殺意の襟櫛
「青岸、どこだ!」
フロア内を駆け巡る。
さっき、青岸に遭遇した場所に戻っても、そこにはブッチデヨとストラしかいなかった。
こいつらを殺しても、何の意味もない。
主観性を持たない雑魚だし、結局、青岸を殺さなければ意味がない。
しかし、肝心の青岸がどこを探しても見つからない。
「おっちゃん達、さっさと逃げれば良かったのに…」
どこに行っても死体だらけだ。
中途半端に特異性なんかを持っているせいか、フロアにいた男達は戦う事を選択し、無惨に殺されていた。
一瞥し、祈りの言葉を短く呟き、すぐに気持ちを切り替える。
「青岸、どこにいる!」
やがて、青岸の姿が視界に入る。
中央にある向い合わせの机に肘をつき、椅子に偉そうに深々と座っていた。
「よぉ、襟櫛、来たか…」
「俺に向かって、言葉を吐くな」
笑う、青岸が。
どこに、そんな余裕があるのか、仮にあったとしても、すぐに無くしてやる。
「死ね、青岸!」
最短距離で、最速。
下手な小細工なしで、ただ、真っ直ぐ。
左の一突きで心臓を貫き、右の一薙ぎで首を斬り飛ばす。
青岸が消える、そして。
視線を転じ、後方。
「痛い…が、死なないな」
灰色の子供達と同じ原理、殺せない不死者というわけだ。
「だったら、その痛みを数十、数百、数千と刻んでやるよ。お前の気が狂うのが先か、俺が力尽きるのが先か、試そうぜ」
「断る、俺には大望がある。お前みたいなこの場での殺し合いにしか興味がない奴と遊んでる暇はない」
「黙れ、もう一度死ね」
動き出そうとした瞬間、青岸を守るように子供達が次々と出現する。
「何だ…?」
「青騎士は殺させない!」
「僕達が青騎士を守る!」
「アオキシ…?」
発音が引っ掛かる。
「邪魔するなら、皆殺しだ」
呟いた言葉は少し離れた場所から響いた山田の声に掻き消される。
逃がしたはずの彼が何故、今、叫んでいる。
「気になるか?今なら、見逃してやってもいいぜ」
「あぁ?」
「ブッチデヨとストラが山田の相手をするとして、お前はどっちが勝つと思う?」
山田に決まっている。
しかし、青岸の自信は何だ。
さっきから、こいつは自信満々だ。
それが、妙に引っ掛かる。
山田がいるであろう方に視線を向け、迷う。
その一瞬で、視線を戻した時には青岸と子供達の姿は消えていた。
「逃がしたか、クソッ…」
舌打ち、がすぐに切り替える。
青岸の言葉ではなく、自分で選択して俺は山田の方に向かって駆け出した…。