22.修学旅行はカップル発生イベントです
当然のように、オウガは再試を軽々クリアした。
実力なんだから当然だ。
先生もオウガに謝ってきたけれど、それくらいじゃ腹の虫は収まらない。
誰がオウガをカンニングだと言ったか探しだしてやろうとすれば、オウガに止められた。
「別に誰がオレを陥れようとしたかなんて興味ない。それに……メイコが怒ってくれたから、もう十分だ」
らしくない優しい顔でそう言われてしまったら、ぐっと堪えることしかできなかった。
テスト終わりには修学旅行があり、私はオウガやサキと一緒に旅行先を回った。
少々騒がしいけど賑やかで楽しくて、とてもいい修学旅行だった。
そして、修学旅行が終わってしばらくして、私は唐突に気づいた。
なんか、教室に……カップルが増えてない?と。
あっちでいちゃいちゃ、こっちでいちゃいちゃ。
どこもかしこも桃色の雰囲気だった。
どうやら、修学旅行先でロマンスが展開していたらしい。
そんなロマンス、私には……一切なかったけどね?
おかしいなぁ。
結構仲よかった女の子にも、いつの間にか彼氏ができてるし。
なんというか、少々焦るものがある。
まぁでも、サキにも彼氏はいないし、大丈夫だよね。
彼氏とか急いで探すものじゃないし、別に今のところ欲しいとか思ってないし。
べ、別に強がりじゃないけど!
「本当、カップル増えたよね」
そんな事を考えていたら、私の頭の中を読んだかのようにサキがそんなことを言う。
「いい機会だからいっとくけど、実は私も彼氏が出来たんだ」
「えぇーっ!?」
思わず声をあげてしまう。
サキがしーっと唇に指を当ててきた。
「えっ!? 一体いつの間に!?」
「修学旅行のときに告白されたんだよ。夜中に呼び出されてさ」
まさかサキにまで先を越されてるなんて!
ショックを受けていたら、サキが私に顔をよせてきた。
「思ったんだけどさメイコ、あんたこのままじゃ……ずっと彼氏できないよ? あんたこの学校じゃ、裏番ってことになって、オウガと付き合ってるって噂が流れてるからね」
小さな声でサキが囁いてくる。
「裏番って言われてるのは知ってたけど……なんでオウガと付き合ってることになってるの!?」
「いつも一緒にいるし、仲良く見えるんじゃないの? 本当に不本意だけど」
戸惑う私に、サキは面白くなさそうに答えた。
たしかにこれじゃ、私に彼氏ができるのはムリに思えた。
「でさ、思ったんだけど。他校に彼氏を作ればいいと思うんだ。メイコも彼氏欲しいでしょ?」
「うーん……そりゃ、いつかは欲しいと思ってるけど」
皆に彼氏ができて、正直羨ましいなと思っていた。
けど、欲しいかって聞かれると……少し首を傾げてしまう自分がいる。
なんというか、自分が彼氏といちゃいちゃしているところを……あまり想像できない。
少女向けのマンガや恋愛シミュレーションゲームは大好きだし、ああいう恋愛に憧れはあるけれど。
実際にと考えると、自分とは別世界のことのように感じられてしまった。
「そうやってのんびり構えてたら、彼氏なんて絶対できないよ。まぁ、ものは試しだし、会うだけあってみようよ! おすすめの人がいるんだ。かなりイケメンだよ?」
「いや、でも……いいよ」
「会うだけ、会うだけ! それならいいでしょ?」
遠慮したのに、サキが強引に勧めてくる。
結局、サキに押し切られ、私はその人に会うことになってしまった。




