24.ドキッとするデート
気がつけば放課後になっていた。
昼休みにオウガに彼氏ができたことを報告しようと思ったけれど、サキも一緒だったし、何よりオウガの不機嫌さがマックスで声がかけられなかった。
「今日の桜河くんはまた一段と迫力があるな……」
「人でも殺してきたみたいだな……」
クラスメイトがこんな感じでざわつくくらいには、オウガから殺気が溢れていた。
結局、オウガに声をかけられずに、彼氏からメールがあって呼び出される。
昨日のファミレスに行ったら、彼氏が待っていた。
名前は……たしか、高橋くんと言ったはずだ。
彼氏というのに名前すらうろ覚えだった。
それにしても……気まずい。
何を話したらいいのやら、さっぱりだった。
高橋くんは先ほどから注文したものを黙々と食べていて、会話が続かないから私も同じように注文したオムライスばかり食べている。
い、一応これってデートだよね?
デートだと意識すると、緊張のあまりオムライスの味がしない。
世の中のカップルってやつは、相手と一緒にすごす時間をどうやって乗り切っているんだろう。
これじゃダメだとわかってるんだけど、ホントもうどうしたらいいのかなっ!?
「きょ、きょ、今日は天気がよかったですねっ!」
「そうだな」
勇気を振り絞ったのに、速攻で会話終了した。
うう、この時間……心臓に悪いよ。
他の話題を探そう。
「高橋くんは、その……私のどこを気に入ってくれたんですかね? 結構普通というか、あまり自分に自信があるわけじゃないんですけど……」
「ん……彼女いなかったし、誰でもよかったんだよね」
控えめに尋ねてきたら、そんな答えが返ってきた。
一瞬むかっとしたけれど、よく考えたら私も同じような感じだった。
高橋くんのどこが良かったですかと言われると……うん、全く思い浮かばないや!
……最悪にもほどがある。
八割くらいは、サキや周りの雰囲気に流されたようなものだった。
「俺、生姜焼きと山盛りポテト頼むけど、あんたも何か頼む?」
「いえ……大丈夫です」
高橋くんはすでにチキン南蛮定食とうどんを食べたのに、さらにまだ食べるつもりらしい。
私もよく食べるほうだけれど、緊張のせいか食欲は湧かない。私と違って高橋くんはデート慣れしてるんだろうか。
というか、仮にも彼女なのに「あんた」はないんじゃないかな……ずっと無愛想だし。
悶々とする私の目の前で、料理が高橋くんのお腹へと収まっていく。
ポテトは二人で食べようと言ってくれるかな。
そんな淡い期待を抱いていたら、店員さんがテーブルの真ん中へ置いたそれを、わざわざ高橋くんは自分のほうへと引き寄せていた。
……気をきかせて頼んでくれたわけではなかったらしい。
「そろそろ、行こうか。これよろしく」
「はい……って、えぇ!?」
当然のように手渡された伝票には、高橋くんが食べたメニューがずらりと並んでいた。結構なお値段だ。
まさか、これ私が払うの!?
ドキッとしたけれど、高橋くんに直接聞くこともできずに、お会計を済ませる。
きっと外に出てから代金を払ってくれるんだよねと思っていたら、そんなこともなく。
その場で解散して、家へと帰る。
「つ、疲れた……」
気疲れどころか、財布も大打撃だ。
世の中のカップルって、皆こんなものなのかな……。
何だかよくわからなくなってくる。
もっと皆幸せそうに見えた気がしたんだけど。
あまりにも疲れていたんだろう。
着替えることもなく、私は眠ってしまっていた。




