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彼女が『乙女ゲームの悪役』になる前に+オウガIFルート  作者: 空乃智春
【彼女が『乙女ゲーム』の悪役になる前に/高校編】
16/43

16.高校にはボスがいるそうです1

話が続いてるので、夕方にも投稿します

「ねぇ、オウガ……寒くないの? 雪降ってるよ?」

 季節は二月。

 この寒すぎる中、登校してくるオウガはコートすら着てなかった。


「これくらいなら平気だ。人間は寒がりだな」

 朝、偶然に登校時間が被ったのだけれど、横を歩くオウガが薄着すぎて、こっちまで寒くなってくる。

 強がっている様子ではなく、本当に寒くないらしい。

 その大きな手に触れてみれば温かく、嘘をついているわけでもなさそうだった。


「それでも、その格好は寒いから。風邪ひかないなんて油断してたらダメ! このマフラーあげるから、冬はちゃんと巻くように。あと、次の休日はコート買いにいくからね!」

 少し背伸びして、オウガの首に赤いマフラーを巻いてやる。

 これで少しはマシになった。


「このマフラー……もらっていいのか?」

「私の編んだ使い古しの奴で悪いけど、使って。もう一つ家にあるしね。別に男が使っても問題ないデザインだし。寒くなくても、冬は毎日首に巻くこと!」

 びしっと指を立てて言えば、オウガはわかったと頷いた。

 


 ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆


「あの……オウガくん、校門のところで他校の人達が呼んでるんだけど」

 その日の放課後。

 怯えた様子の男の子が教室にやってきた。


「他校に知り合いなんていない」

「そ、そう言わないでよ! 連れていかなきゃ、俺達が痛い目に遭わされるんだ!」

 男の子が涙目で訴えてくる。


「知るか」

 オウガは興味なさそうにそんなことを言い放つ。

 仕方ないので私が代わりに窓のほうへ行って、校門の方を見れば……確かに他校の制服を着た男達がいた。


 着崩したその制服は、近くの不良が多いと有名な某高校のもの。

 人数は十名くらい。

 手にはバットやらパイプやらを持っている。


「オウガ……どこかで喧嘩売ってきたの?」

 机の前に立って問いただしたのに、オウガはノートから顔をあげることすらしない。

「そんなことしてない。そんなことより期末テスト前だから勉強がしたい」


 真面目か。

 全くオウガときたら、この非常事態に冷静すぎる。


 授業中に聞いたことを、先生から借りた録音機器で録音しつつ、ノートによくわからない文字で書き綴っていた。

 たぶんオウガの国の文字なんだろう。


「んにゃろ、どうしてきやがらねぇんだよ、ああん?」

 金髪に脱色した髪の、制服を着崩した……いかにも不良という感じの男が、いつの間にか教室へ来ていた。

 その後ろから、ぞくぞくと不良達がやってきて、私やオウガの周りを取り囲む。


「見つけたぞ、てめーがオウガって野郎だな? ああん?」

 ガッとオウガの机の脚を蹴り上げて、男が言う。

 オウガはそこでようやくノートから顔を上げた。


「……何か用か」

 仕方ないから聞いてやるといった態度。

 オウガときたら、相手を煽るつもりなのか。

 はらはらしていたら、男のうちの一人がオウガの胸ぐらを掴んだ。


「てめーがこの高校の新しいボスだってことくらい、調査ずみなんだよ。いいからさっさとこいやぁ! 弱虫が!」

 どうやら不良達は、オウガがこの高校を牛耳っていると思っているらしい。

 完全な誤解だ……と思った私だけれど。

 一つ頭に思い浮かぶことがあった。


 オウガは顔が怖い。

 それでいて、よく不良に絡まれていた。

 高校に入学した当初、私が目を離した隙に上級生に屋上へと連れ出され、そして逆に不良どもを返り討ちにしたことがあったのだ。


 彼らは、この学校を仕切っている不良だったらしい。

 それ以来、オウガは皆から怖がられるようになってしまっていたのだけれど……どうやらその噂が他校まで伝わってしまったようだった。

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本作のその後の話、「本編前に殺されている乙女ゲームの悪役に転生しました」もよければどうぞ。
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