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彼女が『乙女ゲームの悪役』になる前に+オウガIFルート  作者: 空乃智春
【彼女が『乙女ゲーム』の悪役になる前に/社会人編】
34/43

34.本日は乙女ゲームの発売日です

「クライアントが二つ上のプランに変更するって言ってた件だけど、もう提案書は制作部に回した? 今日中に仕上がりを見せてほしいって言われてたよね?」

「……あぁ」


 声をかけたのに、オウガは難しい顔でパソコンの画面を見ている。

 先ほどから作業が進んでいる様子もなく、あきらかに生返事だ。

 コツンと頭を叩けば、ようやく我に返ったようだった。


「一体どうしたの? 朝から変だよ。気分が悪いの?」

「大丈夫だ。メイコこそ……気分が悪かったり、調子が悪かったりしないか?」

 オウガは何故か私の心配をしてくる。

 どうしてそんな不安な顔をしているのか、よくわからない。


「やっぱり何かあったんでしょ。別に言いたくないならいいけど、今日は早く帰ったほうがいいよ。早退するなら私が代わりにやっとくよ?」

 アニ●イトには寄れなくなるだろうけど、オウガの体調が悪いならそれどころじゃない。

 けど、オウガは申し出を断った。


「心配してくれてありがとな。けど、平気だから」

「そう? 何かあったらすぐ言ってね?」

「……あぁ」


 オウガが私の頭を撫でる。

 今まで仕事中に、オウガがこうやって頭を撫でてくることはなかった。

 その動作がまるで、自分を落ち着かせようとしているように見えた。

 ……無意識にやってしまっている感じだ。


 本当に大丈夫かな……?

 オウガはムリしがちだから、気になってしまう。

 けど、熱もないみたいだし、体調が悪いわけではないようだ。


 オウガに気を取られすぎてもダメだよね。

 急いで仕事を片付けなければ、今日も残業になってしまう。

 デスクに戻って、私は書類を片付け始めた。



 ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆


 今日はあの『黄昏の王冠』の続編の発売日。

 どれだけ待ちに待ったことか。

 絶対に今日手に入れてプレイする――その情熱だけで、作業はとてもはかどった。


 これで業務のほとんどは、終了だ。

 やりきった気分で最後の確認作業にと、リストを照らし合わせる。

 一件だけ、まだ終わっていないものがあることに気づいた。

 朝にクライアントから変更指示が出ていた、オウガの担当分だ。


「オウガ、朝に言ってたやつまだ出てないみたいなんだけど。もしかして、まだ制作に回してなかったりするの?」

 確認すれば、オウガがしまったというような顔をした。

 これは……残業決定だ。


「私も手伝うから、さっさと終わらすよ。どこまで終わってるの?」

「まだ、提案書も書いてないんだ……すまない」

 相手はお得意様だし、商品のランクを変えてくることのよくあるクライアントだった。

 対応は慣れているはずなのに、オウガらしくないミスだ。


「じゃあ私が前に作ったやつを流用して作るから、オウガはクライアントに遅れる旨を連絡して。それが終わったら、制作部に声をかけてきて!」

 オウガに指示を出して、仕事を手伝う。

 作業を終える頃には、日がすっかり暮れていた。


「よし、どうにかなったね!」

「助かった。ありがとな、メイコ」

 ほっとした顔で礼を言って、オウガがクライアントに最終の電話をかける。


 もう後は帰宅するだけだし、オウガも大丈夫だろう。

 アニ●イトは会社から駅までの間にあるし、走ればギリギリ間に合いそうだ。

 用意していた鞄を持って早足で会社を出る。

 どうにか滑り込んで、ゲームをゲットすることができた。


「メイコ!」

 誰からクリアしようかなぁ。家に帰るまで待ちきれないや。

 ちょっとだけと、店の外で少しパッケージを眺めていたら、ふいに名前を呼ばれた。


「あれ、オウガ。どうしたの?」

 オウガはここまで走ってきたらしく、髪が乱れていた。


「……よかった、まだ近くにいて。今日はメイコのおかげで助かったからな。一緒にご飯でも食べに行かないか?」

「ごめん、今日はムリ! 予定があるんだ!」

 即答で誘いを断る。

 オウガには悪いけれど、今日はゲームをすると決まっていた。


「予定ってなんだ」

「予定は予定だよ。おごってくれるなら別の日がいいな!」

 後ろ手にゲームを隠しながら言う。

 ゲームしたさに誘いを断ったと知られたら、オウガが呆れて、そしていじけるからだ。


「どこかに行くのか? なら……オレもついてく」

「なんでそうなるの!? やっぱりオウガ、今日は少し変だよ!?」

 真面目な顔で、オウガはそんなことを言う。


「別に出かける予定はないよ。家に帰ってどうしてもしたいことがあるの!」

「じゃあ、オレもメイコの部屋に行く。もしくはオレの部屋でそれをすればいい」

 いつものオウガは引き際をわきまえているのに、今日はしつこい。

 一体どうしたんだと戸惑いながらも、振り切るように歩き出そうとした。

 交差点へと足を向けた瞬間、いきなり明るい光が目に飛び込んできて。


 まばゆい光の向こうには、大きなシルエット。

 トラックが突っ込んできていると頭が認識する前に、息の詰まる衝撃と共に体が宙を舞った。


「メイコっ!!」

 遠のく意識の中――オウガが、私の名前を呼んだ声がした。



◆◇◆【ここから先は分岐となります】◆◇◆


1.「オウガがメイコを助けられた」と思うなら

→このまま次の話へ(明日7時投稿予定です)


2.「オウガがメイコを助けられなかった」と思うなら

→「本編前に殺されている乙女ゲームの悪役に転生しました」へ。

 下のリンク、またはシリーズからページへ飛べます。

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本作のその後の話、「本編前に殺されている乙女ゲームの悪役に転生しました」もよければどうぞ。
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