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彼女が『乙女ゲームの悪役』になる前に+オウガIFルート  作者: 空乃智春
【彼女が『乙女ゲーム』の悪役になる前に/高校編】
18/43

18.プレゼントは身につけるもので

 私達は無事に二年生に進級した。

 今年もまた、オウガやサキと同じクラスだ。


 二年生にあがったのをきっかけに、私は旧姓の百瀬から朝倉に変更し、大地と義理の兄妹だと公表した。

 そっちのほうが、女子の面倒な恨みを買わないだろうという考えからだ。

 あの大地と一つ屋根の下ということで、私に敵意を向けてくる女子が出てくるかもしれない。

 そう、身構えもしたけれど、心配はいらなさそうだった。


 オウガの脅しがばっちり効いているのと……私がこの学校を裏で仕切っている、番長だという噂が流れてしまったためだ。

 本当……なんでこんなことになったんだろうね?

 まぁ、原因はどう考えてもオウガなんだけどね!


 上級生の不良を倒し、他校の生徒までぶちのめしたオウガが、私にだけ頭があがらない。

 そのため、私がこの学校を実際には仕切っている……そんな噂が流れ始めたのだ。


 うん、本当……どうしてこうなったんだろう。

 校内で不良の子達に会うと、道を譲られるし。

 女の子達の一部は、私を遠巻きにしているのがわかってしまう。

 あだ名はすっかり裏番だった。

 まぁ、それはもう諦めているのだけれども。



 ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆


「さて、問題です。今の季節は何でしょう?」

 朝、通学路であったオウガに、おはようの挨拶もそこそこに問題を出す。

「夏だな。メイコの国には四季がある」

 簡単な問題だというように、オウガは答えた。


 そう、今は七月。

 今日の午前中の授業が終われば、明日から夏休みだ。

 オウガと出会って、もうすぐ一年が経とうとしていた。


「そうです。夏です。それで、オウガが首に巻いているそれは何でしょうか?」

「メイコからもらったマフラーだ。どうしてそんな当たり前のことを聞くんだ?」

 気の早い蝉が鳴く中、偶然登校時間が被った私とオウガは、通学路を歩いていた。

 すでに冬服と夏服の切り替え時期に入っているというのに、オウガの首にはマフラーが巻かれている。


「あのね、オウガ! 夏にどうしてマフラーなんか巻いてるの! いい加減外しなさい!」

「気に入ったんだからいいだろ?」

「よくない! 暑苦しいよ!!」


 オウガはどうやら、冬に私があげたマフラーをすっかり気に入ったようだった。

 それはいいのだけれど、すでに季節は春を通り越して、夏だというのに巻くのはいかがなものだろうか。

 やっぱり暑いからか汗をかくため、マフラーは毎日洗濯しているらしく、だいぶ色あせてしまっていた。


「そのマフラーのどこが気に入ったの? どこにでもある普通のマフラーだよ?」

「それはそうかもしれないが……メイコがくれたものだからな」

 呆れながら言えば、オウガがボソボソとそんなことを言う。


 私からプレゼントされたのが嬉しくて、いつも巻いてきていたらしい。

 ……ときおりオウガって、結構かわいいこと言うんだよね。

 そういうことしそうにない顔をしてるくせに、そのギャップのせいか余計にくる。


「オウガ、誕生日はいつ?」

「もう過ぎた」

「なら、今日でちょうどオウガと出会って一年だし、マフラーの代わりになるもの買ってあげる」

「買ってもらう理由がない」

 いい案だと思ったのに、オウガはきっぱりとそんなことを言う。


「あのね、オウガ。友達同士は……誕生日に贈り物をしあうものなのよ」

「そうなのか……?」

 適当な私の言葉に、オウガは知らなかったと驚いている。

 わりとこういうところに素直なオウガは、私の言うことを鵜呑みにしてくれた。


 マフラーの代わりに何がほしいかと聞けば、身につけるものがほしいとオウガは言った。

 学校帰りにデパートに寄る。

 オウガにプレゼントと考えて、私が思いついたのは伊達眼鏡だった。

 

「オウガ、このサングラスかけてみて」

「こうか」

「凄いよオウガ、よく似合ってる! スナイパーとかヤのつく自由業の人みたい! 似合いすぎて怖いね! これにしちゃう?」

「……別にいいが、これかけたままずっとメイコの隣にいるからな。裏番の次のメイコのあだ名は、お嬢で決まりだな。確かこの前みた映画では、お頭の娘のことをそう呼んでたよな?」


 眼鏡コーナーへ行って、色んな眼鏡を吟味する。

 少々オウガをからかえば、自虐ネタとも取れるような返しがきて、逆にからかわれてしまった。


「というかメイコ。オレは目が悪いわけじゃないぞ。なのに、どうして眼鏡をプレゼントしようとするんだ?」

「度が入ってないから大丈夫。まぁとりあえず、これかけてみてよ」

 そういうことを言っているわけではないとわかっていたけれど、強引にオウガへと眼鏡をかけた。


「うん、私の目に狂いはなかったね! 眼鏡をかければ、冷徹な生徒会長キャラっぽくなるよオウガ! 眼鏡してたら、街で絡まれることも少なくなるんじゃないかな。うん、よく似合ってる!」

「それ、褒めてるのか……?」

 私の言葉に、オウガは訝しげな顔をする。


「もちろん! 格好いいよオウガ!」

「……そうか。それならいい」 

 元気よく請け負えば、オウガは満更でもなさそうな顔をした。

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本作のその後の話、「本編前に殺されている乙女ゲームの悪役に転生しました」もよければどうぞ。
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