王子の覚悟
ジョージと青岸が灰色に消えた後、俺は足止めを食っていた。
いや、正確には、あの『最強』が足止めを食っていた。
前方に建物の守衛とその他、後方からは組織が攻め立てている。
まあ、正直、『最強』が苦戦するレベルではないので、遊んでいるだけなのだろう。
しかし、俺からすれば、遊んでいるのを待っていても仕方が無いのだ。
「こうなったら、俺も参戦するか…」
そう呟き、ハッとする。
何故、自分は『最強』と戦う気になっているのだろうか。
つい1ヶ月ほど前には、共に建物の6階で灰色から出てくる子供達を退治していたのだ。
それなのに、今は敵視している。
何があったわけでもなく、本来なら駆け付けて加勢しても良い場面なはずなのに。
その時、『最強』がこちらを見やった。
笑っている、仲間としてではなく、敵でもなく、他人みたいに。
「何を笑ってるんだ…?」
獅子も、蛇も出せず、考える事しか出来ない。
いや、実際は考えてすらもいない。
後退ってしまい、自分を叱咤するように足を叩く。
「逃げるな…」
この中に、この建物には、俺を待つ仲間達がいる。
そいつらを見捨てるくらいなら、最初から関わらなければ良かった。
今日も来なければ良かった、今も帰ってしまえば良い。
でも、そうはしない。
俺は仲間達を見捨てない。
1頭の獅子と、蛇の大群。
後退った分を、そして、新たな一歩を刻む…。