61/168
王子出発
スマホに着信が入る、カズトだ。
「お疲れ様です」
「厄介な事になった。今、こっちに来れないか?」
特に何事にも縛られていない身分だ、すぐに対応する事は出来る。
「何があったんですか?」
「話して説明するよりも、こっちに来てもらった方が良いと思う」
カズトの声には焦りがあった。
どうにも、普段の彼らしくない。
「分かりました、今すぐ向かいます」
「頼むよ」
通話を終えた後、俺は特に意味もなく、スマホの画面を見ていた。
「まあ、行かなくちゃ分からないか…」
そう呟いたが、十中八九、『灰色』と『子供達』の件である事は想像できた。
何か、進展があったのだろうか。
だが、焦っていたという事は良くない状況にあるのだろう。
戦力が必要なのだ。
「久し振りに暴れるか」
自転車を使う事にする。
置き場所は考えなければならないが、まあ、構わないだろう。
ペダルに足を掛け、さあ、出発だ…。