合を重ねていくうちにだんだん俺が勝つようになっていった。だが、あいつはいつも俺に何回やられても笑顔で次は勝ってみせるっていってくるような奴だったんだ。そしてその日も俺が勇者に勝ったんだ。俺はあいつがいつものように俺に笑顔でまた勝負を挑んできてくれると思ったが、違った...あいつは暗い表情で何も言わずに去っていきやがった。その時からおかしいと思ったんだ俺は」
カイトはその時のことを後悔するように歯噛みしながら、次に衝撃の事実を語った
「あいつはその日の夜、村人を殺し始めたんだ」
「っ!!! そ、そんな! あの伝説の勇者が!?」
「俺も相当戸惑たよ...だけどないくら勇者といえども人なんだ。あいつはこいつの能力に溺れちまったんだよ」
そういって、カイトはあのドラゴンを討伐した時に使ったあの刀を指さした
「あれはそんなにすごいものなんですか?」
「すごいも何も、あれがよく世間一般で言われてる伝説の剣そのものだよ」
「え!? あれが伝説の剣なんですか!?」
「そうだ。だが俺はあいつは伝説の剣と言われてるのが納得いかない...あいつはまさしく人殺しの刀だよ」
「人殺しの刀? なんでそう思うんですか?」
「それは、あの刀の能力だ。あの刀は人を殺すほどにその所有者を強化していき、殺した人数が100人になるとその真価を発揮するらしい」
「そんな...伝説の剣にそんな能力があったなんて...」
「...最悪のことに俺たちが立ち寄った村の人口は総勢100人。そいつにとって最適だったてわけだ。俺達は勇者に言ったんだ。なんでこんなことするんだ!てよ...そしたら、あいつ全ては俺に勝って自分が最強になるんだなんて言いやがったんだ」
「勇者は...それで力を求めたんですね」
「そういうことだ...それであいつは最後の100人目として赤ん坊を殺そうとしてたんだ...俺は勇者の行動を止めるために剣を抜いて...それで勇者を殺した」
「まさか...その赤ん坊って...」
「そう...あんたのことだ。だが、俺達は考えたんだ。もし全世界の希望の光である勇者が力を求めて村人を惨殺したなんてあったら世の中の奴等はそれこそ何も信じられなくなるだろう...」
「だから自分が全ての罪を被ったというんですか?それで誰もが知っている勇者殺しの大罪人として誰にも正体を知られるわけにはいかないと?」
「...」
それ以上はカイトは口を動かそうとはしなかった。レスティは怒りにも似たものが自分の中から沸々(ふつふつ)湧き上がってくるのを感じていた
「そ...そんなの...そんなのおかしいですよ!!」
「うおっ!? 何だよレスティちゃん、いきなり大声なんか出して!?」
「そんなのカイトさんは、ひとっつ悪いことしてないのにそんなことって...わかりました!カイトさん!私をここで働かせてください!」
「ふぁつ!?」
レスティの突然の発言に素っ頓狂な声を上げるカイト。だがレスティは強引に店に立てかけてある従業員募集と書かれている用紙をとるとそこに自分のプロフィールを書き、カイトに差し出す
「私たちがこのなんでも屋を大きくして、世界中の悩みを解決してカイトさんは悪い人なんかじゃないってのを認めてもらうんです! 私、決めました!これが私がカイトさんにできる唯一のお礼です!」
「はあああぁあああああぁああっ!?」
これから先の未来はどうなっていくかは分からない、しかし、いつかカイトの濡れ衣が晴れることを夢見て、それが自分からの精一杯の恩返しだと信じてレスティはその後、なんでも屋の従業員の一人目となった
これにて第一章は完結になります。いやぁ、この作品を書いてはや6日で一章が完結しました。第二章の構成も浮かんでいるのでこれからも書いていこうと思います。皆さんも麦の奴がんばっとんな、まぁ二章も見たろうやないかという気持ちで見てもらえると結構です。なので、これからも応援のほどよろしくお願いします!