複雑なるジョージ
「ここは…?」
「よぉ、気分はどうだ?」
見知った顔がそこにはあった。
こいつがここにいるという事は、思い出していく様々な事柄が夢ではなかったのだと、理解していく。
「青岸、お前は俺に何がして欲しい」
単刀直入に聞く、回りくどいのは苦手なのだ。
「俺と一緒に、世界征服をしてくれないか?」
「ああ、分かった」
即答する俺を見て、青岸は驚きを隠せないようだった。
「構わないのか…?」
「俺はお前に従う、その約束は叶えよう」
誰にも知られず、誰にも忘れられて、孤独に死んでいくだけだった俺を救ったのは、青岸だ。
世界征服なんて笑い種だが、戦う舞台をくれると言うなら、悪くない話だ。
「これで、世界征服は出来たも同然だな!」
「いや、それはどうだろうな。俺は全力でやるが、再び、最強と戦ったとして、勝算は高くないぞ」
次は、奴の左腕を奪えるだろうか。
正直、その自信はない。
「いや、ジョージは勝つよ。この灰色の世界に来てくれた時点で、ジョージは誰にも負けなくなった」
そこから聞かされた話は、あまりに荒唐無稽で信じられない部分もあったが、俺が瀕死の状態から完全に復活した事に対する説明にはなった。
「…という事は、俺は死ねない…、いや、死ななくなったわけだな?」
「そうだ、死なないんだ。死なないジョージは誰にも負けない、絶対に!」
まあ、間違いではない。
これで、俺は最強にすらも負けなくなったわけだ。
虚しさを感じなかったわけではない。
だが、それでも、青岸には恩義を感じていた。
「俺の力をお前の野望の為に、存分に使ってくれ」
「ああ、頼りにしているぞ!」
青岸は子供のように無邪気だった。
そして、俺は残酷なくらいに冷静だった…。