お開きならず
「動揺して、フェイントもかけずに突っ込んで、適当に振られた拳に当たるなんてな」
運が悪かったのか。
いや、やはり、ジョージが強いのだ。
「解説は分かったから、これからの事も考えて欲しいものだね」
その時、天啓が閃いた。
ああ、当然、ジョージへの対処法の方ではなく、何故、この嫌な奴を絵に描いたような信長が、俺を助けてくれたのかという方だ。
「つまり、責任を押し付ける相手が欲しかったわけだ」
「まあ、否定はしないよ」
「いや、そこは否定しろよ」
「それよりも、大事なのはこれからの事だよ。王子以外の裏切り者は死んだわけだし、これでお開きという事になりそうかな?」
残念ながら、お開きとはなりそうに無かった。
それは、ジョージだけがやる気になっているというわけではなく、三超将軍も満を持してという感を見せていたからだ。
「今、仁右衛門とスサノオ、シャリが殺られた今、ジョージと三超将軍が殺り合ったら、どっちが勝つと思う?」
「君は馬鹿にするだろうけど、僕はジョージが無理な相手だとは今でも思えないんだ」
「そうか…」
確かに、ジョージには穴がある。
シャリは負けたとはいえ、それを証明して見せた。
「で、実際のところ、お前は三超将軍の戦いを見た事があるか?」
「無いよ。でも、それは君もそうだよね。と言うよりも、組織のメンバーほとんどが彼らの戦いを見た事が無いんじゃないかな?」
まあ、その通りだ。
彼ら三超将軍の役割は、道筋を示す事。
常に、3人で行動し、他の介入を許さない、認めない。
そして、あの現場では、その道筋が誤った。
結果、複数の裏切り者を出し、ジョージが狂い、『最強』が何も得られなかった。
忸怩たる思いが、彼らにはあるのだろう。
やがて、彼らはジャンケンを始め、1人がガッツポーズを、1人が苦笑して肩を竦め、もう1人は仏頂面をした。
そうして、ガッツポーズを決めた近江が1人だけで、ジョージに近付いて行く。
「お、おい、まさか…、この期に及んで、一対一で戦うなんてつもりじゃないだろうな、奴らは?」
「君は何も知らないんだね。彼らは、『最強』やジョージが来るまで、組織の三強を誇っていた面々だよ。現ランク2位のジョージが相手だからといって、三対一で戦うわけがないじゃないか」
そんな屁理屈なんて、知った事ではない。
「相手は、『破天荒快男児』ジョージなんだぞ!プライドとか、そんなのにこだわってる場合かよ!」
俺の叫び声も虚しく、近江は親指を突き立て、ガハハと笑っていた。