第十二話 ~そのモンスター、最恐にて~
「…う…こ、ここは一体…」
眠りから覚めたレスティは自分の腕と足が縄で縛られていることに気づく。彼女達は森の中の開けた場所で横たわっていた
「…すやすや…あぁ、ダメですフィオレンティーネ様!そんな、私とあんなことやそんなことするなんて…は!ここは一体何処なんです!?」
他の冒険者見習い達もレスティ同様、寝ている間に縄で腕と足を縛られていたようだった
「これは…いったい何が…」
自分の身に起きたことが未だに理解できないレスティは自分達の向こうで何やら話合っている憲兵の集団が目に入った
「…俺は…あの左の…かわいがって」
「じゃあ俺は…あの女に…あの何でも屋にやられたぶんを…」
この位置からでは憲兵達が何を言ってるのか分からず、状況整理も追いつかないレスティはぼんやりとする意識の中、憲兵達に視線を向けていた
「…?おい、あいつ等もう目を覚ましてやがるぞ」
「なに?…ちっ…まぁいいや。お前らもう各々やりたいやつとやることにするぞ」
下卑た笑みを浮かべながらレスティ達に近寄ってくる憲兵達は彼女達の前で立ち止まり、その衣服に手を掛けようとしてくる
「…!? な、何をするんですか!? やめてください!」
「あ?見ててわかんないのか?俺たちはお前等の身体でで日頃溜めてるストレスなんかを発散させようとしてるんだよ」
「な、何を言って…そんなことして国王様が黙ってるわけありませんよ!」
シャロムの国王が黙ってないという言い分を聞いて憲兵達は目を見合わせ、笑い始めた
「ハッハッハッハ! 聞いたかお前ら? 国王様がだまってないってよぉ!」
「な、何がおかしいんですか!」
「そうだなぁ…もうそろそろ教えてもいい頃だろ…よく聞け! 今俺たちがこうやってお前らと良いことをできるのも全部国王のお膳立てあってのことなんだよ!」
「!...そ、そんな...」
「こ...国王が...まさか、そんな...」
彼女達の表情には絶望の色が滲んでいた。国のトップである国王が自分達をだまして男達の慰み者にさせようとした。その事実だけで彼女達を絶望に陥れるには十分だった
「へへへ、わかったか?お前らは大人しく俺らのストレス発散の道具になってくれたらいいわけよ。ほら、お前ら存分に楽しめ!」
「いやああああぁっ!!!」
憲兵達が彼女達に襲い掛かる。憲兵達は彼女達の衣服を掴みはぎ取ろうとしたが...彼らの手はなぜか止まっていた
「...?」
これから始まるはずであろう、憲兵達の容赦ない遊びが行われるのを抵抗しようとしていたレスティは彼らのその行為が止んだことに気付く
「な...ななな、なんなんだよあいつはぁ!」
一人の憲兵の指す方向に彼女達も顔を向けると、そこには森の陰から巨大な瞳がこちらを見据えていた。その瞳は黄金色に輝いており、それはさながら炎が燃え盛っているが如きである。その瞳の持ち主は一歩、二歩と大地を震わせながら近づいてくる
「あの黄金色の瞳...ま、まさかあのモンスターなのか!?嘘だろ!やつがこんなところに来るわけが...」
憲兵が言うあの魔物はその後も大地を震動させながら近づいており、頭部、身体、尻尾の順にその全貌を露にした。光沢を放つ鱗に覆われた頭部と身体と尻尾と羽、そして頭部に生えた角にはどれも傷一つついておらず、これまで戦ってきた敵を無傷で屠って来たことを表している。そして大きく開かれた口からは炎が燃え盛っていた。そのモンスターを見て憲兵はその名前を悲鳴交じりに叫ぶ
「ド、ドラゴンだああああぁあああぁあっ!!!」
彼等がここまで驚くのにも理由がある。通常この世界のモンスターは下級魔族、中級魔族、上位魔族、そして最高位魔族などに分けられその階級によって危険度が変わってくる。下級の魔族であれば村人が、中級魔族であれば腕のある冒険者であれば、上級魔族であれば上位冒険者であれば倒すことができるのだが最上位魔族に関しては冒険者などでは太刀打ちできることはできず、それらの魔物は一つの国を亡ぼすと言われている。そして彼等の目の前にいるドラゴンの階級は最上位魔族なのである
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