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名前を呼ばれて
ネックストラップ式の名札がズラリと吊り下がっていた。
その中から、明らかに急拵えと思われる場所に、俺の名札が吊り下げられていた。
「出勤時にそれを取ってロッカールームに行って欲しいんだ。ロッカーの中にネックストラップが入ってるから仕事中は首から提げておいて、退勤時にここへ返却する。分かったかな、青岸君?」
頷きながら、呼ばれ慣れていない響きに、くすぐったい感覚になる。
少し前まで、俺は赤川と呼ばれていた。
まあ、何て事はない、俺みたいな素性の人間には珍しくもない偽名というやつだ。
一応、ちょっとした好みがあって、前は色で、後ろは前回からの流れを意識している。
つまり、赤が青になり、後ろは川岸という熟語になる。
次は、岸壁で黒壁なんていうのも良いかもしれない。