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東方神隠録  作者: 赤羽ころろ
日常の終わり、非日常の始まり編
6/9

5. スペルカード

この作品は東方プロジェクトの二次創作に当たる作品で、Youtubeにて動画実況を行っているNikolachannelの「ゆっくり実況バトオペNikola小隊奮戦記」のプロローグに当たる作品です。動画を見ていなくても問題なく読めます。


前回までのあらすじ


夏休みに訪れた神隠村で神隠しにあってしまった赤羽ころろとその幼馴染達。Nikola商店としての初仕事として人間の里で家族が団子屋を営んでいる少女 サチの依頼で団子づくりをすることに。休憩の最中ころろは自分たちの過去を語りだす。

ころろ達がこの世に生を受けたのは今から17年前、2038年のこと。そして現在2055年の夏、ころろ達はこちらに飛ばされた。地球温暖化が進み2010年代には考えられないような異常気象が頻発している。その一方で人口は増加の一歩をたどり毎年億単位で人が減っているのにまた億単位の人が生まれてくるのが現状である。そして地球の行く先が不安がられる中、また違う「不安」が世界に姿を現した。人が増えれば思想も増える。そのハネ返り達が現れたのである。そう「デザイアンショールズ

」である

「デザイアンズショールズ」は世界的に有名なテロ組織である。結成は2035年と言われている。その後色々あってさらに強大な組織になるのだがそれはまた別の話だ。2055年、ついに懸念されていた戦争に発展した。ころろ達の日本も例外ではなかった。そして3か月前ころろ達は全員親をテロで亡くした。トウキョウに出かけていたころろ、ラッキー、にょろ、アル、トライの親はデザイアンズが放ったミサイルの破片とそれによる二次災害によって亡くなった。

ころろ達はヨコスカにて学校があったため難を逃れたが突然「親」という存在が居なくなったことにより働かなくてはいけなくなった。バイトを転々として疲弊していたころろ達にアルは田舎へと避暑しに行こうと言ったのである。

「正直こっちに来れてよかったとも思ってる。 そりゃ最初は訳のわからん世界に放り出されて元の世界に戻りたいと思ったけど今になって考えてみればここに居れば戦争なんか気にしなくて済む」

ころろは空を見上げて言った。そして「だから」と続け、

「俺たちは助け合って生きていかなければならないって思ったんだ」

「そんなことがあったんだ。 もしかしたらその戦争から逃げたいって思いが具現化したのかも」

「具現化? 想いが形になるってこと?」

そうだよ、とサチは肯定し

「この世界はあっちの非常識が常識なわけだよ。 それがスペルカードにつながるのさ!」

「スペルカード? なんだそれ?」

ラッキーの頭にはハテナが浮かぶ。

「うーん博麗の巫女さんとかの方が詳しいんじゃない?」

「そっか、分かった。 行ってみるよ。 ごちそう様!」

「え? もういいの? まだ報酬払ってないよ!?」

ころろは団子が入った袋を掲げて、

「これとそのスペルカードってやつで十分だ! また依頼してくれ!」

こうしてNikola商店の初仕事は幕を閉じた。


「あ、いたいた! ころろさん」

博麗神社へと向かうころろ一行に後ろから、否、上から呼びかけるものがいた。文である。

「あのーお仕事紹介した報酬もらってないんですがぁ」

文は手を「金」の形にしていった。

「はい、報酬」「わーいお団子だぁ・・・・・・ってなんですかこれぇ!」

なんとも見事なノリツッコミの後に文は叫んだ。

「ちょっとお金じゃないじゃないですか!」

「オレは報酬って言っただけで金とは一言も言ってない」

まんまとのせられた文は不満そうに団子を頬張った。

「で、みなさん博麗神社に何しにくんですか?」

「ん? ああちょっとスペルカードのことを聞きにだな」

「スペルカード!? 貴方たち外来人がですか!?」

驚く文にころろは

「いいか、こういうのは気合だ」

「そんな精神論じゃできませんってー」

一行に文を加えてころろ達は博麗神社へと向かった。


「スペルカード!? 貴方たちが!?」

霊夢は先ほどの文より驚いて言った。

「そんなに意外なのか?」

「いやそういうわけじゃないけど普通の人間はそういう面倒事には介入しないから」

霊夢は呆れながら言った。そう、人間の里の人達は争いごとを嫌っている。もともとスペルカードとは妖怪と人間、強い妖怪が力をセーブするためなど対等な決闘のルールとして導入された。

