10話「魔王様、前魔王の知識がゼロすぎて困る」
本日2本目のうちの1本ッス。
2本目は今書いてます。っていうか今から書きます。
自分的〆切に間に合わないッス( ;∀;)
さて。俺は今絶賛後ろから抱きしめられ中だ。
犯人は婚約者と前魔王を名乗るエフという美女。勿論記憶のなくなった俺はエフなんて女は知らないわけで。
こいつは重度の恥ずかしがり屋なのか、自分の顔を見られると部屋を完全に破壊しつくしてしまった。
ボッコボコのズッタズタである。
壁なんか抉れてるし、調度品はもれなく割れたり壊れたり。窓は壁ごと全部吹き飛んで、外からの空気が入って来ている。
セキュリティはザルなんだろうな。誰も来やしないぞ。
それにしても恥ずかしがっただけでこの惨状だ。
怒らせたらどうなっちゃうんだろうな。あはは……。
そんな女に今、俺はバックを取られている。レスリングならもうポイントがはいっているな。
一つだけ喜んでいいのか萎えるべきなのかよくわからんことが起こっている。
胸がめっちゃ背中に当たってるんスよね……。
おっぱいだよおっぱい。
人生初おっぱいとの接触が背中に押しつけられてるんだよ。未知の感覚だよね。
加えて言っちゃうととんでもなくいい匂いが漂ってきてるんだよ。
こう……なんていうか本能に訴えかけてくるレベルの……フェロモン的な何かがあるとしか思えない。
だがしかし……
「カナタはやっぱり私には反応してくれないのか」
理由はハッキリしてるよ?
怖いんだよ。
ただただ貴女にバックを取られてるのが怖いんですよ。
「警戒するのはわかる。言ってみれば私は過去の女だからな」
憂いのある溜息を漏らすエフ。
正直言って色気すごいっす。おっぱい当たってるッス。
でも……怖いんス……。
エフの手が俺の胸元に降りてきた。
そういえば今気づいたんだけど、俺は麻痺で眠らされている間に着替えさせられてたみたいだ。着ている服が別のものになっている。
そんな風に考えていると、俺の胸辺りでもぞもぞとした感触があった。
おい、俺……今この女に触られてるのか?
あかんあかんあかん。すっごいくすぐったい!
「何すんだよ」
俺が焦って声に出すと、エフが満足そうに笑う気配があった。
「昔話をしてやろう。昔のお前は私をスキにしていた。これはその時の意趣返しとでもいうべきものだ。甘んじて受けろ」
唐突に来たな昔語り。
「なんだよ、スキにしてたって」
「文字通りの意味だ。私は毎日お前にめちゃくちゃにされていた」
え?
この女を? 俺が?
めちゃくちゃにしてたって?
俺は……恋愛がめんどうでしょうがない男だ。
そんな俺がこの元魔王に手を出した? まさか。記憶を捏造してるんじゃなかろうな。
年増だけに!
「年増なんかじゃないぞ! 私の種族の中では若いほうだ。それに記憶を捏造するなんてことはない。全部事実だ」
……どうやらコイツは心を読む力を備えているようだ。
本当に若いかどうかはさておき、さきほどからもぞもぞと俺の肌を往来するエフの手が、少しずつ熱を帯びてくる。
「と言われてもな……」
「わかった。そこまで言うのなら、既成事実を作ろう」
は!?
熱を帯びていたエフの手が万力のように俺を締め付ける。
おっ、おい! 逆サバ折りか!?
そんな力で挟まれたら俺は死ぬぞ!
っていうか既成事実!? やばいやばいやばい!
ヤられる!
