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解かり合う事が出来なくとも 分かち合う事は出来ます それが世界です

お待たせしました


全体にわたって修正をしましたが大きな変更はありません

説明不足な点もありますがめんど…長々とした追加文で流れを切りたくありませんでした

ですので読み返さなくてももんだいありません


宜しければこれからもどうぞお付き合い下さい




「あ゛あ゛あ゛~~~っ」


 暖かな湯が身に染みる、風呂はやはりいい。命の洗濯だ、身も心も全てを清めてくれる。それが温泉となれば何をか言わん也。世に幾多の幸福あれど、我を包み込む此の癒しは、森羅万象の愛ぞ夢ぞ。母なる地の恵みに還り抱かれる此の一刻に優るモノ無し。

 そんな理解できない言葉がすらすらと出るほど、頭の中が蕩けてくる。もうここから動きたくない。


 影虎を仕留めた後、事後処理を行った。後片付けだ、大分周囲を荒らしてしまった。

 影虎の亡骸は、その驚異的な闘いぶりを讃え毛皮を頂いた。2mを超える美しい毛皮だ。そして肉は燻製にした。命を無駄には出来ない。そして魔力を沢山含んでいそうだ、その力を貰いたい。その考えがもう古代人だが、あまり外れてはいないだろう。魔石も残っていた。

 湯煙に散った猿たちは、温泉の隅に埋葬した。同じ湯を愛する者たちだ、無碍には出来ない。どうかあの世でも温泉を楽しんでくれ。


 そうやって死者を送り出し、温泉の周囲を綺麗に洗い流した。気持ちをすっきり切り替えた俺は、こうやって温泉に浸かる一時を満喫している。


(神様、女神様。試練には意味があったのですね。命を頂き、穢れを禊ぐ。…これが生きるという事)


 勿論そんな事は誰も言ってはいないし、それに関係なく俺は風呂に入る。気分の問題だ。命を洗濯中な俺は今、それを感じている。

 この秘境には、何も無い。在るのは湯の音、舞い降りる雪、冷たく眠る世界、それだけだ。それ以外は何も無い。静かな時間の中に、自分の魂が解けてゆく。


「………」


 …これで時間さえも無ければ、のぼせる事も無いのだが。…残念だ。


 そんな一人湯を楽しんでいると、何やら周囲が騒がしくなってきた。感知に捉えたのは避難していた猿たちだ。時間が経ち、様子を見に戻って来たらしい。


 猿は霊長類、人間の親戚だ。俺は生物学者ではないので詳しくは語れない。だが、猿が凄いのは分かる。

 猿の多くは雑食で、樹上で生活をしている故に、生存能力に優れる。小型から大型まで多種多様に進化し、森があるなら大概そこには猿が居る。強くも無いのにここまで安定して繫栄している種は、鼠と鳥くらいしか俺には思いつかない。

 臆病な癖に能天気で、慎重な癖に好奇心旺盛だ。そんな猿は何処の世界でも程々に楽園を築く。


 この世界の猿たちも、それに漏れない連中らしい。遠くからこちらを窺うだけでは飽き足らず、段々と大胆に、おっかなびっくり近付いて来る。その行動力は怖いもの知らずの精神故か。はたまた逃げ足に絶対の自信があるのか。それとも「オマエ猿顔、オレタチ仲間」と言いたいのか。


(…おいおい)


 そんな事を考えていると、一匹の勇気ある無謀な猿が、とうとう俺のいる温泉に入ってきてしまった。そこからの流れは速かった。最初は俺から離れた場所に入り始めていたのに、次々と猿で温泉が埋まっていき、最後は俺の周りは猿だらけだ。広い露天風呂は、蕩けた顔で一杯になった。


「…オレタチ風呂友」


 そう、こうなったからには裸の付き合いだ。もう好きにしてくれ。俺は入浴中を襲う不届き者ではないし、この温泉は誰の物でもない。同じく風呂を愛する者ならば、そこに湯が在ればそれで言葉はいらないだろう。


「はははっ! そうだな、俺たち風呂友だ。だけど毛繕いは止めてくれ、俺にはノミもシラミもいないんだ。フサフサの君たちには分からないだろうが、人間って繊細なんだよ? そんなに髪を毟らないでくれ」


