ジョージの執心
俺の右拳は確かに手応えを感じた。
しかし、俺の全身は灼熱を感じた。
全力を出し合った結果、俺は最強の一部を永遠に奪い、最強は俺の全てを終わらせた。
最強は何かを言っている、が上手く理解できない。
「…よ、よぉ、最強…さんよぉ、言ってなくちゃ不安か…?」
俺の攻撃は確かに当たった。
それによって、最強を動揺させるに至ったのだろう。
また、何か、言った。
「認めて、や、ルよ、…ホント、テメェは最……強、だ」
そう、認めるしかない。
認めた時、俺は終わってしまった。
最強が歩き去る。
それを見ながら、俺は動かなくなった、動けなくなった俺自身を蹴る。
すり抜けて、当たらない。
死んだのか、俺は。
最強はすでに去った。
もう、最強は俺を忘れているだろう。
奴は、そういう性格だ。
他はどうだ、誰が俺を憶えている。
俺は、『破天荒快男児』ジョージだ。
最強と戦い、敗れた。
そんなのは幾らでも存在する。
誰も俺の事なんて思い出しもしない。
もっと、戦いたい。
最強に敗れた有象無象ではなく、俺は俺を刻んでいきたい。
俺は戦い続けたいのだ。
自分の事を知って、俺は足掻くしかなくなった。
戦い続ける為に、俺が出来る事は。
死ねない、まだ。
再び見ていた、空を見ていた。
動けない、動かない。
「よぉ、ジョージ」
青岸だ。
何も言えない、何も返せない。
「死にそうだな、おい」
笑う。
声にもならないし、口許が歪んだかすらも怪しい。
「なぁ、ジョージよ、このまま死んじまって悔しくないか?」
悔しいに決まっている。
誰も、誰一人として、俺を思い出さずに死んじまうなんて、嫌だった。
それでも、もうどうにもならないって事くらい、自分が一番よく分かっている。
「俺に従うならさ、助けてやってもいいぜ」
何を言っているのだろうか、こいつの特異性は所詮、地形把握をする程度の代物だ。
「このままで終わっちまいたいなら、俺はここから去る。でもなぁ、俺に従ってでも生き残りたいって思うんならさ、目を閉じて見せな。それが合図だ、どうするよ?」
目を閉じるだけで生き残れるなら、青岸に従うだけで戦い続けられるなら、それは俺の願い、希望そのままだ。
ゆっくりと、俺は目を閉じる、そして…。