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7話「魔王様が世界の話をお聞きになっています」

本当はここも6話でした……。つながりが悪くて申し訳ないです。早くヒロインのうちの一人を出したいです。

 イケメン魔族、フラゾエルが話し始める。


 俺は自分の年齢が517歳だってことに驚きを禁じ得なかった。日本なら戦国時代から生きてることになってしまう。


「当時の私は完全に思い上がっておりました。次期魔王は私だと息巻いて、人間と必要以上の戦闘に明け暮れ、遂に貴方と対峙することになった……。カナタ様は私に初めて負けというものを教えてくださったのです。貴方様がいなければ、今の私はいないでしょう」


 ……。


 おう。そうか。


 フラゾエルの俺を見る目が熱い。若干夢を見ている表情だ。


 これもしかしたらあかんタイプのヤツかもしれん。気付いたら四つん這いデジタルモンスターの吐息が聞こえてきそうなのでほどほどにしてくれると嬉しいね。


「私は現在アレファロ経済特区の最高責任者を努めております。立場としてはそちらにいるマゴッツ翁よりも上の立ち位置ということになるでしょうか。レガンシスの中にあって治外法権を得る地域は我々の地域だけになります。領土は一般的な人間の国とほぼ同じ大きさですね。人間との国交の中心地となります」


 さっきからちょくちょく出てきているレガンシスってのは魔界のことでいいのかな?

 ってことはこいつは魔界、つまりレガンシスの外務大臣ってことか。変わった権力を持っているようだ。


 それに人間と共存出来ているってワードに興味がわく。


「アレファロっていう場所はなんで国じゃないんだ?」


「レスクですからね。スキューマに守られなくとも独立した地域であり、また人間との交易も行われ、種族の交流やハーフとも言われる存在も非常に多くおります。この体勢になってから早200年経っておりますので、アレファロには純粋な人間や、人間と魔族のハーフなども多く暮らしています。まあ龍族の主でおられるマゴッツ翁のルルゴニア・スキューマは元々排他的であり、龍族以外あまり寄りつかぬ領地ではありますが、以前より格段に広がっていることは間違いありません。それを実現させたのがカナタ様なのですよ」


 おい……俺スゴイ人物じゃん……。


 でも今の俺はそんなこと露ほども知らないし、ヘタすると逃げ出したくなるような高校生なんだよ?


「えーと、レスクとスキューマってなんだ?」


 するとチュートリアル爺さんが現れた。マゴッツだ。


「そこからはワシが説明しますじゃ。背後に世界全図がございますから魔王様のお好きなお茶でもお召し上がりになりながら話しましょう。フラゾエル殿も如何ですかの? 東方の蒸留酒、アレファロから取り寄せた物で申し訳ないのじゃが」


「おお、翁、それは粋な計らいですね」


 マゴッツが手を叩くとたくさんの魔族が姿を現わす。人型が多いが、特に目を引くモンスターな奴らが何人もいた。


 手足のみ触手のメイドさんがテーブルと椅子を悠々と王の間に運び込み、ゴツゴツした岩肌の巨体シェフがティーパーティを用意する。あれはゴーレムだな。すっげぇ。マジで5メートルくらいあるぞアイツ。

 そんなヤツがもの凄く器用に料理を用意していく。チョビヒゲの執事がいつの間にか登場し、料理を手早く見事に並べていった。


 あっという間に軽食を楽しめる空間ができあがる。スゴイな魔王城。

 あちらこちらに積まれたマカロンやらビスケット、そして紅茶や見た事の無い菓子などがズラリと並ぶ。というより、日本で見たことのある食べ物が多いぞ。あ、ナポリタンが口直しに置いてある。なんて……なんて細かい心遣いなんだ。


「驚かれましたかの?」


 マゴッツがしたり顔で湯気のたっていないカップを手にする。


「確かに驚いた」


「フフフ、そうでしょうそうでしょう。元々魔王様の故郷と食文化が近いということもありましたが、魔王様の食べたいものを実現させたものがこれらになります。もう500年も前の話ですがな」


 あ、そこは501年前じゃないのね。1年で何があったんだろ。


「昔話はスマン。今の俺にはわからないから、あ、これ食っていいか?」


 ふっとマゴッツの目元が和らぐ。

 少し寂しさが垣間見えたような気がしたが、俺はすぐに目の前の煌びやかな食卓に目を奪われた。


「どうぞどうぞ。それは金食華のエナメルフライをはさんだマカロンにございます」


 うっ……金食……華? 響きがウルトラ物騒……。

 彩りはイエローでキレイなのだが、これはもしかしたら着色を必要とせずこうなったのかもしれない。

 そして真ん中に挟まれてるクリームがトロリとした金色だ。綺麗なもんだ。


 ちょっと逡巡をしたが、毒を食らわば皿まで。一気に食べて見せなければ彼らにも失礼だろうし、そうして見せることで信頼してもらえるだろう。毒が入ってても俺の体なら大丈夫だと言い聞かせる。


