表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼女が『乙女ゲームの悪役』になる前に+オウガIFルート  作者: 空乃智春
【彼女が『乙女ゲーム』の悪役になる前に/高校編】
10/43

10.はじめての友達

「オウガが携帯電話をほしがるなんて、意外だね」

 あれから数日。

 私はオウガに付き合って、学校が終わった後、携帯ショップに足を運んでいた。


「いや……柳のやつが、高校生なら必須のアイテムだというからな」

 オウガは、柳くんと少しずつ喋るようになってきた。

 何かと話しかけてくる柳くんを、オウガが無視できなくなってきたというほうが正しい。


「ふふっ」

「なんで笑ってる。気色悪いぞ?」

 思わず笑った私に、オウガが変な顔をする。


「失礼な。オウガにも私の他に友達ができたんだなって、嬉しくなっただけだよ」

「友達……ね」

 私の言葉を反芻するように、オウガが口にする。

「前から思ってたんだけど、もしかしてオウガって……友達と昔何かあったりしたの?」

 踏み込むのはよくないかな。

 そう思いながらも、気になって尋ねる。


「いや、そもそも……友達がいなかったからな。あまり学校に行くこともなかったし、体調がよい日には弟と一緒に行くこともあったんだが……ろくなことがなかった」

 トラウマに触っちゃったかなと思ったけれど、案外あっさりとオウガは口にした。


「オウガ、病弱だったの?」

「まぁ、そんなところだ。それにこの外見もあって、皆オレに近づかなかったからな」

 淡々口にするオウガは、仕方ないことだと思っているみたいだった。


「私のほうは番号登録したよ。オウガはできた?」

「あぁ、できた」

 尋ねれば、オウガが達成感に溢れる声を出した。


「メイコがオレの友達、第一号だな」

 友達のグループに登録した私のアドレスを見ながら、オウガは目を細めていた。

 その嬉しそうな表情に、こっちが照れてしまう。


「この年になって友達ができるなんて、思ってもみなかったな。家族以外とすごして、楽しいと感じたのは初めてだ」

 しみじみとした様子で言いながら、宝物のように優しく携帯の画面を閉じて、オウガはポケットにしまう。

「今、毎日が結構楽しいんだ。生きるのをやめなくてよかったって、心から思う。これもメイコのおかげだ」

 お礼を言って、オウガは私の頭を撫でた。


 生きるのをやめなくてよかったってことは……オウガには、死のうとしていたときがあったんだろうか。

 それを思えば、心の奥がひやりとした気がした。



 ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆

 

「オウガ、遊びに行こう!」

「行きたいところがあるのか?」

 休日の朝、オウガの部屋にくるなりそう宣言すれば、眠たげな様子で尋ねられる。


 昨日、オウガは私を友達だと言ってくれた。

 なら、友達らしく遊びにいくのもいいんじゃないか……なんて思ったのだ。


 その日はオウガを連れて、遊園地へ出かけた。

 久しぶりすぎてはしゃいでしまって……帰るころになって、私ばかりが楽しんでしまったんじゃないかと反省する。


「オウガ、ちゃんと楽しめた?」

「あぁ」

 帰りの電車の中で尋ねれば、オウガが頷く。

 それならいいんだけどと、もやもやした気分になる。


「なんでそんな顔をしてる? メイコは楽しめなかったのか?」

「いや、そうじゃなくて……オウガに楽しんでもらおうと思ったのに、連れ回して疲れさせただけなんじゃないかなって思って」

 あれ乗ろうよとか、これもやりたいとか。

 オウガがメイコに任せたとかいうものだから、つい好き勝手に動いて……しかも一方的に楽しかった感想を語っていた。


 反省していたら、オウガが頭を撫でてくる。

「ちょ、オウガ!?」

「楽しかった。とてもな」

 そう言ったその顔が……とても優しげで、嬉しそうで。

 つい、目を奪われた。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
本作のその後の話、「本編前に殺されている乙女ゲームの悪役に転生しました」もよければどうぞ。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