第九話 ~友の裏切り~
シャロムの猛攻(質問攻め)からなんとか逃げ出したカイトはその後レスティと同じ馬車の荷台に乗り、馬車に揺られながら目的地であるルパスの森への到着を待っていた
「あ...あの...カイトさん、先ほどはありがとうございました。とてもスカッとしました」
「お?まさか俺に惚れたか? いいぜ、結婚しよう」
「そんなことは一言もいってません!」
「いってぇ! なんだよ...思いっきりぶん殴るこたねぇだろぉ」
軽口を叩くカイトであったが、彼はレスティが先ほどより元気がないのが気になっていた
「どうした? さっきから妙にしょんぼりしてるけどよ」
「え? やっぱりそう見えますか?...そうですね、なんか先ほどの憲兵の人の言葉が気になっちゃってて...」
「お前の身体でお礼してもらおうかぁ~げひゃひゃひゃ! て言ってたところか?」
「なんでその部分をチョイスするんですか!? 違いますよ! その前に話してた剣を極めし者は勇者殺しの大罪人だ、ていうところですよ!」
「あたたた! わかった! わかったから人の足の小指を君の短剣で思いっきり殴るのやめて! 地味に痛いから!」
「私、カイトさんに聞きたいんですけど...カイトさんはあの人(剣を極め者)についてどう思いますか? 彼が一つの村を壊滅させ、勇者を殺したというのは確かに事実として語られています。でも、私はそんなことをする人が一人残った赤ん坊をわざわざ助けるなんて思えないんです!」
「...そうだなぁ、ま、これは俺の見解だが...そいつは自分の正しいと思った道を突き進んだだけのことだと思うぜ。あんただって自分が絶対の信頼を置いていたやつが突然自分の目の前で何の罪もない人々を殺し始めたら、そりゃあ阻止しようとするだろ」
「へ?それって一体どういうことなんですか!?」
「まぁ、確かに殺しちまうまではなかったのかもしれないがな(ボソッ)」
「え?今なんて言ったんですかカイトさん?ちゃんと詳しく教え「おい!もうルパスの森に到着したぞ!早く降りてこい!」」
レスティの言葉は憲兵からの声にかき消され結局、彼の言葉の真意はわからずじまいであった