「ぐはっ!! おい、エフ、やめろ」
「やめろと言われてやめられるわけがない。お前を逃がさないようにするため、少し体の自由を奪っておきたいのでな」
今、俺のいる部屋はエフが壊したことで外が見えている。
逃げたい。
ものすごくあちら側に逃げたい。
美人に組み付かれて既成事実を作りたいと言われれば大抵は喜ぶだろう。
だが俺はいきなり迫ってくる女なんて信用したりしない。
どんな責任を負わされるのかわかったもんじゃないからな。
それにあの嘘つき二人組をとっちめるのが先だ。
「なあ、エフ」
「なんだ?」
「既成事実を作るんだったら合意はあった方がいいぞ。ムリヤリ迫るのはよくない」
「いいではないか。お前も男なのだしな。それに昔散々私をいじめ抜いたではないか……」
声が尻すぼみになり、背中から鼓動の速度があがるのが伝わってくる。
何をしたんだ過去の俺。
エフの手はいじいじと動いたかと思うと、俺の胸をつん、とつついてくる。
うむ。ここだけを切り取れば非常にいじらしい。
しかし、この女は。
「ぐうううう」
逆サバ折りをしながらそれを実践しているのだ。漏れ出る獣声は俺のうめき声。
ごーつーへる。
このままでは既成事実を作る前に死んでしまうと思います。
「そこで、そこでだ、エフ。話がある」
「なんだ? 言ってみろ」
「記憶のない俺が好きなのか? それは本当にお前の知る俺だと言えるのか?」
「……? カナタならどんな状態でも私は愛せる自信があるぞ? お前の魂は汚れなく美しいままだ。まったく、わかりきった恥ずかしいことを言わせるな、バカ」
そう言って俺の首筋に顔を埋める。
「のわっ」
もぞもぞと首筋を動く女の唇。や、柔らかいが……どこかちょっとおぞましいッス……!
こういう時ドMだったら、さぞご褒美なんだろうなあ。
だってさ、今の俺を好きだって言い切るなんて逆に怖いじゃない。
油断させて毒を盛るひどい龍だとか美形すぎる区長とかがいるんだよ?
何も信用できないんだよ?
例えば//魔族不審lv.1を獲得しました//的な!もうそんなんレベルカンストしてるよ。
「エフはそれでよくても、俺は良くない。お前のことを知らないからな」
「やってしまえばそんなこと一回でわかるだろ」
お、大人の発言だ……。
コイツも金食華なのか……むしろ化身だ……。
わたしの冒険はここで終わってしまうのか? 来てまだ1日も経ってないんだけどさ。
「エフとの思い出を知りたいんだ」
「私の心はお前のものだ。臆することもあるまい。私のことなんぞ二の次でいい」
……変な間があったな。
それはいいとして、心に訴えかけようとしても全く届きそうにない。
まあ、今ので違和感が嘘じゃないってのは確定したがな。
なんか隠してるってワケだ。
すると、エフが動きを止めた。
「もう私は我慢をやめるぞ、カナタ」
甘い囁きが俺の耳朶に心地よく響く。
サキュバスとかそういう魔族なんじゃないんですかね。
しかしこみ上げる拒否感。
別に女性不信とかそういうわけではないのだが、どうしても拒否感がわき上がってくる。
それをおくびにも出さないようにするのは難しいところだ。
「な、何をするのかな……エフ」
「うむ? うん。そのな……そ……、その……、き……」
ん? なんだ?
急に歯切れが悪くなったぞ。
乙女分出ちゃったのか?
俺はただ何をするのか質問しただけだ。
答えは決まっているだろう。
しかし……。
「う、わ、わかった。言おう。……き、キスだ。お前とキスの既成事実を作る。接吻をすればあれだろう? 子供ができるのであろう?」
あっれ?
あっれぇええええええ?
え?
嘘でしょ?
マジ?
俺は信じられず、ちょっとだけ緩まったサバ折りから逃れると、エフの顔を見た。
エフは恥ずかしさを堪えるように思いっきり目を閉じて顔を真っ赤にしている。
これのどこが昔俺にスキにされた女なんだろう。
知識ゼロ……?
っていうか俺はコイツに何をやったんだ?
「赤ちゃんはどうやって生まれるか知ってるか?」
「ケルベロス鳥が運んでくる」
コウノトリ的な何かだろうか?