かつて妖怪の力が脆弱化していたころ突如現れた強大な力を持った吸血鬼が次々と妖怪たちを征服していき、困った妖怪たちが霊夢に相談したことからスペルカードルールが提案された。

基本的には技の名前とそれを体現した物をいくつか考えておき、それを契約書形式で契約書に記したものを複数所持する。

「そもそもスペルカードがあってもそれを貴方たちが体現できないと意味ないでしょう?」

「え、スペルカードってなんかこう必殺技ドーン!的なあれじゃないの?」

はあ・・・とあきれた霊夢は

「まずはスペルカードの歴史からでも学んで来い!」

とそれから数時間霊夢によるスペルカードは何たるかの講義が行われた。これがまた地獄であった。とにかく同じことを何回もやって頭の中に叩き込むという洗脳とも取れる授業であった。

そしてそんな地獄を生き抜いたNikolaの5人。

「はい、あとは各々体現したい技を適当に考えて契約書にでも書いておきな」

霊夢はカード型の契約書を置いてそそくさと家の中へ戻ってしまった。

「し、死ぬかと思った・・・・・・」

「でもこれであとは技を考えるだけね」「コケ―」

「よし、じゃあ各々考えよう。 ただし夕飯までには戻る事!」

「りょうかーい!」

5人はそれぞれ求めるものを探しに幻想郷中へと散らばった。


「オレどうするかなー」

ラッキーは草原に腰を降し考えていた。幻想郷の人達は「○○程度の能力」があるらしい。ならば自分には何があるのか、それを考えていた。あちらにいる時、ラッキーはただ見ていることしかできなかった。親が死んだのも学園で聞いたしテロなんかに対抗できたわけでもない。

「なんにもないなぁーオレ・・・・・・」

草原に寝っ転がり考えた。その眼前には果てしない空が広がっていた。

「なにしてるのさぁ」

いきなり目の前に少女の顔が現れた。

「ちょっ、チルノ!? 近い!」

ばっとラッキーは飛び起き数歩下がる。チルノに関わるとロクな目にあってきてない。

「なんか悩んでるんだったらこの天才チルノ様が相談相手になるよぉ?」

ふふふ、と切り株に仁王立ちしてラッキーを見上げてきた。

「・・・・・・そっかまあお前でも相談相手ぐらいにはなるよな」

そういいチルノの横に腰を降しこれまでの経緯を説明した。

「ふーんそんなこと考えてたんだ。 馬鹿にしてはやるわね」

「誰が馬鹿だ」

するとチルノは少し考えて、

「アンタには人を笑顔にする能力がある。 そうは思わない?」

「人を笑顔に・・・・・・?」

考えてみればそうだ。誰かが暗い顔しているときに自分が何か言うとその人は笑顔になっていた。

「そっか・・・・・・オレにもできることはあったな」

さっそくカード型契約書に「符牒」を書き込んだ。

「あとは技か・・・・・・」

それからしばらくチルノと二人で技を練りまくった。様々なものを考えて完成した。それが、

「運符「幸運のラッキーボックス」・・・・・・」

人々を笑顔にするためのものがなんでも出てくる。そんな自分らしいスペルカード。そして「光符「光斬鉈」」、「天符「無限天笑拳」」を編み出した。非日常が日常ならこれもありだろう。そう思うことによってただの人間が物体の召喚を可能とする。