 君の愛が、俺には痛い。しかし風呂場で喧嘩はご法度だ。ここは戦場ではない。

 そして真実を曝け出す裁判所でもない。俺が何故、あんな岩山で準備万端で戦いに臨めたのかとか。それ以前に温泉を発見してから影虎接近までの時系列なんか今更気にしちゃいけない。

 全ては運命の悪戯なのだ。それが今を紡いでいるんだ。


 ………。


 風呂から上がる。まだまだ幸せな時間に浸って居たかったが、のぼせ始めたので仕方がない。

 磨き上げ、旅の疲れを充分に労わった体から、丁寧に水気を拭っていく。鍛えた筋肉も、日に焼けていない肌も、節々に残る傷跡も、一年も経たずに変わってしまった俺の人生を表している。たぶん顔は真っ黒だが。雪山って紫外線が強い…らしい。

 想像したら笑えてくる自分の全身像を、冷たい大気から隠す。装備を着ければ少しは格好も付くだろう。それに、まだまだやる事は多い。暗くなる前に野営の準備をしなければならない。


 仲間と交代しながらも湯を楽しみ続ける猿たちを羨ましく思いながら、この場を離れようとして…ふと、その光景が目に付いた。

 猿たちは、たまに温泉の湯を口に付けて唇をチュパチュパと鳴らしている。まるで日本酒の熱燗を楽しむ俺の祖父だ。温泉を漂う猿たちの幸福感が、そのイメージにぴったりとはまってしまっている。……え? 美味いの?


(………いやぁ、でもそんな。…いや馬鹿な。………でも気になる)


 離れかけた足を戻す、好奇心の誘惑には勝てなかった。俺はある種の期待を寄せて温泉へと引き返す。

 しかし同時に首を傾げる。長時間身を浸していた湯には何かおかしな特徴があっただろうか? そんな疑問と共に、手にすくった湯を舐める。その味は期待を裏切る意外な…そうでもない様な…微妙な味だ。


(……しょっぱい)


 塩辛い、ともいう。俺は『塩っぽい』だと思っていた、言葉って難しい。それは兎も角、塩だ…塩か?


(これは…アレか? 俺と猿のナニな汁かダシかエキスか的な? ……いや、考えたくないけど野生なこいつ等のマナーを理解しない幼児的なアレの可能性も…)


 小さい子供がプールやお風呂の中でしちゃう気持ちのイイあれだ。解放感と背徳感と羞恥心を味わえるアレだ。俺の話ではない、得難い友人が熱く語った話だ。…違う、心得るのが難しい話、だ。言葉って難しい。

 脱線気味な思考を打ち切る。俺は勇気を持て確認しなければならない。この『しょっぱい』は、鉱泉故か、生命の営み故か。うまい話か、気まずい話か。


 一度着こんだ服を脱ぎ去り、再び温泉の中へ進む。行先はぽっかりと開けた猿のいない空間だ。この温泉の源泉は誰も近付かない風呂の真ん中、そこをコンコンと波立たせている。

 そこへ寄れば冷めない地の熱が肌を茹でる。50度位だろうか、熱くて痛い。歯を食いしばって耐えながら、何とか湯をカップに汲みあげて離脱する。足をばたつかせてヒイヒイ叫びながら急いで湯から飛び出す姿はまるでエリマキトカゲか芸人の様だ。猿たちは「何だこいつ?」という顔をしている。心外だ、一体誰の所為でこんな事をしていると思っているのか。

 猿たちに被害妄想気味な視線を送りながら、手に持つカップを見つめ…煽る。……しょっぱい。


(―――よかった…。本当に…よかった!)


 俺は嬉しかった。温泉は紛れもなく鉱泉だった。これで色々なものから解放される。声も無く涙ぐむ。

 塩、魔力、栄養魔法、不味い食事、暢気な猿たち、落胆を浮かべる友人の顔。そんな捉えどころのない思考が頭の中を駆け巡る。


 ―――俺は遂に、塩を手に入れた。



私はこの作品を書くにあたって


自分の妄想を分に書き起こし

文章から自身の妄想が再現可能か


という感じで書いているのですが皆様には私の妄想が伝わっていますでしょうか?

文章って難しいです


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