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6話「魔王様が来て501年経っております」

長生き。

 俺が魔王だっていうのはなんとなくわかった。

 今はその魔王という地位に+記憶喪失という超辛い現実が突きつけられている所なのだが、俺の側近っぽい爺さんはどうやら記憶喪失の俺に嫁をくっつけようとしているらしい。


 しかも記憶喪失だからこそ嫁をくっつけるチャンスとか言って憚らない。


 酷いドラゴンもいたものだ。


 俺は絶対イヤだ!!


 見たこともない女の子と結婚なんてイヤなんだからなー!!


 理由があるぞ。


 俺は魔王。ってことは相手は魔族で確定だ。


 したらホラ……わかるよな? 年齢的な問題だよ!


 魔族=長命。


 そしたらさああああああああああああ!!


 ナチュラルな年増しかいないって決まってるじゃないかよおおおおおおおおお!!


 齢500を越える美しい女魔族なんてイヤだー!!


 ……。


 ……


 ……いや、悪くないな。悪くない!


 話を戻す。現実的なことを言うと、魔王なら確かに結婚は大事だろう。何と言っても王だ。

 雰囲気を見ると世襲制……っぽい気もする。これだけ結婚を勧めてくるってのはそういうことだろう。


 しかしまいったよ。


 この世界に来てたった20分程度で俺の人生はそこまで進むとは思いもしなかった。

 如何に魔王になってこのかたの記憶を失ってしまっているとはいえ、ちょい前まで学生だった身には幾分激動すぎると思わないだろうか。


 俺は自分が半壊させた王の間で二人の有力者を前にしていた。


 聞き間違いではないだろうが、一応確認しておこう。爺さんがボケている可能性も否めない。まあ100%ボケてないだろうが。


「結婚……ってあの結婚?」


「そうですじゃ、魔王様。元々ワシもその話をするために参じてきておる次第にございます。その話の途中に魔王様がいきなり今の状態におなりになったという次第でして」


 もしかして……結婚したくなさすぎるが故に自分で記憶を閉ざしたとかそういう……そういうはた迷惑なアレじゃないだろうな?


 自分だからこそ疑わしい……。


 素でいきなり凄い敵とワケのわからない戦闘をして、今腕は絶賛動かない中とはいえ、何の記憶もない俺が戦えたというデタラメな性能の体である。

 しかも時間なんて止めちゃったりして。

 そんなん……そんなん記憶消すくらい簡単そうやないですか……ううっ。


 自分自身が一番疑わしいとはね。


 すると、先ほどまで俺を殺して魔王になるとかほざいていたフラゾエルがマゴッツ王の話を引き継いで俺に話しかけてくる。ホントこいつイケメンだな。

 こんなすごいイケメン、見たことがない。イケメンに睨まれると恐いから近づかないで欲しい。


「カナタ様がお世継ぎを得られるのであれば、臣下としてはこれ以上ない喜びです。これで私もそろそろ魔王の座を諦めることができようというもの」


 ふむ。フラゾエルの表情からはちょっと感情が読めないな。あれほど魔王の座に執着しているような態度を見せておきながらあっさりと引くのか。


 そこで俺は疑問の解消に加えて要求をしてみた。


「そういえば二人とも、どういう役職にいるのか教えてくれないか? あと、腕を治してもらいたいんだが」


 マゴッツはにこりと笑う。優しいお爺ちゃんの笑みだ。全てを包んでくれそう。


 ……ウソだ。牙が恐い。


「痺れのようなものにございます、魔王様。そろそろ動かせるようになっているのでは? のう、フラゾエル殿」


 フラゾエルは深く首肯する。


「ええ。そうでしょう」


 ちょっと気になる間があったが……。

 まあ、いい。確かに腕は徐々に感覚が戻ってきている。

 足が痺れすぎるとこんな無感覚になるよな。


「さて、某についてですが、某はマゴッツ・エルテンヒル ・ルルゴニアと申します公爵にございます。魔王様。記憶を失っても尚その魔法力、むしろ私は安心しておりますぞ。サポートはこちらでさせていただきますから、どうぞいつものようにふんぞり返っておいでになってください。役職はレガンシス王国の宰相にございまして、自らの領地、ルルゴニア・スキューマを有しておりまする」


 俺はふんぞり返っていたのか。嫌なヤツだな。

 それにしても領地に自分の名前が入っているんだな。


「マゴッツ王という名前じゃなくて、貴方は単純に長生きしているんだな。マゴッツ翁っていうのは本当にお爺ちゃんって意味か」


 貴方、という言葉にくすぐったそうに笑うマゴッツ。龍の爺さんに萌える日が来るとはな。


「仰せの通りにございます。ワシは齢3500。この中で……というよりレガンシスの中で一番の年寄りということになりますかの。ホッホ」


 さ、3500歳……?

 規模が違いすぎる。


「国の名前に貴方の名前が入っているようだが、そういう習わしなのか?」


「ええ。そうでございます。ただ、それをお決めになったは今代の魔王様、つまりカナタ様にございますがな」


 何か深い話がありそうだ。


「ふぅん。そうなのか。じゃあ、次、フラゾエル。さっき天使と言ったことについては謝るよ。悪かった」


 素直に謝意を表わすとフラゾエルは俺の前に跪いた。真面目腐った顔をしているな。

 ……案外、こちらが素のフラゾエルなのかもしれない。


「勿体ないお言葉です。申し訳ありませんが、さきほどは試させていただいたのです。カナタ様が幻魔をお使いになられる時は緊急時以外になく、その中でも可能性の高いと仰っていたのが記憶喪失後の無知による力の行使という話でした」


 すごいやり取りをしてる気がする……。


「幻魔……っつーのがあの時間を止めた魔法なのか?」


「正確には時幻魔法類の幻魔です。私は時鍵というカナタ様の幻魔に対するマスターキーを持っておりますので、火急の時は私も静止した時間に入る権利を持つということになります」


 そういってフラゾエルは胸元からペンダントを見せる。何の変哲もない黒い金属でできたペンダントトップだ。それが時鍵なのだろう。


 かなり重要なモノを渡しているな。

 記憶を失う前の俺はめちゃめちゃフラゾエルのこと信用してるじゃないか。


 俺が思索に耽りながらフラゾエルを見ていると、ヤツが俺を少年でも見るかのように笑った。まあ、実際今の俺の精神は少年なんだけどな。


「胡乱な目でご覧にならないでいただけるでしょうか。まあ、501年前はお互いにライバルであったと自負はしておりました。ちなみに天使と言われても、今の私は何の痛痒も感じません」


 んっ? 何か今果てしなく長い時間が耳を通り過ぎたんだが。


 ふえっ!?


 ちょ、なに? 501年前って何の話?


「501年……!?」


 ハーフサウザンドだ。するとフラゾエルは遠い目をして昔を懐かしむように話し始めた。


 俺……517歳ってこと……? ナチュラル年増……ブーメラン……。

しばらくチュートリアルです。


ポイント、ブクマありがとうございます!

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