弱さ
家に帰って、吐いた。
吐きまくった。
組織なんかにいる以上、特異性なんかを使う以上、人なんて両手両足の指では足りないほど、殺している。
それなのに、まるで慣れない。
向いてないのかもしれないが、逆に向いている奴の方が希少だろうし、その点において、俺は凡庸だったというに過ぎないのだろう。
もう、すでに朝になっているが、何もやる気が起きない。
そもそも、本来ならば、昨夜の『最強』を皮切りに、今日から今週を目一杯使って、あの現場に入っていたメンバーと接触しまくり、情報を集められるだけ集めてやろうと言う目算だったのに、それも叶わないのだ。
非協力的な『最強』、どこかに身を隠してしまったジョージ、裏切り者の王子というラインナップでは、手のつけようがない。
「まあ、ヒントは貰ったが…」
ジョージの言っていたキーワードは、2つだ。
『子供達』と『灰色』。
実際、考えてみても、まるで意味が分からない。
あの現場は倉庫であり、子供がいる可能性は極めて低い。
働く女性の為に、託児所みたいな場所を設けているのだろうか。
そして、『灰色』の方だが、それは色としては当然、理解できるのだが、それがどこの色なのかは分かりようがない。
「結局、来週の月曜になって現場に戻って、『ビルメン』を使うしかないか…。あぁ、こんな事なら、今日も働けるって言っとくんだった」
まあ、考えていても仕方がないので、俺は気分転換に外へと出る事にした。