8話「魔王様が世界の話をお聞きになっています2」
本日は2話上げます。こちらは本日の1話目です。
レスクとスキューマが肝になるのは大分先のことですが、魔界はこんな感じです。残りは時間差になってしまいますが、そちらではやっとヒロインっぽい何かが出せそうです。明日も2話更新で行きたいと思っています。
魔界全図と書かれた地図の前に、龍の爺さんが赤いローブを着て立っている。
先生役が板についてるなあ。
魔界全図の大きさは移動用のホワイトボードを思わせる。マゴッツは俺の胸くらいの背丈だから、全図は小さな黒板くらいに見えた。
授業開始という雰囲気だ。しばし生徒に戻ろう。
「さて、これが魔界、レガンシスの全図となります。さきほど話にあったレスクとスキューマですが、魔界は現在3つの地域で成り立っております」
マゴッツは地図の下に備え付けてあった細い指示棒を手に、魔界全図の一箇所を指し示した。
魔界はさっき聞いたレガンシスっていうのね……メモメモ。
俺は顔を上げて地図を見た。魔大陸は一つで、若干オセアニアに似ているな。ただ東のデルタ地帯がかなり飛び出ているな。小さな島もいくつかあるな。
「当たり前だけど全然地球と違うな……」
問題はアレだ。
大きな丸印が計5箇所大陸に付いている。まさかソレ自体が地形だとは言わないよな? そして奇異なのが、丸印以外の場所のほとんどが紫色をしているということだ。
さっき触れた東端だけはまたちょっと違って、平地っぽい茶色をしている。
「あの丸印のあるところがその……レスクとかスキューマなのか?」
爺さんはキレイに首肯した。
「仰せの通りにございます。丸印……まぁ具体的に言うと少し違うのですが、そこがスキューマと言われる場所ですな。そして残り全てがレスクにございまする」
再び地図に目をやる。よく見ると5つの丸印のうち、左下の丸だけが小さい。そして内部が赤く塗られている。
左上にも丸印があって、そこの内部は青い大地だった。
そして中央南、海に面している丸印が一番大きく、平地を思わせる茶色だ。
あとは右下、やや右上と、それで計五つだ。
これがスキューマなんだな。大陸全図を見下ろしてこの大きさなのだからかなり広大な面積を持っていると言っていいだろう。
「へえ……」
「スキューマとは平たく申し上げれば我々公爵の領地にございます。左下の大地がわがルルゴニア・スキューマですな」
爺さんが左下の赤い大地を指す。
「おお、あの赤い場所が」
続いて今度は海に面した一番大きなスキューマを指した。
「はい。そして実はこの中に意味の違う場所が一つありますのじゃ。それが中央の海に面した都市、レガンシスにございまする。魔大陸レガンシスの首都、レガンシス。それが魔王様――カナタ様がお住まいであるこちらの魔城がございますな。レガンシスは実はスキューマとは呼ばれておりません」
「へえ。じゃあなんて呼ばれてるんだ?」
「ただレガンシスと言われておりますじゃ。これで魔大陸がレガンシスとスキューマ、そしてレスクの3つから成っているということがおわかり頂けましたかな」
へー。レガンシスとスキューマについてはそこを『どう捉えるか』という概念の話だろうけど、スキューマとレスクの違いはかなり大きいな。
俺はそこでやっと違和感に気付いた。地図の丸印の正体だ。
「ん? あれずっと丸印だと思っていたけど」
「お気づきになられましたか。そうなのですじゃ」
「なるほど、紫色の浸食が止まってる場所がスキューマなんだな?」
そう。先ほどからマゴッツと話している5つのスキューマだが、俺はずっと丸印だと勘違いしていた。丸印などではない。紫の大地の中に5つの泡があるように見えるだけなのだ。
「つまり、あのスキューマだけが人の住める場所だってことなんだな? 紫の場所には何故住むことができない?」