「これで完成だ」

「よかったよかった。 じゃああとは実践だな!」

そういうなりチルノは魔方陣を大量展開した。

「へっやる気か? 俺は強いぞ?」

「ふん、すぐにそんな口叩けなくなるわよ」

そして轟音と共に多数の光球が発射された。ラッキーは「光斬鉈」を召喚、それをよけつつチルノに接近する。が妖精といえどさすがに強くすぐに押し返される。

「まあいうだけは有るな」

ポケットからカードを取り出し叫ぶ。

「天符「無限天笑拳」!!!!!!!!」

ラッキーの「声」と共に魔方陣が展開され光弾が大量射出され集まり一つの拳となりチルノめがけ飛んでいく。

「なんの! 甘いのさ!」

チルノが繰り出したのは光球の集束撃ち。互いの光がぶつかり合いそして散った。

「ふ、まだまだアタイに勝つには百年早・・・・・・!?」

まだ勝負は終わっていない。ラッキーすでに次の手を召喚していた。そう、「幸運の箱」である。

「残念だったけど今日は外れだったんでね。 とびっきりの奴をお見舞いするよ」

ラッキーの手には魔理沙のミニ八卦炉に似たものが握られていた。

「外れた時には大抵参加賞がついてくるもんだぜ?」

そして発射する。

「祓符「不運連鎖ミスフォーチュン・リチェインド」!!!!!!」

デヴァイスから一本の禍々しい気を帯びたビームが発射されチルノに直撃する。

「ま、あんま舐めないことだな」

チルノの弱点は少し油断し過ぎなところかもしれない。

「へぇー・・・・・・ならアンタはまだ甘ちゃんね!」

「!? なに!?」

砂煙がはれるとそこにはチルノはいなかった。見上げるは上空、そこにすでにスペルカードを手に持つチルノが居た。

「雹符「ヘイルストーム」!!!」

その名の通り嵐のごとくの勢いで雹がラッキーを直撃する。上空からの攻撃は逃げ場がない。ラッキーは光斬鉈を最速詠唱で召喚、召喚のおまけともいえる光刃でそれを迎撃する。がやはり勢いに押されその大半が落とされずなおも接近する。轟音と共に頭上から降りかかる雹を走りつつ斬撃でかろうじで迎撃する。そして立て続けに空気を「斬る」斬撃、カマイタチでチルノへ攻撃する。だがあっけなく防がれる。

「へ・・・・・・これならまだ戦えるッ」

「いうじゃない。 なら日が暮れるまで相手してあげるよ!」

そして平原は氷と光に包まれた。


「どうしよう・・・・・・」

紅魔館の湖畔でアルは一人で悩んでいた。無論スペルカードのことである。必ずしも習得しなければならないわけじゃないがやはりみんなのためにも習得したい。でも運動神経は良くないし、と悩み続けもうじき一時間が経つ。

「私にはころろみたいな統率力もないしラッキーみたいに人を笑顔にすることもできない、にょろみたいに器用にできる訳でもなくトライのようにポジティブ万歳でもない。 どうしたらいいの?」

「ならばあなたはそれを見続ければよいのでは?」

アルの問いに答えたのは空ではなく人間であった。

「あ、咲夜さん。 どうしたんですか?」

「それは私のセリフですよ。 買い物の帰りにふと湖畔を見に来たらあなたが居たものですから」

十六夜咲夜、「時間を操る」程度の能力を持つ紅魔館のメイド長。人間ながら吸血鬼のレミリア・スカーレットに仕えている。

「アルさんが悩み事などあまりしないでしょう? だから気になったのです」

「そうですか・・・・・・実はですね・・・・・・」

自分たちがスペルカードを作ろうとしていること、だが自分にできることがないということを咲夜に話した。

「ふむ、そうですね。 先ほども申しましたがあなたはあの人たちを見続ければいいんですよ。 ただ見るのではなくその人たちをサポートするようにね。 自分にできないことが無いなんて思わないことですよ。 なにかしらあるはずです自分にできることが」

ふふっとほほ笑みながら咲夜は言った。

「そうですね。 探してみます自分にできることを」

アルは拳を強く握っていった。

「では私はこれで。 頑張ってくださいね」

「はい、ありがとうございました」

アルは自分に道を示してくれた少女に別れを告げ帰るべき場所への帰路についた。


「コケ―・・・・・・」

トライは悩んでいた。無論スペルカードのことだが実際は8割方今日の夕食のことを考えていた。そんな誘惑を振り切りトライは猛烈に考え始めた。まず第一に人間に戻る事。だが戻ってとしても普通の人間では足手まといになるだけだ。ならば、と思いトライは契約書に書き込んだ。