 そして口にマカロンを放り込み、噛みしめる。


 すると、一瞬で仄かな酸味とそれを打ち消さない程度の柔らかい甘みが口中を満たす。まるでシトロンのジュースをマカロンに封じ込めたようなジューシーな逸品になっている。


「なっ……なんだこれメチャクチャ旨いぞ!!」


 俺を見る二人の視線がどこか生暖かい。

 食い気に走り過ぎるのはちょっとアレかもしれない。


 コレ……湯気の立ち上る琥珀色の液体は紅茶だよな?


 そして紅茶を口に入れると、そこでも俺は驚いた。


 一瞬で広がる芳香。


 それはけしてマカロンの風味を損なう事無く甘みだけを洗い流していき、鼻に抜けた後のハーブの香りでキュッと後味を締めてくれる。その香りがまた……奥ゆかしい。

 マカロンの後味を紅茶で昇華するという絶妙のハーモニーだ。


 素人の俺にこんな感想を抱かせるくらいだからこの城にいる料理人はムチャクチャ腕の立つ職人に違いない。


「う……旨すぎる……。俺はこんなものを毎日食べていたのか……ぜ、贅沢すぎるぞ……」 


 すると、マゴッツはそれには首を横に振った。


「いえ、違いますぞ。カナタ様はこれを滅多にはお召し上がりにはなっておりません。一般的な魔界の食事を好んでいらっしゃいました」


 おお、そういう所はちゃんとしてた……と言っていいのか? よくわからんが。


「なるほど……。食糧不足とかじゃないよな? 経済特区があるとかいう話だから、文明の発展具合は地球と同じくらいと見てよさそうだし」


 俺がそう言うと、フラゾエルは感心したようにうんうんと頷いていた。


「はい。食糧事情はカナタ様治世後数年でおおよその解決をみました。マゴッツ翁、そろそろ地図を使っての説明に入りましょうか」


「相分かったフラゾエル殿」


 すると、マゴッツは口を付けたカップをテーブルに置き、小さな杖を手に持って地図の前に立った。


 ……爺さんはどうやって紅茶 を飲んだんだろう。あの幅広の口で。いいや。謎は謎のままにしておこう。


 地図の前にたったマゴッツは小さかった。

 今はもう、彼の印象は好々爺だ。多少腹黒いものはあるだろうが、恐い人だとは思えない。

 ほんの一時間前までビビっていたとは思えない馴染み方だった。


 やっぱり500年も付き合いがあるから、体がそれを覚えているんだろう。


 記憶ってふしーぎー。


「さて、魔王様、この地図をご覧下さい。あまりダラダラしてはおられないというのも現実です。いくら見た目上の統治が可能であっても、やはりそこは魔王様がいらっしゃらないことには進みませぬからな。例えばさきほどにも話に出ました経済特区の提唱をしたのは人間方の聖王国の方でした。現在の首長をリャード・システンヴァーラと呼びまして、実質人間界の王とも呼べる者です。そういった者との会談はやはりカナタ様にして頂くことになります」


 お、ちょっとだけマゴッツが真面目になってきたぞ。緊張感を持って情報を収集できそうだ。

 魔王だからこそ、自分の身は自分で守らなきゃいけないだろうし。


 ……本心言ってもいい?


 ……目立ちたくない。


 ……すっごい目立ちたくない。ワケのわからない実力者とかと戦いとかしたくない。どう考えてもさっきのフラゾエルは手加減してただろうし、きっともっと強いやつもたくさんいるんだろうな……。


 狙われる立場ってヤツですよ。


 一応の救いは人間と国交があるってことだな。あまりポジティブになるのはいけないが、 悪く考えなくても良さそうな気はする。


「構わない。色々と教えて欲しい。頼む」


 俺は二人に向けて頭を下げた。二人は笑うようなことはせず、それをしっかりと受け止めたようだった。


「拝命承りますカナタ様。三度の教育係を仰せつかります」


 爺さんが頼もしく見えるな。

 俺はメモを用意してもらって万全を期した。

チュートリアル長いでしょうか……。こんなもんでしょうか。もうしばらくおつきあい頂けると嬉しいです。

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