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17話「魔王様、すごいことになってますな」

 ウルフブラスがまず目を剥いた。

 次いでカナタも目を剥いた。


 彼らの視線の先にいたのは、年の端もいかない少女……よりももっと、かなり、とても小さな幼児だった。


 髪の色は黄色にきわめて近い金色で、ふわっとカールしており、目はつぶらでくりっとしている。お腹はまだぽっこりと出ていて、赤ちゃんと幼児の中間辺りの子供に見えた。非常に愛らしい姿だ。


 もちろん健康的な全裸である。


・・・・・・・・・・・

 

 ……おい、なんだアレ。

 今受肉完了とか言ってたよな。


 めちゃめちゃ可愛いなあのちびっ子!!


 アレ=幼児はというと、小さな体を可愛らしくよじって、ふああ、とあくびをしながら俺に向かってきた。てとてとと歩く姿はそれだけで庇護欲をそそられる。仕草を見ると見た目より心は年上に見えるが……


「こんにちわなの! パパ♪」


「パパ?」


「ぱぁぱ♪」


 ……何を言ってるんだ、コイツ……。

 でも、あかん……。

 顔がニヤけてくる……。


 パパって言われて俺、喜んじゃってる……?


「あいたかったよ、ぱぱ。ちゅ、してあげるね」


 なんだと!? こんないたいけな子にちゅーなんてされたらもう……


 頬ずりして、英才教育を施したくなってしまう!

 ……落ち着け。頬ずりから英才教育は飛びすぎだ。


・・・・・・・・・・・


 事情を知らない人たちが見れば何と子供らしい可愛い笑顔と可愛らしいやりとり、と思ったかもしれない。


 しかし、ウルフブラスは彼女がカナタに向けた視線の中にいた、というだけで全身に今まで感じたことのない恐怖を味わっていた。


「アレはなんだ……? 邪神……だと? あれが?」


 ブラガも幼児から発する激しい力の波長に怯え、逃げることや動くことさえままならなくなっていた。


 世界は静かだった。

 先ほどまでの剣戟もなく、誰かが傷つくこともない。


 カナタはただ邪神を呼び出しただけだ。

 そして邪神が何をしたわけでもないのに、戦況は激変していた。


・・・・・・・・・・


 ちびっ子が俺のほっぺにちゅーをしようとしたところで動きを止める。


「あれ?」


「ままはどこなの?」


 と言ってちびっ子が辺りを見回しだした。


「ん? ママ? そういえばお前、どこの子なんだ? 俺も邪神を呼び出したはずなんだが……」


「わたしは……ぱぱとままのこだよ……?」


「は?」


「ままのおなまえはね、りざりすっていうんだよ? ぱぱはかなたなの」


 んん?


 ん?


 おう、どういうことだよ。ちょっと誰か説明カモン!


”うぃーーー。お疲れ。とりあえず邪神召還成功オメデトウ”


 う、またあの声が……便利だな。


”知らんうちに体もスッキリ回復してるだろ”


 あ!


 確かに。


 俺の体はダメージがどこにあったのかもわからないくらいにピンピンになっていた。


 ところでさ、肝心要の邪神はどこにいるのよ?


”どこって、目の前にだろ?”


 目の前には幼児しかいないんだが。


”そいつだよ、そいつ。そーいーつー!”


 ファッ!?


”おめでとう、君は今日からお父さんになった!”


 いや、ちょっと待てよ。

 

 進化か? 進化しちゃったのか!?


 なににだよ!


 常識的に考えておかしいだろ!


”召還の副作用だ。あとお前な、自分に常識が適用されるとでも思ってるのか?”


 そういう副作用は今まで一度も聞いたことがない。

 常識に関しては認めざるを得ないがな。


「ねえねえぱーぱ。ぱぁぱ!」


 ちびっ子が俺の体を揺らす。ガクガク揺らす。半端ない力だな幼児!


「あぁあ、ああ! 揺らすな。わかった。ままだな。ママを探せばいいんだろ? えーとリザリスはさっきあっちに吹っ飛んだから」


 言ってて自分でも申し訳なくなってきた。

 ウルフブラスの攻撃を封じないといけなかったとはいえ、リザリス本人を助けに行かなかったからだ。

 そこはまあ、無事を信じて攻撃の元を絶ちに行ったわけだが。


「はやくいこうよお!」


 そして、ちびっ子に催促されて動こうとしている自分が思いの外ハマってる気がするのがなんか怖い。ホント超可愛いなこの生物。


「わかったよ、行こうな」


 俺はちびっ子の手を握って、ゆっくりとリザリスのいるであろう方向に進んでいく。

 でもま、俺が動けばまだ元気なヤツがとおせんぼするよな。


 ウルフブラス。子連れの前に出てくるとか気が知れんぞお前。


「貴様、それはなんなのだ! そんなものが邪神であるハズがなかろう!」


”いや、ホラ平たく言えばな、神って付けばさ、それは邪神とでもなんとでも言えるじゃん”


 おい、お前唐突に俺の思考の中に出てくるなよ。


”すまん、まあ確かに邪神って言い切るのは難しい存在だよな”


 すごく不安な言葉なんだけど……。


「貴様の命、我が命に代えても消さなければならなくなったぞ。この身を雷に変え、貴様を討つ!」


 くそっ、強敵が俺の前に立ちふさがった。

 と、目を閉じかけた瞬間に見えた極太の光の柱。


「えいっ!」


「ぐわああああああああああ!!」


 あれ? 戦いののろしは? 覚悟したんだけど。


 そんなものが上がる前にウルフブラスは吹き飛ばされて夜空の星にされてしまった。


「えぇえええええ!? おい、ちょ!?」


 見ればちびっ子がにんまりと笑っていた。

 ちびっ子の使った技は……


「これ、ぱぱのだよね! ばっちーん! てやつ!」


 デコピンレーザー……?

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