っていうかケルベロス鳥ってその無茶苦茶なヤツはなんなんだよ。
どんな品種改良の結果生まれたんだよ。
混ざりようもないだろそんなの。犬と鳥だぞ。聞いたことない。
エフが嘘をついている感じもしないので、俺は真実を伝えてやる。
まあ、俺と体が同じ形態だからな、万が一そういう種類の魔族です、とか言われちゃうともう打つ手がないが、きっとこれは知識が足りないだけだろ。
「なあ、エフ。えーと、その、き、キスじゃ子供はできないって知ってるか……?」
俺もちょっと恥ずかしい。
キスとか考えるだけでもめんどくさいからな。
すると、エフはカッと目を開き、衝撃の表情を浮かべた。
「う……嘘だろう!? 私は今日中にお前との子供を作らなければいけないんだ! それでは困るんだ! キスすれば子供ができるって、故郷のお爺ちゃんが言ってたのに!」
おい、魔界バカばっかかよ。
こればっかりは逆に嘘だと言って欲しいところだな。
ところで気になる言葉が出てきた。
「今日中に俺と子供を作らないといけない?」
するとエフはバッと自分の口を覆い隠した。
子供みたいな仕草だな。いや、実際内面は子供のようなものか。
500歳を越えた子供……。
やはり怖い。
っていうか俺の顔見てももう赤面したり部屋ぶっこわしたりしないんだな。
いや、今はそれどころじゃないという話かもしれない。
下手に触れると何するかわからないからな。黙っておこう。
「今日中にキスをすればカナタと結婚できるという話がついていたのだ。つまり、私は子供を作らなければいけないのだとばかり……」
人身売買かな?
「そっか」
「ということは何もキスくらいで恥ずかしがる必要はないというわけか。これで恥ずかしがる必要もなかろう」
なにやら雲行きが怪しいですね。
俺はエフに正しい性教育を施そうとしただけなのに、なんだ、それなら簡単だ、というオーラが出始めている。
うん。やばいね。
そっかそっか、子作りしなきゃいけないって思ってたから俺と顔を合わせるのが恥ずかしかったのかー。
そっかー。よくわかんないけど。まあ乙女らしいからな。
それよりも。
や ば い。
「ふふっ。じゃ、カナタ。私とキスしろ。私が好きなのだ。お前も私のことが好きだろう?」
心理的○ャイアン……。
そこで首を縦に振れるわけがねーだろ。
食われる。俺のファーストキスが食われる。
いやだ。いやだーー!!
せめてお友達から始めましょう、そこら辺を落としどころにしたかったのに。
そんなのでさえイヤだというのに。
めんどくさいのにいいい!
肩に異様な力が入る。
ミシミシッ、という骨の音が部屋に響いた。
エフが俺をつかむ音ですね。これは余裕で雑誌を捻りきれる握力ですわ。
「ぬああああ!!」
やばいやばいやばい。痛い痛い。
エフはさっきまで全然遊びだったんだ。
でも俺の言葉で逆にふんぎりがついてしまった。
もう待ったなしだ。
やだー、妊娠させられちゃう!!
……。
エフは確かにものすごい美人だが、今は酔ってムリヤリ迫ってくる親戚のお姉さんみたいにしか思えなかった。
そんな風に見えても俺に余裕なんて全然生まれないがな!
「カナタ。私のファーストキスはお前のものだ」
お前もファーストキスかよ。
「断る!」
「じゃあムリヤリすればいいだけだろ」
断固拒否したい! エフの顔が近づいてくる。
うわああああ美人だけどいやあああああ!!
「それはさせませんわ、おかあさま!」
しかし、俺の後ろから少女らしい声が聞こえて、続けざまに金属質の音が響きわたった。
ん……?
え?
色々とどう言うこと?
俺の視界に意識が追いつく。
すると、俺の目の前には青い燐光を発するもの凄い綺麗な金髪少女がそこにいた。
うごごごご。
という中での、煌めく金髪登場!