「いえ、細かい話をすれば、我々龍族であるとか、魔王様やフラゾエル殿、そして不死族に夢魔族、水氷眷属などの魔力の高い者は住むことができます。ですがある一定の力がない者にとって紫の大地は死と同義。魔力が徐々に減っていくのですじゃ。魔力の自然回復量をレスクでの魔力消耗量が追い越してしまいますと、いずれ死を迎えることになるでしょう。とは言いましても各スキューマをつなぐための道や、淡雪のように小さなスキューマ群、そしてレスクにある小規模な王国などはかなりの量があるのです。罪人はレスクに放逐するという刑もありますな。ここは未開の地もまだ残っておりますぞ」
魔力……霊素と魔力の違いってなんだろう。まあそれは後回しだ。
ふああ、段々ちょっと体が重く、眠くなってくるな。気を引き締めないと。
レガンシスは予想以上にシビアっぽい世界みたいだ。
でも未開の地は面白そうだ。俺なら行けるみたいだから、どこかのタイミングでこっそり様子見したいな。
しかしそれにしても魔界は紫に染まってるな。地球でいうところの海と大陸の比率くらい紫に染まりきっている。
もし惑星儀なんてもんでこの星を見下ろしたら一箇所だけやたら紫に見えるだろうな。
俺はそこで不意に思い出した。フラゾエルの居住地の話だ。
「マゴッツ……爺さん。あのさ、さっきフラゾエルが自分のいる地域をレスクって言ってたんだけど」
マゴッツが視線をフラゾエルに投げかける。
フラゾエルがそれを受けて優雅にカップをテーブルに置いた。
なんかイチイチ気にさわるなこいつの動作。
「それについては私が話しましょうか。レスクは確かに人が住めない場所ですが、カナタ様と私、そして当時の勇者と協力することで、魔界の東端、全図から飛び出すデルタ地帯だけ人の住める場所にしたのです。色が違うのがおわかり頂けると存じます」
うん。お前は本当にそんなことができるのか?
それに住めない場所、住める場所って言われてもピンと来ないなあ。
「そうだ、魔力と霊素の違いってなんだ?」
「それは別の機会にお話しましょう。正直カナタ様も今はお疲れでしょうし」
いや、大丈夫だけど。
……。
……?
あれ? ちょっと体が重いぞ。
さきほどまで眠気かと思っていたんだが妙だ。
口がちょっとダルい。
「いやいや、でも初日とはいえもっと魔界のことを知らないと……らめらよ……」
「いえ、これ以上はやめましょう。そろそろ時間のようですし」
「ほえ?」
気の抜けた声が口から出る。まさか生きているうちにリアルでほえ? とか言うことになるだろうとはおもいもしなかったヨ……。
「これに抗えたら最早それは生命から逸脱していると言わざるを得ません」
フラゾエルが意味深な笑みを浮かべると、俺の体はどんどんと重くなっていく。
地獄に落ちるといいんじゃないかな?
思い当たるのは一つ。
あのおいしかった金食華のマカロンだ……!
ひどい、こいつら悪魔だ!!
……魔族だった……。
舌がピリピリして体全体が怠く、徐々に動かせなくなっていく。
「どく……お、おまえら、お、おれにどくをもったにゃ……?」
マゴッツはニヤリと笑っていた。
「こうでもしなければ魔王様を結婚させるのは難しいですからな。金食華の麻痺毒を使わせていただきました」
けっこんさせるのになんでどくがひつようにゃのだ!!
「申し訳ありません、カナタ様。さきほどの魔法の最後で腕を麻痺させていただいた際に魔力制限をかけさせていただきました。カナタ様の魔力はあまりにも強大にございますので、今回は確実な結婚をされますよう魔力の出力を以前の100分の1ほどに設定させてもらっております。本当は金食華の麻痺毒など、口にするのも憚られる超劇薬なのですが……流石ですね、カナタ様」
やっぱりいみわかんない!! のうにわるいむしがわいてんだろ!?
しかももうしわけないとかいってるけどものっそいえがおだにゃ……
ぶじだったらおまえらぜったいなぐる。
あー、らめー。ねむむ……。zzz……。
俺はそこで意識を手放した。もー絶対アイツらの勧めた料理は食べないと心に誓いながら。
こうして毎日100pvほどご覧頂けるとは思っておりませんでしたので嬉しいです。ありがとうございます。まだまだこれからですのでぜひ応援のほどよろしくお願い申しあげます。本日2話目は1時間後を予定しています。




