メアリの苦悩
「全員、揃いましたね」
確認するように言いながら、溜息を吐きたくなった。
かつて精鋭揃いと言われた組織が、今ではこんな小粒な者達の集まりと化している。
そして、私は彼らを率いて、あの『最強』に、あの『破天荒快男児』ジョージに、さらにはあの建物に挑まなければならないのだ。
「今回の最優先事項は、あの建物の問題を解決する事です」
そう告げた途端、ホッとしたような、弛緩したような空気が流れた。
それは澱みのようであり、流す事の出来ない代物に思えた。
しかし、敢えてそれを無視する。
すでに、組織内には『最強』の裏切りが伝わっていて、組織が裏切り者を放置しない事を知っている上に、視認できる場所で最強とジョージが異次元の如き戦闘を繰り広げているのだから、それに関わりたくないと考えてしまうのは無理からぬ事だった。
「建物の問題を解決した後は、裏切り者の掃討を開始します」
誰もが視線を交わさず、だが、お互いの思惑を探ろうとしている。
「今、『最強』とジョージが戦っていますが、最終的には『最強』が勝つでしょう。しかし、相手はあのジョージですから、『最強』とても無傷では終われないでしょう。恐らく、満身創痍になりますので、倒すのは造作も無いと思います」
希望的観測だ。
しかし、それでも、幾分かは気持ちが盛り上がったようだった…。