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彼女が『乙女ゲームの悪役』になる前に+オウガIFルート  作者: 空乃智春
【彼女が『乙女ゲーム』の悪役になる前に/高校編】
17/43

17.高校にはボスがいるそうです2

「……メイコ、こいつらは何を言ってるんだ?」

 少し困った顔でオウガが私に尋ねてくる。


「前に上級生が絡んできて、オウガはそれを返り討ちにしたでしょ? それで、その人達が是非手合わせをしたいって言ってるんだけど……」

「面倒だから断る」

 嚙み砕いて伝えれば、きっぱりと不良達にオウガはそう言った。


 うん、そんな事だろうと思ったよ。

 でもね……それで納得するような人達じゃないと思うんだよね……。


「ってめ、舐めてんのか! ちょずいてんじゃねーぞコラ!」

「……メイコ、何て言っているんだこいつらは。さっきから翻訳できない。なまりが強いのか、それともオレの知らない新しい言語なのか?」

 殴りかかってきた男の手を軽くひねりあげ、オウガが私に尋ねてくる。


 嫌みというわけでもなく、オウガは本気で首を傾げていた。

 不良達が口々に汚い言葉でオウガを挑発するのだけれど、その独特のイントネーションが外国人であるオウガには難解なようだ。

 バカにしてると不良達はヒートアップしていて、今にもこの場で乱闘が始まりそうな雰囲気だった。


「お、おお……落ち着いてください、皆さん! 彼外国人なので、日本語難しいのわからないんです。決してバカにしてるわけじゃないんです!」

 声を張り上げて私が言えば、不良達も一応は怒りを収めてくれたようでほっとする。


「じゃあお前が通訳しろ。今から近くの河原にこいってな。因縁の決着をつけようぜ。殴り合って、どちらが強いか決めるんだ」

「オウガと河原で、拳で語り合いたいと申しております」

 不良のリーダーっぽい人の言葉を柔らかくして、オウガに伝える。

 外国人だと聞いたからか、わりとリーダーは丁寧に話してくれたので、普通に伝わってるはずだけれど、一応通訳はしておく。


「そんな暇はない。期末テスト前だ」

 優等生の答えをオウガが返す。

 不良達はくだらねぇと笑っていたが、オウガは相手にする気もなさそうだった。

 こういう手合いは、相手にされないと怒るもので……案の定、苛々としはじめていた。


「ひゃっ!」

 不良の一人が、不意に私の手を引いてきた。

 腰に腕を回されて声を上げれば、オウガが顔を上げた。


「この女はあずかる。河原までこいよ。そしたら、返してや……」

 男が最後までいう前に、オウガが私の腕を掴んで男を引き剥がし、その横っ腹に蹴りを入れる。軽々と男は吹き飛ばされ、その体に当たった机や椅子が大きな音を立てた。


「面倒だな。こういうのは、嫌いなんだが……試験勉強がいつまで経ってもできないしな」

 私を背に庇いながら、ギロリとオウガが不良達を睨む。

 先ほどまで大きな態度だった彼らが、それだけで息をのんだのがわかった。


「お、オウガ! 行っちゃダメだから!」

 ぐっとシャツを掴めば、オウガは平気だと答える。

 そのままオウガは、不良達に連れていかれてしまった。


 オウガが危ない。

 いても立ってもいられなくて、靴を履いて玄関へと向かう。

 河原までは結構遠い。

 不良達はバイクで来ていたみたいだけど、私はバイクなんて持っていなかった。


「乗って、百瀬さん!」

 困っていたら、クラスメイトの柳くんが自転車でやってきた。

 先ほどのやりとりを、柳くんも見ていたらしい。

 自転車に乗って河原まで行けば、すでに勝負はついた後だった。


「オウガ、大丈夫だったの!?」

「平気だ。こいつら、数だけでたいしたことなかった」

 けろっとした顔をしているオウガには、傷もなくほっと安心する。

 伸びている不良達をその場に残して、すぐにその場を立ち去った。


 ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆


 他校の生徒と喧嘩したことが高校にバレてしまい、オウガは三日間の謹慎処分を受けてしまった。

 オウガのマンションへ行けば、相当不満そうだった。

「大体、相手に怪我を負わせたといっても……かなり手加減して、治癒もかけたからかすり傷程度のはずなのに、大げさな」

 納得いかないといった様子のオウガは、私が作ったプリンを美味しそうにほおばっていた。


「でもオウガが自分から喧嘩に参加したかったわけじゃないって、わかってもらえたからよかったよ。柳くんとか、他のクラスメイト達もオウガを庇ってくれたみたいだし」

 それでも三日間謹慎処分というのが、少し理不尽ではあるけれど。

 こういう騒動を起こすと退学という可能性もあったから、ほっとする。


「もしかしたら、オウガと一緒に二年生になれないかもって心配したんだよ?」

「そうか。でもな、メイコ。そういう心配は……メイコのほうがするべきじゃないか? この数学の計算、たぶん全部間違ってる」


 私特製のプリンを食べながら、現在は数学の勉強中だ。

 本日習った分をノートにまとめて、オウガに渡しにきたのだけれど……指摘された部分を計算しなおせば、オウガの言うとおり不正解だった。


「一学期さぼりがちだったのと、成績が悪いのとで……一緒に進級できるか心配なんだが」

「うっ……」

 オウガに心配されてしまった。

 なんだか悔しい。


「大丈夫! いざとなったら、サキにヤマ張ってもらうから! サキって勘がいいから、かなりそれで点数稼げるしね!」

「そういうことやってるから、応用が利かないんだ。ほら、数学なら教えられるからやるぞ」

 ぐっと拳をにぎれば、オウガが溜息を吐く。


 オウガは努力して勉強しているタイプだからか、教えるのが上手くて。

 どうにか今回は赤点を取らずに済んだのだった。

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本作のその後の話、「本編前に殺されている乙女ゲームの悪役に転生しました」もよければどうぞ。
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