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彼女が『乙女ゲームの悪役』になる前に+オウガIFルート  作者: 空乃智春
【彼女が『乙女ゲーム』の悪役になる前に/高校編】
13/43

13.闇の使い手

 家の前まで来る頃には雨は止んでいた。

 門の前に誰かがいて、よく見ればそれは六歳年下の弟・林太郎だった。

 九歳の林太郎なのだけれど、発育がよくて背が高く、一見中学生くらいにも見えなくはない。


「ようやく帰ったか、我が姉よ」

「ただいま、林太郎。どうして外で待ってたの?」 

「空の慟哭どうこくが止んだからな。黒き稲妻ブラックサンダーを手に入れるため、緑の森へ向かうところだったのだ」

 もったいぶった言い方で、林太郎が口にする。


「雨が止んだから、ミドリモリスーパーで駄菓子を買いに行くつもりだったわけね」 

 翻訳した私に、そのとおりだと林太郎が頷く。

 林太郎は最近、妙なアニメにはまっていた。


 中高生に大人気のアニメで、難解な言葉や設定がたくさんちりばめられたヤツだ。

 それの影響を、林太郎はもろに受けていた。


「今日は異世界から迷い込みし、闇の使い手を家に招いたのか。ふむ、歓迎しよう」

「ただの外国人のクラスメイトだからね? ほんと、変なこと言わないの。ただ送ってくれただけだから」

 林太郎はオウガに対して、興味津々といった感じだった。


 私はオウガのことを、林太郎に色々と話していた。

 異国からきた外国人だということ。

 常識をあまり知らなくて、魔法がどうのとかよく言うこと。

 それが、どうやら林太郎の琴線に触れたらしい。

 林太郎はオウガが別の世界から来た魔法使いだと、そんなことを言いだしていた。


「ごめんね、オウガ。うちの弟が……」

「……なぜ、オレが闇属性の魔法を使えるとわかったんだ」

 林太郎のことを謝ろうとすれば、オウガが眉間に皺を寄せてそんなことを言う。


「そんなの簡単なことだろう。俺もまた、魔法使いだからだ」

「この世界に……魔法はなかったんじゃないのか?」

 くくっと格好を付けて笑う林太郎に、オウガが驚きの声を上げる。

 意外にもオウガはノリがいい。


「存在しないことになっているだけだ。魔力の元が大気中にあることくらい、お前にもわかるだろう。ただ、この世界の者達が魔力回路を持たず、操る手段を持たないだけだ」

「お前は……何者なんだ」

 アニメキャラのセリフを吐く林太郎に対して、オウガの演技は真に迫っている。

 林太郎はとても生き生きとしていて、その目は輝いていた。

 

「我の真の名は燐世りんぜ。異世界・地獄ゲヘナよりやってきた闇の使者だ。林太郎という少年の体を借り、この世界に顕現している」

 ふっと笑みを浮かべ、林太郎が芝居がかった動作で家の門を開ける。


「我が屋敷へ入るがいい。お互いに、聞きたいことがやまほどあるだろう?」

「……わかった」

 林太郎の招きに応じて、オウガが頷く。

 やったというように、林太郎の鼻の頭が膨らんだ。


「オウガ、別に林太郎に付き合わなくてもいいんだよ?」

「口出ししないでもらおうか。この世界の者には、理解のできないことだ……って、痛い痛いよ姉ちゃん!」

 オウガに言えば、林太郎が生意気なことを言ってきたので、こめかみをぐりぐりと拳で押してやる。


「お邪魔するぞ」

 考え込むような顔を見せながら、オウガが玄関で靴を脱ぐ。

 そして、そのまま林太郎の部屋へと入っていってしまった。

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本作のその後の話、「本編前に殺されている乙女ゲームの悪役に転生しました」もよければどうぞ。
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