『破天荒快男児』ジョージ
俺にとって王子とは、殺すべき対象だ。
何故、殺すかと問われれば、俺の人生を狂わしたからだと答える。
だが、彼が死んでしまえば、そう、殺され方がどうであっても良いのかと言われれば、やはり、違う。
だからこそ、俺は最強と王子の戦いにすらもなっていない一方的な虐殺を見過ごせなかったのだ。
「どういうつもりだ、死に損ない?」
破天荒快男児、その一撃で最強の衝撃波を逸らした。
王子と最強、2人が同時にこちらを見やっている。
一方は呆然と、もう一方は憮然とした表情だった。
どちらも、相応に苛立つ。
「助けたわけじゃない、お前を殺すのは俺だ。そして、お前を殺すのも俺だ」
まずは、王子に俺の立場を明確にした上で、最強も殺す対象だと断言しておく。
一方は恐怖を、もう一方は敗北を俺に与えたのだから、両方ともが俺によって殺されるべき存在なのだ。
「お前達の争いに、俺は興味が無い。それに、俺の獲物はもう、来てくれたようだ」
最強が視線を転じ、俺もそれを追う。
襟櫛、奴は俺に屈辱を与えた。
それならば、俺が殺さなければならない存在だ。
「何でだよ、最強…。襟櫛は、お前が育てたんだぞ。お前は、何を考えてるんだ…?」
王子の疑問は分からなくもないが、極めて温い。
この程度の奴に固執していた事が少し恥ずかしくなる。
「どんな形で復活しようが、すでに倒してしまったジョージには興味が無い。だとすれば、そのジョージに真っ向から挑み、負けなかった奴を殺してみたいと思った。理由はそれだけで、充分だろ?」
ほぼ一瞬で、襟櫛が王子の側に立っていた。
相変わらず、速度だけは超一級品だ。
「大丈夫か?」
「襟櫛、最強はもう…」
「分かってる。ここには、ジョージまでいる。厄介だな…」
どいつから殺したら良いのか、俺はどいつから殺したいのか。
考えてみても、さっぱり分からなかった。
舌打ち、その後。
「しゃらくせぇ!俺に勝ちやがったテメェも、俺が勝ち切れなかったテメェも、俺から逃げ回ってやがったテメェも、全部、一切合切、この俺が、『破天荒快男児』ジョージが、皆殺しにしてやるってんだから、さっさと始めるぞ、オラァ!」
誰に当たっても構わなかった、誰にも当たらなくても問題なかった。
俺は、破天荒快男児の一撃を、3人の中心に放った。
開幕の合図だ、ガタガタと会話をしていても、無意味だ。
俺は、こいつらを全て殺し、それで終わらせるのだ。
青岸には悪いが、奴の野望とやらは、その世界征服とかいうお笑い種は、勝手に叶えようとして、惨めに失敗しやがれば良い。
そう、俺には関係ない。
俺は、ここにいる奴らを皆殺しに出来れば、もう、それだけで満足だ…。