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彼女が『乙女ゲームの悪役』になる前に+オウガIFルート  作者: 空乃智春
【彼女が『乙女ゲーム』の悪役になる前に/高校編】
8/43

8.スーパーでお買い物

「今日もまた、オレの家に寄るのか」

「うん。だってオウガ、私がいないと夕食買って済ますでしょ。それは体によくないと思うんだよね」

 課題を終えたところで、オウガと二人で近くのスーパーへ行く。


 オウガの部屋には立派なキッチンがあるけれど、本人は全く自炊をしない。

 作れないわけじゃないみたいだけど、買って食べたほうが楽とのことだ。

 オウガの家に上がり込んで夕飯を作り、それを食べてから私は家に帰る。

 我ながらずうずうしいとは思うけれど、あの家で新しい家族と食卓を囲むのは気まずかった。


「まぁ、オレは助かるから大歓迎なんだけどな。メイコがこんなに料理上手だとは思ってなかったから、驚いてはいるが」

 たぶんオウガは、私がオウガの家で夕食を作る本当の理由に気づいている。

 そこには触れずに、受け入れてくれることを……口には出さないけれど、感謝していた。


「この間まで、主婦してたからね。オウガ、タマネギとにんじんもカゴに入れておいて」

「もしかして、今日はカレーライスか」

「正解。この間作ったの、結構気に入ってたでしょ」

「あぁ、美味しくて自分でも同じ材料で作ってみたんだが……メイコのものと同じ味にはならなかった」

 何がいけなかったんだと、オウガは不思議そうな顔になる。


「ふふっ、実は隠し味があるんだよね。同じルーを使っても、カレーライスって家庭で味が結構違うんだよ」

 そんな会話をしながら、会計を済ませて外に出る。


 ふと、店近くの裏路地に、うちの高校の制服が目に入った。

 うちのクラスの柳くんが、上級生の不良に絡まれている。

 嫌な場面を見てしまったなぁと思った。


 助けに入るのは怖いし、こういうのは見て見ぬふりが一番だ。

 そうは思うのだけど……やっぱり放ってはおけない。

 たしかあの場所、店の女子トイレの裏側だ。

 女子トイレの裏側で変な声がするんですとか、トイレの中で店員さんを呼ぶフリでもすれば……きっとどうにかなるかもしれない。


「オウガ、ちょっと荷物持ってて」

「まさかとは思うが、助けにいくつもりか。金銭を要求されるくらい、男の世界ではよくあることだろう」

 オウガが呆れたような声を出す。


「よくあることなのかは知らないけど、放っておけないでしょ。クラスメイトだし」

「はぁ……わかった。じゃあ、オレがどうにかしてくる」

 私に荷物を押しつけ、オウガは直接不良達のところへ歩いていく。

「ちょっとオウガ! 危ないから! こういうのは店員さんとか、他の大人にお願いして……」

 大丈夫だからというように、オウガが振り返りもせずに私へ手で合図をする。


 オウガが不良達に話しかける。

 遠すぎて内容まではわからないが、すぐに不良達は退散していった。


「これでいいんだろ」

「……何を話してきたの?」

 面倒臭そうに口にしたオウガに尋ねる。

「こいつはオレのクラスメイトだから、そういうことはよせって言っただけだ。あと、ここはオレがよく買い物をする店だから、近くで目障りなことをするなって伝えた」

 ほら行くぞと、オウガが買い物袋を持つ。


「あ、あの……!」

 声をかけられて振り向けば、不良に絡まれていた柳くんがいた。

 ひょろりとした優しげな男の子といった印象の子だ。


「ありがとう、桜河くん」

「礼ならメイコに言え。メイコが助けろって言ったから、助けただけだ」

 お礼を言う柳くんに、興味なさそうな態度でオウガは先を歩いていく。

 そのシャツをぐっと掴んだ。


「なんだメイコ。まだ何かあるのか。オレはお腹がすいたから、さっさとメイコの作ったカレーを食べたいんだが」

「柳くんがお礼を言ってるんだから、そんな態度はないでしょ?」

 注意すれば、渋々というようにオウガが柳くんの方へ体を向けた。


「どういたしまして。これでいいか?」

 物凄く投げやりに、オウガは言う。

 まだ私は納得してなかったけれど……その場はそれで立ち去ることにした。


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本作のその後の話、「本編前に殺されている乙女ゲームの悪役に転生しました」もよければどうぞ。
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