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16話「魔王様、喚んでしまわれる」

やっとここまで来ました。

 カナタが死の淵で己の内部の声と話している間、リザリスはウルフブラスの前に立ちふさがって睨み合っていた。


「何のマネだ?」


 リザリスが冷静に、且つ熱い瞳でウルフブラスを貫こうと見つめる。


「魔王は殺させません」


 ウルフブラスは怪訝な顔でふたたび笑った。


「魔剣を持たねば我々に攻撃すること能わず」


「それでも盾くらいにはなれます」


「下らぬな。貴様の命、そう安いものでもなかろう」


「だって、信じてますから」


「何? 誰を信じているというのだ。勇者であるお前が。誰を?」


 リザリスは長い睫に彩られた瞳を閉じる。


「魔王をです」


「ハハハハハ! 戯れ言だ! 戯れ言だ戯れ言だ戯れ言だ! 古来の決まりに貴様等如きの力で、意思で、介入などできると思っておるのか! それが出来ぬから我々が邪神を呼び覚まそうとしているのだ! 人間如きが、ましてや魔族なぞが、世界の意思をねじ曲げることなど、できようはずもなかろうが! よい、我が手で引導を渡してくれようぞ!」


 ウルフブラスは無手の状態で剣を振りかぶった。すると、何もなかったはずのそこに雷の剣が生まれる。

 バリバリと紫電を撒き散らしながら、ウルフブラスは剣を構えた。


「直に武器を作り出す……まさしく神ですね」

「神ではない。偽神だ。そんなモノと一緒にしてもらっては困るな」


「ですが、きっと魔王を逃がしてご覧に入れます」


「すぐに死ぬ」


 リザリスは腰から彼女の持つ勇者の武器である聖剣ペトリュスを抜く。

 冷気を放出する白刃が夜闇に舞った。

 ペトリュスは偽神を傷付けることはできないが、攻撃を受けることだけはできる。


 フォン、と彼女の背中に輝く白い羽根が8対出現し、浮遊の効果を与えた。これはただの浮遊ではない。相手の背後に自律移動するという力を備えるペトリュスの特殊スキルだ。


「望むところです」


 二人が見合った瞬間、剣戟の音が炸裂し、周囲が吹き飛んだ。リザリスの羽根がはためく。

 リザリスは偽神を攻撃することができない。故に捌く。受けて、流す。そのため防戦に集中すればよく、偽神はただただ攻め続ければよかった。


 一瞬で数撃、森の中を右へ左へと移動する。その度に木が蒸発し、葉が散り、森が散発的に開けた平地へと姿を変えていった。


 ウルフブラスがブラガに騎乗しながらなんの気はなしに呟く。


「ふむ、流石勇者よ。この程度ではまだまだ、というところか」


「いえ、私の方はほとんど全力です」


「ふむ、そうか。確かにな」


 ウルフブラスの姿が消える。リザリスは相手の姿を見失った。


「くっ!?」

「後ろだ」


 リザリスの背を取ると、ウルフブラスはリザリスの背で8対の羽根を為す中心部分を強引に掴んだ。


「この羽根だけは少々厄介だ。時間がかかってしまう」


 掴んだ腕から雷を放出する。激しい電流がリザリスの体を直に襲った。


「ぐっ、ああああ!!」


「死ね」


 そしてウルフブラスは有無を言わさぬ力でぐいとリザリスを持ち上げた。まるで綿毛のようにリザリスの体が浮き、雷の刃がリザリスの背に生まれた羽根を斬り落とす。


「ああっ!!」


 羽根には痛覚があった。リザリスは一瞬にして16本もの羽根を断ち切られた痛みに悶絶し、そしてそのまま気絶した。痛みに自然と零れた涙が空中に舞う。


「こうすれば万が一もない」


 そしてウルフブラスはリザリスを放り投げた。軽く数十メートルの放物線を描き、そこをめがけて剣を投擲する体勢を取る。しかし――。


「うおおおおっ! ごふっ!!」


 胸に穴を空けたカナタがウルフブラスに飛びついたのだ。


「なんだとっ!? この死に損ないが!」


「条件は揃った! この野郎が。俺はあれくらいじゃ死なねえぞ、と!」


「今度は確実に殺してやる!」


「へへっ、遅かったな! お前は一足遅かった」


「遅かった……だと?」


 その瞬間、森の奥に、カナタの倒れていた場所に広がる魔法陣がウルフブラスの瞳に焼き付いた。

 浮き上がる魔法陣、壊された2本の剣、ルガナクにボルド-。ルガナクの希少性はボルドーに比ぶべくもないのだが、魔剣としての体裁はカンペキに整えている。

 ボルドーに関しては言うまでもなく最高の触媒だった。

 もう少し早く気付くべきだったのだ。

 いや、ウルフブラスはこの状況も視野に入れなければならなかったのだ。


「まさか、まさかまさかまさか! 貴様!」


 カナタがニヤリと笑う。


「そーだよ。俺は邪神を召喚した」


 その瞬間、雷の壁を遙かに凌駕する光が辺りを巻き込み、一柱の何かが姿を現わした。


「じゅにくかーんりょー!!」

ぼちぼち色々直すのに数日日数かけるやもしれませぬ。

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