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古代文明を見た!



 俺は宗教家ではないが女神様は信仰している、今も清潔だ。しかし一方で科学の徒だ、文明人だからね。言うほどの知識はないが、現代人ならばその生活が科学に拠って支えられているのは分かっている。

 しかして、その生活が当たり前になったのは近代、100年や200年前からで、それ以前は『むかしむかし』の物語だ。お爺さんとお婆さんが慎ましく生活する中で、若者たちが斬った張ったする時代だ。物語の話だ、文明史を舐めているわけではない。


 人類の歴史は戦争の歴史と言われるように人間喧嘩ばかりしていたわけだが、文化の歴史とて人類の歩みだ。芸術、料理、学問、スポーツ、政治、経済、細かく言えばキリがない。俺はその今に連なる社会を築き上げてきた文明を深く愛している、文明人だからね。


 だが、そも文明の歴史は西暦で二千年、全体で見れば五千年くらいだっただろうか。そんな文明の歩みも想像するだけでロマンだが、人類の歩みはそれ以前、一万年か十万年か百万年かそれ以前から始まっている。学校で習ったかもしれないが覚えていない、文明人だからね、それでも生きていける。


 だが、だがしかし、だ。そもそも地球の歴史は46億年、生命の歴史はどれだけ長いか知らないが十億二十億はくだらないだろう。もう想像すらできない、俺の人生何回分だ? その中では人間なんてちっぽけなものだ、知性の歴史は100億の種の一つに過ぎない。


 それ故に、


「人類、やっぱいないんじゃない?」


「Gyao-!!」


 そんな事を思い耽る俺の目の前で、元気のいい挨拶をしてくれたのは二足歩行のトカゲちゃんだ。異世界で地球人が初めてまみえる『恐竜』である。異世界で。


「なんでやねん」


 突っこんだのは決してこの世界を創り給うた女神様にではない。


 『猿の秘境』を進む事、二週間。それでようやく見えて来た山林の終わりは、巨木の森へと姿を変えた。またもや人の手の入っていない豊かな自然だ。そこで俺を出迎えてくれたのは、地球の歴史上最も繁栄した陸上の覇者――恐竜だった。


 異世界の女神様は放任主義だ、育児は進化論にお任せらしい。強く生きなさいと仰っている。おかげでこの世界は逞しく育ったお子さん達で満ちている。全くもって素晴らしい世界だ。

 しかし、魔法のヤツは仕事をしていない。おかげで俺の異世界ファンタジーはシビアな野性の世界だ。精霊もゾンビもキメラも出てこないなら、ゴブリンもトレントもいなくていいんじゃない? ドラゴンもいなくて恐竜もいなくていいんじゃない? 魔力があるから絶滅出来なかったのかな?


「GyaOoo--!!」


 こちらに向かって鋭い歯を覗かせる偉大なる覇者を前に座り込む。手にした槍を地面に置き、膝を抱えて蹲る。そんな俺に巨木の庭を苦もなくすり抜けて、威風堂々と近寄る二本の脚。俺を見つめる両の眼差しは、その手足に伸びる爪の様に鋭いながらも、こちらを油断なく見定めている。


 ――これが恐竜、太古の王者…。目の前にあるその存在感に、生命としての畏怖を、俺は感じていた。


 足音の止んだ沈黙の森で、俺は目の前に立つ大地の王に問いかけた。


「お前ひとりかー? 仲間はどこだー?」

「Gyao-!」


 トカゲちゃんはコンパクトサイズ、膝を折った俺より低い。甲高い声が可愛らしい、クリクリおめめの小動物系だ。好奇心旺盛なところは猿そっくりだ、自分に害意はないのかと、首をキョロキョロ動かしてこちらを観察している。可愛い見た目ではないが、何か和む。


 ………。


 一頻り互いに見つめ合った後、トカゲちゃんは森の中へ消えて行った。それを見送り、槍を手に取り考える。―――この世界……異世界?


(いや、まぁ…同じ様な生物がいるならあり得なくは……ないか?)


 ファンタジーではないこの世界の進化の歴史が如何なっているのかは分からないが、科学の徒(笑)としては恐竜みたいな生物がいるのは納得できる話ではある。剣と魔法の世界というなら噴飯モノであるが。

 兎に角、恐竜である…ドラゴンではなく。ドラゴンと恐竜の違いはロマンの違いだ。見た目はちょっと似ているが、『いた』と科学的に証明されている恐竜よりも、『いたらいいな』の幻想が欲しい。魔法で如何にかして欲しい。仕事しろ魔法。

 トレントは巨大な『食虫植物』ですと言われればどうでもいいが、ドラゴンのご先祖様とはいえない恐竜達は不憫でならない。が、期待も希望もしていないが『あれが地竜です』とティラノサウルスを指差し言われれば、『あ、はい。そうですか』と納得したくなのがファンタジーである。

 奴等はれっきとした動物だ、モンスターなどではない。ドラゴンに想像できる神秘性はなく、あるのは強大な捕食者に寄せる恐怖だ。しかし、そこはあまり心配していない。デカい生き物は大量に食べなくてはいけない、トレントの様に。それが肉食や例え雑食であったとしても、そんなものがゴロゴロ存在するなら巨大生物だらけでなければ生きていけない。ならバカでかい肉食恐竜はいないだろう。


 それよりもだ、もう一つ可能性がある。…人類いないんじゃない? の続き、


(…竜人とか、いるんじゃない?)


 である。リアル恐竜人だ。ドラゴニュートとかではなくて、恐竜人…。はっきり言って会いたくはない。サブカルチャーの知識では想像できない。リザードマンみたいなのでいいのだろうか? それでは俺としてはゴブリンと同じ分類だ。文明を築いていても、俺にとっては〇の惑星だ。肌色のない生活など御免である。


(まだエルフも獣人も、人間だっていないと決まったわけじゃない。ドラゴンな竜人だっているかもしれない)


 もう本当に…いい加減に人類に会いたいと、そう思いながらもトボトボと森の中へ向け歩き出した。



更新がきつくなってきました

本気で不定期になりそうです

夜に書き上げ次第更新しますのでそれでご勘弁を

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