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5話「魔王様、嫁探し中なのですぞ」

どうにかして魔王を結婚させたいおじいちゃんがそろそろ躍動し始めます。


彼はまだ準備運動中です。

「ま、魔王様!? それにフラゾエル殿? 魔王様、その両腕は如何なされた!」


 止まった時が再び動き出すと、俺のレーザー砲を防ごうとしていた龍の爺さんが俺の両腕を見てそう言った。ハトマメな顔をして走り寄ってくる。


「動かない。アイツのせい」


「なっ、なんですと!?」


 そして俺は倒れる天使男を指さした。爺さんは慌ててそちらに駆け寄る。


 俺は周囲を見回した。


 時間が動き出してる……。どういうことなんだろう?


 時間の魔法が腕に関係しているとは思えないけど……、霊素を放出して、一時的にどこかを痛めた結果、魔法が解除されたのかもしれない。

 そうなると、時間の魔法のコアは俺の中にあるってことになるのかな?


 あーもー、全然わかんない。


 すると、龍の爺さんが倒れた天使男を助け起こそうとしている所が目に入った。天使男は何食わぬ顔でにょっきりと起きる。


 お前……本当にタフだな。 っていうかアイツフラゾエルって言うのか。

 天使みたいな名前で天使って言われてキレんなよなお前……。


「ああ、失礼したマゴッツ翁。カナタ様が時幻魔法を使われたのでな、緊急事態ということでアレファロからここまで飛んできた次第だ」


「ああ、フラゾエル殿には時鍵がありますからな」


 へー。フラゾエルってヤツは俺が力を使ったのを感知したと同時に瞬間移動をしてきたってことになるよな?

 感情を出すと弱そうだけど、冷静な今の方が全然スゴイヤツに見える。風船だけど。


 そしてこの龍の爺さんはマゴッツ王っていうのか。

 孫がたくさんいそうな王様なのか。


 え? 王様なの?


「というよりカナタ様! 何故私に魔法を放とうとされたのですか」


 爺さんは続けて俺に困り果てた体で言い放つ。

 それに対する俺の答えはシンプルだ。


「それを何とかしようとしたら、時間が止まってしまって……で、フラ……ゾエル? がやってきたわけだ」


 なんか名前を噛んでるようでスマンな。言い慣れないんだよ。


 それを聞くと、二人は顔色を変えた。


 天使のような男がマゴッツ王に顔を向ける。二人でいつの間にか俺をのけ者にして会話を始めてしまった。

 こちらには聞こえないな。

 と言いたいが、聴覚も鋭敏になっているため、どうやって話した所で俺にはその言葉が筒抜けである。意識をちょいと向けるだけで声が聞こえるのだからこの体の性能の高さが恐い。

 魔王で良かった……いや、良くないよ。


「マゴッツ翁、とんでもないことが起こりましたね」


「……その通りのようじゃ、フラゾエル殿……。これは……」


「なんというか……」


「チャンスですじゃ!」


「チャンスですね!!」


 とっても不穏な言葉が聞こえるんだけど。チャンス? 二人とも魔王の座を狙ってたりするの?

 っていうか大負けしたのにフラゾエルの方は堪えてなさすぎじゃない?

 ダメージないの? 体力無限なの?


 するとマゴッツ王はにっこりと笑って俺に語りかけた。

 知ってる、コレ。黒い笑み。


「カナタ様、記憶喪失にあらせられますな?」


 ……お、おい。ちょっと待てよ……。どうしてそれに気付いてしまったんだ。

 俺はまだ魔王であるという事実に腰を抜かして部屋を半壊させ、無自覚に魔法をぶっ放し、挙げ句の果てに時を止めてフラゾエルと戦闘になっただけじゃないか!


 ……思ったよりヘビーにやらかしているね。


 クールに徹そうとしていた俺だが、動揺が少し顔に出てしまったらしい。


「やはりやはり、そうでしょう。まあカナタ様にはよくあることです。これで何度目でしたかなフラゾエル殿」


 ん? 大分聞き捨てならないセリフだよそれ。

 俺過去にも記憶失ってんの?

 ってか貴方達はどんだけナチュラルにそれを受け入れてるんすか……。


「マゴッツ翁。これで二度目になります。そう数は多くありませんが、まあ、ウィーグラントに最初に来た頃の記憶喪失も含めますと三度目ということになるのでしょうか。まあ我々の知る限り実害が出たのは前回だけでしょう。この度は……魔界にとって利益にしかならないものと思われます。全く素の状態でも私の魔術をありえない方法で切り抜けられましたし」


「なんと! 流石魔王様」


 記憶喪失が初めてでないのであれば二人には対処方法もありそうだ。


「さて、魔王様 。ではなるべく早く済ませなければなりますまい」


 マゴッツ王がしたり顔で俺に話しかける。先ほどまでのマッチョ龍はどこかに消え、どこから出したのだろうかまた赤いローブを着て好々爺然とした表情で俺に語りかけてきた。


 どっからどうみても詐欺師のソレでしかないな……。だが今の俺が欲しいのは情報だ。こちらの事情が相手に筒抜けな以上、隠し通す何かを持つわけでもない。ここは素直にいこう。


「何を済ませるんだ?」


 すると二人はかなーり業の深い顔をして笑った。

 黒い笑みパート2だ。隠さない所がストレートに黒い。


「結婚の儀にございます! 我が魔王にあらせられるカナタ様は現在絶賛嫁探し中なのです!」


 は?


 はああああああああ!?


「け、結婚!? いやいやちょっと待てよ! 記憶喪失のヤツにすることか? それが」


「記憶喪失じゃないと結婚しないではないですか、カナタ様」


「ええー、言ってることの意味が全然露ほどもわからないんですけど……」


「よかったですじゃ……。これでルルゴニア・スキューマの我が妻に魔王様が草食であると伝える機会もなくなりそうです」


「言ってることは全然わからないけど、勝手に妄想してることはわかる。急に結婚とか言われても困るぞ!」


 かなり滑稽だが、俺は切迫した何かを感じざるを得ない……。

 結婚? そんなことより先に俺は記憶をどうにかしたいよ!

記憶喪失の少年は嫁候補にどんな反応するんでしょうね?

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