組織のメアリ
たったの一撃だった。
たったの一撃で、組織の8割方が消し飛んだ。
文字通り、最強に薙ぎ払われたのだ。
誰よりも詳しく、私は最強の実力を知っているつもりだった。
いや、知っているなんて生半可なものではなく、熟知していたはずだった。
だが、それすらも、最強は簡単に上回ってしまったのだ。
「メアリ様、どうすれば…?」
「指示を、我らに指示をお出し下さい!」
全員を狂熱に浮かし、先導していた大兄弟は最強の一撃を先頭で見事に受け、すでにその存在を消してしまっていた。
旗を失ってしまった彼らが頼るのは、やはり、この私なのだ。
「立て直します!私達が優先すべき事は、2つ!まずは、建物の問題を解決する事、そして、最強を殺す事!」
全員が黙って聞いている。
これが、望んでいた状況だ。
まあ、望んでいた戦力はすでに無いが。
「地味な仕事ですが、組織に貢献したいメンバーは私と共に建物の中に入りましょう。あくまでも、大きな功績を上げたいなら、最強を殺す隙を窺いながら待機して下さい!」
最強は後回しだ。
放置しておけば、勝手に傷つく可能性もあったし、これ以上、まともに向かっても仕方が無い。
この事すらも理解できないような無能は、ここで放置してしまえば良いのだ。
「メアリ様、俺は共に行きます」
「アタシも…」
「僕も…」
僅か3名だ。
一人称が違う古株の3名。
「では、残りのメンバーは最強をお願いします。行きましょうか、皆さん」
私には目論見があった。
恐らく、とても悔しい事ではあるが、最強は組織に興味が無い。
だから、私達が素通りしたとしても、余裕で見過ごしてくれるはずだ。
そう思い、そう確信し、だが、緊張しながら、最強の横を通りすぎる。
一瞬、視線が交錯する。
蔑まれる事すらも無かった。
それどころか、逆に建物の人間を牽制すらもしてくれた。
恩返しのつもりかと思った矢先、その建物の人間諸共、私と一緒に来ていた3名のメンバーが衝撃波によって掻き消されてしまう。
足を止め、振り返り、最強を見た。
こうして対峙するのは、いつ以来だろうか。
「どういうつもり?」
私の問い掛けを無視し、最強は建物の外に出る。
そうして、次から次へと、組織のメンバーを屠っていく。
助けを求める声が聞こえた、だが、私は彼らを無能として切り捨てたのだ。
今さら、助けに戻るなんて意味が無い。
いや、もう、私という存在自体が意味の無いものとなっている、そんな気がしてならなかった…。