ジョージ、猛る
「結局、俺の事は俺が解決しねぇと、このまま逃げてばっかってのも癪だな」
かつて、俺が壊れてしまった建物は今、未曾有の大惨事に陥っていた。
そこに未練はなく、同情心もないが、確かに俺はここで生きていたのだ。
指を鳴らし、首を鳴らし、肩と腕を大きく回す。
口笛を吹く。
悪くない。
いや、気分は最高だ。
最上の獲物が今、俺の視線の先にいる。
「久し振りだな、最強!」
誰からも『最強』と呼ばれる男が、ゆっくりと振り向く。
僅かに小首を傾げ、口を開く。
「…『破天荒快男児』ジョージ、か」
「俺の存在にいつから気付いていた?」
「気付く?自惚れるなよ、ジョージ。お前がここに来る事は、最初から分かっていた」
相変わらず、不遜な自信家だ。
「まあ、何でも構わねぇ。おい、最強、死んだら恨んでも許してやる」
「お前が俺を殺す?笑えない冗談も大概にしておけ」
「話し合いに来たんじゃねぇし、殺るか…」
「じゃあ、飛べ」
最強は1ミリすらも動かなかったが、凄まじい衝撃波が襲ってくる。
「舐めんな」
蹴りで弾き飛ばす。
俺の『破天荒快男児』は、右拳から放たれるものが最大の威力を誇る。
この程度の遊びでは、本気を出す気にはならない。
「飛ばなかったけど、飛ばせねぇのか?」
また、1ミリすらも動かず、今度は連続で衝撃波を放ってくる。
俺はそれを適当に足であしらいながら、退屈げに欠伸をしてやる。
やがて、最強が動いた。
その瞬間に生じた衝撃波には流石に俺も、左拳を突き出していた。
「飛ばねぇな?」
「飛べ!」
「飛ばねぇよ!」
お互いに、全力全開、右拳を突き出していた…。