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彼女が『乙女ゲームの悪役』になる前に+オウガIFルート  作者: 空乃智春
【彼女が『乙女ゲーム』の悪役になる前に/高校編】
27/43

27.宣戦布告1

「ここ数日、メイコに避けられてから……ずっと苛々してた。メイコのことだから、何か理由があるんだろうって、話してくれるまで待つつもりだった」

 オウガは、私の目を見つめたまま、ゆっくりと語り出す。


「けど……自分でも思ってた以上に、メイコと話せないのが辛くて。メイコに話しかけようとしたら、サキのやつが……メイコは、もうオレと関わりたくないんだって言ってきた。オレが嫌になって、避けてることに早く気づけって言われた」

 サキときたら、何ていうデタラメをオウガに言ってくれてるのか。

 出会った当初から、犬猿の仲の二人だけれど……オウガにこんなことを吹き込むのはさすがに酷い。


「メイコが仲良くしてくれるから、忘れてたんだ。自分が嫌われて、恐れられる存在だってことをな」

 オウガは自嘲した。


「もっと仲良くなりたいと望むと……相手は離れていく。オレをを怒らせるのが怖いから、優しくしてくれてたんだと、後になって気づくんだ。メイコも今までの奴らと同じだった。それだけの話で……しかたないって思おうとしたんだ」

 私へとオウガが一歩、距離を詰める。


「けど……ムリだった。メイコだけは他の奴と違うって、心が叫んでたんだ。嫌われたわけじゃないってほっとする前に、彼氏ができたって聞いて……それどころじゃなくなったけどな」


 さらに一歩、オウガが近づく。

 息をのむような威圧感。

 思わず後ずさりすれば、柵に背中が当たるところまで追い詰められた。


「メイコ」

「な、何……?」


 オウガの両手が私の体を挟むように、柵へと押しつけられる。

 まるで猛獣の檻に放り込まれて、囚われたような気分になった。

 慣れている私でも怯んでしまう迫力が、今のオウガにはあった。


「あんなやつより、オレのほうがずっとメイコを好きだ。メイコのことを好きでもないやつに渡す気はない」

 宣戦布告みたいなことをいうオウガは、ふっきれた顔をしていた。

 それだけ言うと、身に纏う空気を軟化させた。


「大体、なんだあの男は。メイコが目の前で男に連れさらわれたのに、追ってもこない。会計もメイコ一人にやらせて、置き去りにして歩いて……なんでアレと付き合ってるんだ」

 柵から手を離して、オウガが腕を組む。


 眉間に皺を寄せ、呆れたような口調。

 いつものオウガがそこにいて、そのことにほっとする。

 体に力が入りすぎていたと今になって気づいた。

 


「オウガ、まるで娘を嫁にやらん!っていうお父さんみたい」

「おと……人が告白してるのに、お前なぁ……」

 思わず笑ってしまえば、オウガが気の抜けたような顔をする。

 それがおかしくて、さらに声を上げて笑えば、オウガもつられたように表情を崩した。


「というか、オウガ先に帰ったはずなのに……どうして私がお会計をしたって知ってるの?」

「あ……えっと……それは、だな……」

 気になったことを尋ねれば、オウガがしまったというような顔になる。


 私のことが気になって、帰ったふりをして様子を見守っていたらしい。

 心配してくれてたんだなと思うと、嬉しくなる。


 そのとき、私の携帯電話がぶるりとポケットの中で震えた。

 オウガに断ってから、携帯電話の画面を確認すれば、高橋くんからメールが入っていた。


 今日もファミレスに呼び出しかな?

 そう思ったのに、そこには「別れよう」の一言だけ書いてある。


 あれ……私、ふる前にふられた?

 いやまぁ、いいんだけど。


 わかりましたと返信しようとして、こういうのはやっぱりメールよりも、直接電話するべきだよねと思い直す。


「オウガ、少し待ってて!」

 屋上にオウガを残して、階段を下る。

 人気のない空き教室へと入ってから、電話をかけた。


「もしもし、高橋くん? 私です。朝倉ですけど……別れようって、どういうことですか?」

『そのままの意味だけど』

 ただ用件を伝えるかのような平坦な声で、高橋くんは呟く。


『昨日あの後、朝倉さんの友達に声をかけられたんだけどさ。遊びで付き合って、朝倉さんを悲しませたら殺すって脅された。正直、面倒だなって。俺、そこまでして朝倉さんと付き合いたくないし』 

「はぁ……」

『そういうわけだから』

 曖昧に返事をすれば、言いたいことだけ言って高橋くんは電話を切ってしまった。

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本作のその後の話、「本編前に殺されている乙女ゲームの悪役に転生しました」もよければどうぞ。
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