かつて、と今
消える、とほぼ同時か、ジョージの後方に出現したシャリの右手は少し血に塗れていた。
そして、ジョージの右腕から、出血も確認できた。
あのジョージに、組織のランク2位であるジョージに傷をつける、それは誉めてやりたいところではあったが、実際のところはそうでもない。
ジョージの強さは、防御無視の超攻撃特化にあり、そこが彼をして『最強』よりも格下扱いにされる原因ではあったから、多少の傷は折り込み済であるのだ。
また、シャリが消える。
今度は彼を追わず、ジョージを見ておく。
鮮血が上がる、鮮血、鮮血、鮮血。
「確かにこの戦法なら、最終的にジョージを殺せるか…」
かつてのジョージならば、これでは殺せなかったはずだ。
だが、今の彼ならば、この戦法は有効だった。
ただ、闇雲に『破天荒快男児』を振り回しているだけの彼では、ここで終わるのだろう。
「こんだけ騒がせておいて、その程度なのかよ、ジョージ…?」
俺の失望に応じたわけではないだろうが、唐突にジョージが駆け出した。
逃げた、そう見えた。
勿論、ジョージを追い払ったというだけよりも、ジョージを殺したという名誉が欲しいであろうシャリは追いかけ、鮮血を上げ続ける。
それでも走り続け、逃げ続けて、ジョージの身は刻まれまくった。
「シャリがジョージを殺してしまいそうだね」
信長の呟きが聞こえた瞬間、ジョージが急反転して拳を突き出した。
逃げると見せかけ、反転して不意打ち。
「甘い」
「甘いね」
ほぼ同時に、俺と信長は呟き、ジョージの背中で鮮血が弾ける。
「落ちたな」
「最初からあの程度さ、彼はね」
「俺ヲナメるなァァァアァアァァァ!」
叫び声、それは断末魔のようであり、同情を覚える。
拳で地面を叩く、何度も何度でも、悔しそうに、鮮血を飛び散らせ続けながら。