「できたぜ・・・・・・これで俺は最強イケメン男子に元通りだ!」

「転術|(符)「人神変化」、短時間という制限付きながら人間に戻れ、且つどんな兵器でも無条件に召喚できるというもの。

「これで俺は最強だ・・・・・・」

そしてトライは他の仲間たちを帰るべき家で待つことにした。が、そんな家に帰ろうとしなさそうなものがいた。にょろである。

「で、つまり貴方は私の力を使いたいわけね?」

先ほどにょろが淹れた紅茶をすすりながらレミリアは自身の目の前に跪く男に、翡翠にょろに問いかけた。

「はい、レミリア様。 俺なりに考えた答えです。 みんなのために吸血鬼が持つ力の一部を使う、それが俺にできること」

その目は決して冗談で言ってるそぶりはなく決意があった。レミリアはそれも踏まえてにょろに言った。

「ならばいいでしょう。 スペルカード使用時のみ私の力を引き出せるようにバフがかかるようにしなさい。 ですが吸血鬼の力を貴方は耐えられるでしょうか?」

いくら見た目が幼女の少女のレミリアだが実際は何百年も生きている吸血鬼でその人体構造は人間とは似て非なるものである。それに普通の人間が耐えられるか、ということであるが

「耐えます。 いや耐えてやります」

「ふふっそれでこそよ。 私の騎士」

そしてこの瞬間にょろは一時的に吸血鬼になれる能力を手に入れた。


「どうするかな・・・・・・」

ころろは悩んでいた。無論スペルカードのことである。さっきから紅魔館の方や草原の方で爆音が聞こえている。おそらくラッキーかにょろがスペルカードを試しているのだろう。

「オレは何ができるだろうか」

射的やクイズ、PCなどの電子機器は強い。がここではあまり役に立たない。趣味で動画の編集や絵を描いたりしてはいるが役に立ちそうでもない。

「・・・・・・時間・・・・・・」

思い出した。昔一度だけ周りの時間を止められたことがあった。正確には停まったわけではなくかなりゆったりした感覚で時が動くようになったということだが。事故に遭いそうになったとき、普通なら両腕骨折、最悪「死」なような事故だったがころろはかすり傷だけで済んだ。おそらくころろの本能がそうさせたのかもしれない。

「オレには時間を操れるのか?」

そんな中二臭いこと思ったことなかった。だがありえなくはない。ポケットから契約書を取り出しとりあえず書き留めておく。それをポケットに戻し家路につこうとした時だった。上の方で悲鳴がした。聞いたことのある声だった。ころろがいるのは丘の上。上の方というのは山の頂上らへんのことだ。何か嫌な予感がしころろは山頂へと急いだ。

ころろが息を切らせ山頂に着くとそこにはサチが複数の妖怪に囲まれていた。

「! ころろ来ちゃダメ!」

「おう? なんだ兄ちゃん」

ガラの悪そうな妖怪たちだ。

「その娘から離れろ・・・・・・」

「ふん、てめぇには関係ねぇだろ!」

妖怪の1人が殴り掛かってきた。それを右手で軽くいなす。武術の心得は多少ある。学校の授業で習い護身術程度の感覚でならっていたがまさかこんなところで役に立つとは。

いなされた男は勢い余って転倒する。「いってぇ・・・・・・ 」と男の苦言と共に鈍い音がした。

「おい、兄ちゃん、やってくれたのぉ・・・・・・ただで済むと思ってんのかぁ!?」

「はっただで済まないのはお前らの方だぜ・・・・・・」

「このクソガキがぁぁぁぁぁっ」

残り5人。一斉に襲いかかってくる。

(流石にキツイか・・・・・・?)

