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彼女が『乙女ゲームの悪役』になる前に+オウガIFルート  作者: 空乃智春
【彼女が『乙女ゲーム』の悪役になる前に/高校編】
20/43

20.とうとう大きな差をつけられました

「オウガはさ、どうして子供が苦手なの? 昔に何かあった?」

 聞かないほうがいいかなと思いながらも、やっぱり気になって帰り道に尋ねてみる。

 オウガは夕焼けの空を見上げ、それからしばらく黙っていた。


「……小さいころのオレは、あまり力加減が上手くいかなくて……同級生の奴らや弟を怪我させることが多かったんだ。子供を見ると、そのときのことを思い出して、また傷つけそうで怖い」

 あまり近寄りたくないと、オウガは溜息を吐いた。


「でも、それ子供のときのことでしょ。今のオウガは大丈夫だよ」

「……わかってはいるんだがな。苦手なものは苦手だ。同じような理由で、小動物も苦手だ」

 トラウマってやつなんだろう。

 オウガの表情は暗かった。


「大丈夫だよ、オウガ。オウガは最初の日に、悪い大人から私を助けてくれたじゃない」

「それと子供が苦手なのと、どう関係あるんだ」

「最初私のこと、オウガは子供だと思ってたでしょ? 苦手なのに助けてくれた」

 あんなの気まぐれだと、オウガは吐き捨てる。


「けど、オウガが助けてくれたから、私は助かったよ。大丈夫だよオウガ。昔みたいにはならないって、私が保証する!」

 何の根拠もないし、私が保証したところで解決にはなってない。

 それでも、胸を張って言い切れば……オウガはきょとんとした顔をして、それから思わずというように噴き出す。


「メイコがそういうと、そんな気がしてくるな」

「でしょ? だから、身構えなくて大丈夫!」

 ようやくオウガが笑ってくれて、よかったと思う。

 暗い顔はあまりみたいものじゃない。


「あとそれとね、オウガ。林太郎が千五百歳って言ってた件なんだけど。あれ、アニメの設定をぱくってるだけで、見た目も中身も小学生だからね?」

「アニメ……? ときどきメイコが見せてくれる、テレビの中の動く絵のことだよな?」

 オウガが訝しげな顔になる。


 日本の勉強ということで、私はオウガにいろんなアニメも見せていた。

 アニメなら子供にもわかりやすくできているから、外人のオウガでもわかりやすいかなと思ってのことだ。

 観てもらったほうが早そうだ。

 そう判断し、林太郎が大好きな中二病アニメのDVDを全巻、オウガに貸した。


 次の日。オウガは徹夜したのか目の下にクマがあった。

「あいつの言ってたことは、全部アニメの中のことだったんだな……」

「やっぱり……本気で林太郎の話し信じてたんだ?」

 オウガは頭が痛いというような顔をしていた。


「林太郎に悪気はなかったと思うし、怒らないでよ? 林太郎のほうもまさかオウガが本気で乗っかってくれてるなんて、思ってないだろうし」

「……それはどうだろうな」

 はぁ、と溜息を吐くオウガは疲れ切った様子だった。



 ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆


 保育園での職業体験で、オウガは緊張した様子だったけれど頑張っていた。

 体験の時間が終わった後、だから大丈夫だって言ったでしょと言えば、そうだなと答えてくれた。


 そんなふうにすごしていたら、あっという間に秋がきて。

 そして、事件が起こった。


「オウガ……これ、どういうことなの?」

「どういうことも何も、日頃の努力の結果だな」

 オウガの手元にある紙を覗き込んで、目を疑う。

 そこには二学期末のテストの結果が書かれていた。


「学年で……三十番? クラスで五位って、オウガが!?」

「やっぱり現代文や古文が苦手だな。漢字も多いし、書いたやつが何を考えて書いてるかなんて、読む奴によって違うとらえ方になると思うんだが」


 驚く私に対して、オウガは冷静に分析をしている。

 私なんて百番以内に入るどころか、下から数えたほうが早いくらいなのに!!


「メイコは……悪い点だな。テスト前にしか勉強しないからだ」

 前まではオウガを教えるため、一緒に勉強していた私だけれど、最近ではさぼりがちだった。


 私が教えなくてもオウガは一人で勉強する。

 なので、オウガが勉強している間、その部屋で持ち込んだマンガを読んだり、大きなテレビで好きな番組を見たりして有意義にすごしていた。


「くっ……悔しい……」

「そう思うなら、今日から一緒に勉強な。ちゃんと教えてやるから」

「それが余計に悔しい……!!」

 オウガはやれやれといった様子だ。

 私がその席次なら、飛び上がるほど喜んで自慢して回るというのに、さっさとポケットに席次表をしまってしまった。

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本作のその後の話、「本編前に殺されている乙女ゲームの悪役に転生しました」もよければどうぞ。
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