青岸の仲間
仲間という名の部下として候補に上がるのは当然、自分とブッチデヨよりも弱い奴だ。
候補者は多くないが、最適な奴を思いついた。
「ストラ、か…」
「おいおい、青岸よ、ストラのような雑魚を加えて、何かの役に立つのか?」
三下のブッチデヨですら、ストラを雑魚扱いするのだ。
まあ、組織の中でも、雑魚として有名だったのだから、仕方がない。
「俺達は事実上、不死身になった。とはいってもなぁ、『最強』を従わせられるとか、思えるか?」
「無理だな」
ブッチデヨは馬鹿だが、無謀ではないようだった。
「だったら、俺達よりも弱くて、手頃な相手、しかも、夜になったら向こうから来てくれる相手の方が、良いに決まってるさ」
「ふむ、青岸にしては考えておるな」
ブッチデヨの失礼な発言に、子供達が色めきたつ。
俺も多少、苛立たされるわけだが、それは置いておいたとしても、ブッチデヨにはちゃんと言っておいた方が良いのかもしれない。
「とにかくだ、今夜、ストラと接触するぞ。奴をこっちに引き入れて、戦力を増やす」
「今夜…、とするなら、もう、今ではないのか?」
そう言われて、俺は思い出す。
定時である17時過ぎに俺はブッチデヨによって、この灰色の中に入れられてしまったのだ。
つまり、ストラがこの建物の調査を始めるまで、あまり時間がないという事だった。
「今、何時なのか、誰か分かるか?」
問い掛けるが、誰もが首を横に振る。
何十年もこの灰色の中で暮らしている子供達は仕方ないにしても、ブッチデヨは時間を把握していても良さそうなものなのに、意味が分からない。
「えっと…、時計を見る方法は?」
子供達が先導してくれる後に続きながら、俺とブッチデヨは並んで歩くわけだが、随分とそれが滑稽に思えた。
「青騎士、時計だよ!」
灰色の先に時計があった。
場所はどうやら、例の6階のようだった。
「うーん、まだ早いか…」
19時を回ったところだった。
残念ながら、館内にはまだ、人も残っている事だろうし、ストラも外から建物を眺めて欠伸でも噛み殺しているだろうと思われた。
例の油断ならない守衛の事を考えれば、灰色から出て待ち伏せというのも得策ではない。
子供達に命じて灰色を閉じさせ、外の世界から再び隔絶される。
何やら、もう、外の世界よりも、灰色の世界にこそ馴染んでしまっている自分に苦笑するしかなかった…。