1人ずつなら相手出来るがさすがに妖怪相手となると無理がある。だからこの場でころろが選ぶ最善の道は

「・・・・・・逃げるッ」

正面から扇状に広がりつつ接近してくる妖怪達の真ん中、リーダーと思われる妖怪を踏み台にしてサチのところへ着地する。

「っ俺を踏み台にっ!?」

「サチ大丈夫か!?」

「うん・・・・・・」

とりあえずサチのところへと来れたものの状況は悪くなっていた。2人の後ろは崖であり正面には男5人。完全に囲まれていた。

「さて兄ちゃんこっからどうするんだい?」

その口はニヤニヤとしていた。

「残念だが2人ともここで死んでもらうぜ? 俺達に楯突いた罰だ」

手には短剣。深く握り締めている。

絶対絶命。

リーダーがその手を振り上げ斬りかかる。それはころろを一刀両断するコース。

「死ねやぁぁぁぁぁっ!!」

「まだ死ねないんだぁぁぁぁぁっ!」

叫びは想いとなり秘められし力を引き出す。ポケットが光り輝いた。刹那、時間が止まりまた動き出す。刀はころろの左肩を掠った。

「ぐっ・・・・・・」

「ころろ!」

左肩からは鮮血が流れていた。リーダーは戸惑っていた。

「何故・・・・・・!? 直撃コースだったはずだ!」

そして戸惑いの矛先は遂にサチへと向かう。

「何故だぁぁぁぁぁっ!!」

「それくらいにしとけよ・・・・・・」

そう聞こえた瞬間短剣の刃先が宙を舞った。振り下ろされし光り輝く鉈は確かに短剣の刃を切り落としていた。

「ラッキー・・・・・・か?」

「よう、チルノと戦うのも飽きたんでな。 家に帰ったらお前だけ約束違えてたからな。 ちと怪しいと思って散策してたらこれだ」

そして妖怪たちをその目で睨みつける。

「それ以上来てみな。 次はお前らのクビを飛ばしてやる」

その鋭い目つきは妖怪を芯から震え上がらせ退散させた。

「さてと今日の夕飯は外食だ。 行くぞ」

「え?・・・・・・」


「さてみんな揃ったようね」

よくお城で見かけるような長ーいテーブルに座らされたころろ達。現在居るのは紅魔館。そこで夕飯。ここへ来るなり咲夜が手当てしてくれた。サチもそのまま来ている。

「スゴイ・・・・・・私紅魔館入ったの初めてなんだ! いつもは怖そうなお姉さんが見張ってるから見学させてとも言えないしー」

「あら私そんな怖かった?」

「げっ! あのお姉さん!」

ちょうど外から帰ってきた紅 美鈴が意外そうな顔をしていった。サチはとっさにいすの後ろに隠れる。やはりまだ年相応の娘らしい。

「あら美鈴、外はいいの?」

ころろの右正面のメガネをかけた少女、パチュリー・ノーレッジが言った。彼女はこの紅魔館の地下にある大図書館に住んでいて大量の魔導書を読み漁っているらしい。生まれながらの魔法使いで魔理沙と違いエリートであるが、喘息もちで体が弱いらしい。それでも千年は生きているらしいが。

「ええご主人様が今日はいいって」

「ふぅん、でレミィは何がしたいのかしら?」

パチュリーは自分の左隣、すなわちころろの正面に座るこの館の主人に尋ねた。

「そうねぇ・・・・・・まあみんな揃ったし美味しい食事でも食べながら話しましょうか」

ふふふっと薄く笑いながらレミリアは言った。

(なんだ・・・・・・何かある・・・・・・)

ころろは少し警戒していた。敵としてではなく普通に友人として何か怪しいと思ったのである。レミリアがたかが夕食のためにNikola全員を呼び集めるなど考えられない。何か裏がある。そう思ったのである。ころろが脳内で思考をめぐらせていると数人のメイドが料理を運んできた。そして慣れた手つきで全員の前に食事を並びおえて素早く部屋から出て行った。

「では本題に入りましょう。 Mr.ころろ、貴方先ほどスペルカードを発動させたわね?」

「!? いやオレは・・・・・・」

おそらく先ほどのことだろう。確かにころろの叫びと同時に一瞬周りの時間が止まったと思ったが止めることを継続できなかった。つまりアレは失敗した。ということなのだが、まだスペルカードに符牒も記してないところでの発動だったがまああの状況だ。ルール無用ではあったが。

