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王子が困る
組織を裏切った俺に、ピンチが襲っていた。
お金が無い。
「ま、そりゃそうか…」
別に甘く考えていたつもりは無かったが、組織の動きは迅速にして苛烈だった。
すでに、俺のありとあらゆる口座は封鎖され、手持ち以外に金は無い。
「こんな事でアイツらを頼るってのも何だしなぁ…」
頭の中に浮かぶのは、あの不気味な建物の中、『灰色』から生じし『子供達』と共に戦った仲間達の顔だった。
「仕方ないな。何か、働くかな…」
結局、これからの人生を考えるにしたって、働かざる者食うべからず、ではある。
まあ、4月からの手は打っているから、とりあえず、3ヶ月を凌ぐ必要がある。
出掛ける支度を手早く済ませ、外に出る。
外は生憎の雨、雨、雨。
中で見ていた感じよりも、明らかに強く降っている。
「今日はなぁ…、やめとこうかな?」
迷った挙句、意味もなく、スマホを取り出した。
そして…。