ジョージの目線
「青岸、カズトの元に行ってきたぞ」
ブッチデヨという太っているだけの能無しが偉そうな口調で言う。
「首尾はどうだ?」
「勿論、成功した。わしが失敗など、やらかすわけがないであろう」
「そうか、助かるよ」
俺を従えているにしては弱腰の青岸に、少し苛立ちを覚える。
「ストラもよくやってくれた、ありがとう」
「気にしないで下さいっす。久し振りに、カズトさんに会えて楽しかったっすから」
「それは良かった」
こいつら如きに気を使って、何の意味があるのだろうか。
まあ、確かに青岸の手駒は俺を除けば、無闇に不死身さを利用するだけのガキ共と、特異性を持っているだけのこいつら雑魚共しかいないから、数合わせとしての重要性はあるのかもしれないが。
「じゃあ、ここからは、だな…」
説明しようとした青岸を遮るようにして、ブッチデヨが大声で言う。
「わしは因縁に決着を付けに行く。青岸、共に行動するのはここまでだ」
「因縁…?誰と因縁があるって言うんだ?」
「山田だ。わしとストラは奴を殺し損ねた。その因縁に終止符を打つ」
「いや、因縁って言うか、それはただの失敗じゃ…?」
「おい、青岸よぉ!」
無造作にブッチデヨが伸ばした右手に青岸が反応できなかったので、俺が代わりに払ってやる。
勿論、『破天荒快男児』は使わなかった。
そんな事をしたら、こいつの柔和な手など、跡形もなく弾け飛んでしまう。
「悪かった、ブッチデヨ。因縁、因縁だな…。それを片付けたら、また、俺に協力してくれるか?」
俺に払われた右手を痛そうに擦りながら、ブッチデヨはすぐに答えなかった。
その理由は恐らく、青岸の目にあったのだろう。
嫌な鈍い光を湛えていた。
「あ、ああ、そうだな、まあ、悪くない。わしの力がなければ、大願成就も難しいだろうからな」
「そうだな。頼りにしてるよ、ブッチデヨ」
俺は少し満足していた。
青岸は確かに、誰かを率いる素質がある。
飴と鞭の使い分けをちゃんと心得ているのだ。
さっきの瞬間、ブッチデヨが拒否したりしたら、青岸は俺にブッチデヨを始末させただろう。
ストラの方はどうか分からないが、まあ、悪くない。
ブッチデヨとストラが立ち去った後、青岸は俺に向かって言う。
「王子が来るみたいだ。まずは、奴から始末したいか?」
「ああ…」
返事は短く、だが、思いは強い。
「分かった。じゃあ、俺はここで待ってるよ」
「そうか…」
青岸は本当に、人を率いる術を心得ている。
俺は王子を殺す事に対し、誰にも邪魔されたくないし、干渉されたくなかった。
それを理解し、青岸は1人で行かせてくれるのだろう。
悪くない、こいつの下にいる事は俺にとって、決して悪くない…。