表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青騎士  作者: シャーパー
82/168

カズトの古傷

歩いてきた、女が1人。


俺はその女を知っていた。


「悪い、知り合いだ。先に行っててくれるか?」


襟櫛と山田は無言で頷き、女の横を通り抜ける。


そして、俺だけが足を止めた。


「久し振りだな、メアリさん」


「えっと、貴方は…?」


遥か昔、まだ、彼女が自ら現場に出ている時、俺は彼女と組んで仕事をした事があった。


まあ、その現場は情報屋だらけだったし、駆け出しで碌な情報をもたらさなかった俺の事なんて、彼女が憶えているわけもなかった。


だが、こっちは憶えているのだ、酷く蔑まれ、虚仮にされたのだから。


「情報屋のカズトといいます。昔、現場でお世話になった事があります」


「そう…なの。私が現場に出ていたという事は、随分と昔の話ですね」


正直、どうでも良いといった態度だった。


だが、彼女にとってどうでも良い事だったとしても、こちらにとってはそうではない。


「今や、組織のトップになったメアリさんが、こんな場所に1人でどうなさったんですか?」


「私は…、私は青岸と…最強を殺しに来た」


また、無謀な事を。


青岸はともかく、最強を殺すなんて不可能だ。


あの頃の強大な力を持っていたメアリにしても、最強と比べれば見劣りしようというものなのに、現場から離れすぎた彼女は衰えているだろうから。


そう、すでに俺よりも衰えているだろう。


「へぇ、そりゃ大した野望をお持ちで」


笑う、嘲笑う。


しかし、こちらが眼中にない彼女は気付かない。


それが、妙に苛立つ、心を逆撫でする。


「情報屋、カズト、思い出したわ、あの役に立たない情報屋ね、カズト、間違いない、役立たずの情報屋」


役立たずの情報屋。


かつて、俺はそう評された。


ずっと頭を垂れたまま、彼女にそう罵られ続けた。


灼熱が心に渦巻き、殺意が灯る。


「そうだよ、久し振りだな、メアリ?」


俺の言葉に対し、メアリは小首を傾げる。


そうして、笑う、嘲笑う。


「そうなの?今も昔も、役立たずの情報屋なのね?」


「はぁ?」


「私が思い出したのは、メンバーからの報告よ。この建物に入り込んでいる役立たずの情報屋、それを思い出しただけ。でも、どうやら、私と昔、一緒に働いた時も、今と変わらずに役立たずの情報屋だったというわけね。滑稽ね、無様ね、生きていて恥ずかしくないの?」


報告を思い出しただけ、俺と仕事をした事なんて思い出していない。


赤面する思いだった、勿論、恥ずかしさよりも怒りで。


「昔は輝いてたって人もいる、今は成長したって人もいる。でも、貴方はどちらでもない。昔も今も変わらず、役立たずの情報屋、そうでしょ?」


冷静になる必要がある。


それでも、冷ましてしまう必要はない。


こいつは殺す、何があっても殺す。


今の俺、過去の俺、全ての俺を否定するこいつは、絶対に殺す。


「私を殺したいって顔してるわね?私も今、誰でもいいから殺したいって思ってたのよ。だから、殺し合いを始めましょうよ」


殺し合いなんてするつもりはない。


一方的に終わる、終わらせてやるのだ…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