「失敗した、と思っているでしょう? でもあれはどちらかと言えば「不完全に発動」したと言った方がいいかしらね」

「「不完全に発動」した?」

「ええ、おそらく貴方のその「編集」する程度の能力は私の「運命」を操る程度の能力と咲夜の「時間」を操る程度の能力を掛け合わせて半分にしたというところね。 貴方がまだ自分の能力を把握していなかったから不完全に発動してしまった。 貴方のそのスペルカードは時を止めて運命に抗わない程度に運命を変えるとでもいいましょうか。 つまり貴方が切られるのは確定だったけど貴方が咄嗟に死ねないと思ったからその思いがスペルカードによって具現化されて腕の切断から掠り傷に運命を変更したのでしょう」

只々ころろは驚いていた。つまりころろは運命を操れるということ。そんな能力があるだなんて思っていなかった。

「でも貴方のその力は単体では意味が無いのよ。 仲間がいて初めて効果があるスペルカードなのよ」

「・・・・・・なら俺も何か自衛できるものを作らないといけないな」

「そうね。 でもそれまでは貴方達がころろを守ってあげるのよ?」

ころろの両サイドにいる少年少女たちに問いかけた。

「もちろん」

「私がサポートしてあげる!」

「まあ仕方ないな」

「まったくキミってやつは」

「うんうん! 私もお団子でサポートしようかな!」

「みんな・・・・・・」

ああ仲間がいる。自分を必要としてくれる人がいる。こんなに嬉しいことは無い。

「ありがとう、みんな」

「さて、話も終わったし食事会でもスタートさせましょ?」

「やったー! 私こんな豪華なの初めてなんだ! お母さんたちに自慢しちゃお!」

こんなに大勢で食事をするのはいつ振りだろうか。みんなでワイワイ喋りながら夕食をたのしんだ。そして楽しい時はあっという間に過ぎる。飲み終わった紅茶をコトっと置き、ナプキンで口を拭いたレミリアは

「さてと、食事も終わったことですし食後の運動でもしましょうか」

「食後の運動?」

ええ、と頷き「みんな外へ行きましょうか」とみんなを連れて外に出た。


「なあレミリア~運動なんて何するんだ?」

「あらラッキーわからない? 貴方たちせっかくスペルカードを習得したのだからそれを私たちに見せてみなさい」

そしてレミリアとその妹、フランそして咲夜にパチュリー、メイリンから強い殺気が発せられ始めた。

「へっこれじゃあどっかの童話と一緒だな!」

「こらラッキー、集中しなさい!」

「全く・・・・・・レミリア様とフラン嬢を目の前にその態度とは、こんな時じゃなければオレがぶん殴ってやるとこだぜ?」

「さあ俺の力をみせようか」

全員が戦闘態勢に入り身構える。そして、

「腕の傷を完治させたのはこの為か・・・・・・まったく何か裏があるとは思っていたがこういうこととはな」

つい先ほどまで動かなかった左腕をぐるぐると回したころろは「うーんまだ違和感あるけど・・・・・・」

「どうやらただ飯ってわけではなさそうだな」

ニヤッと笑ってころろは言った。サチは館の窓から見ている。なにせこれからここで繰り広げられる「遊び」はただの少女にはキツすぎるものである。

「当たり前じゃない。 私が貴方たちのような人にタダでディナーを奢るとでも?」

「今日はとっても暇だったからね! 魔理沙の代わりに遊んでもらお!」

「レミリア様のためお供します」

「やれやれレミィったら大人げないわよ・・・・・・まあ私も付き合うけど」

「さあどんな技を使ってくるのかな?」

「編集」する程度の能力を持つ少年、赤羽ころろ。

「笑顔」を振りまく程度の能力を持つ少年、黄沢ラッキー。

何かに「引き込む」程度の能力を持つ少年、翡翠にょろ。

全てを「見通す」程度の能力を持つ少女、蒼樹アル。

万物に「変化」する程度の能力を持つ少年、トライ。

「さてとNikola商店、出撃するぞッ!」

紅い館の前で吸血鬼と少年少女による究極の「遊び」が始まった。

そして運命は廻りはじめる――――――――。


to be continued

どうもみなさんこんにちは作者の赤羽ころろです。明かされましたころろ達の過去。今回はそこまで掘り下げるつもりはなかったので世界情勢だけに留めました。実はわかる人にはわかると思いますが私のとある作品と共通の世界観で話が進んでいます。まあ全く別物ですが。そんな神隠録、次回もよろしく!

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