終焉のジョージ
また、彼らは何かを喋っている。
まだ、彼らは何も感じていない。
そう、俺の中で沸々と滾るこの激情を彼らは知らない。
ならば、教えてやらなければならない。
そして、もう、自分達はいつでも殺され得るのだと、理解してもらわなければならない。
前回、最強と戦った時、俺は全てを出し切った上で、奴に敗北したわけではない。
当然、奴も勝ち切るのに全てを出し切ったわけではないだろうが、それは当然だ。
死よりも恐れなければならない事、それは自我の崩壊だ。
自分が自分で無くなってしまって勝ちを得たとして、それは実感も何もなく、ただの虚無なのだから、無意味だ。
しかし、今は違う。
ここにいる3人を殺し切るには、そういう生温い事を考えている場合ではない。
俺はもう、無意味だろうと何だろうと、彼らを皆殺しにしてしまわなければ、終われない。
ここで終わると決めた以上、終わる為に最善である事は何も恐れてはならない。
無意味だろうと、虚無だろうと、知った事か。
「ああ、嫌だな…」
偽らざる本音だ。
初めて特異性を有した時から、誰もが知っていて、恐れていて、自分らしく死ぬ為に、自分として死ぬ為に、決して使わない、だからこそ、誰にとっても無意味で虚無な特異性、それが俺にとっての、これだ。
「破天荒快男児…、フル稼働」
そうして、俺は放り出された。
二度と戻れない場所から、俺は俺を見る。
なあ、誰か教えてくれないか。
自分の姿をした誰かが勝ったとして、自分の形をした何かが勝ったとして、それで、誇れるか。
もう、二度と、そう、ただの一瞬すらも、自分が世界でジョージであると言う事は出来ない。
そういうのを選んだ。
だから、俺は見ている。
全身隈なく、脳味噌、心とやらまでも、破天荒快男児と化したジョージを。
俺以外の誰かをジッと見ている。
俺以外の何かを…。