道化の狂宴
滅茶苦茶に振り回しまくっていたジョージの右腕にいきなり、長い布が巻き付いた。
まあ、マフラーだった。
まずは、名を挙げたいわけか。
「だけど、流石に無理だろ」
「いやいや、仁右衛門はなかなかの実力者だよ。ジョージも苦戦すると思うね」
ジョージは一瞬の半分だけ、マフラーを見た。
だが、すぐに腕を引き、突き出す。
巻かれていたマフラーも、伸びていたマフラーも、伸ばしていた本体も、それだけで全て破裂してしまう。
「苦戦したか?」
信長が慌てて口を開いたが、幸いな事に何も聞こえなかった。
代わりに、不幸な事に耳を劈くような雑音ががなっていた。
「来た来た、もう1匹の雑魚が」
「今度はやってくれるはずだ!」
近寄って来て耳許で信長が叫ぶ。
相変わらず、雑音があまりに酷すぎて彼の声はほとんど聞こえないが、残念ながら汗臭さはまるで衰えを知らずだ。
少し距離を開けながら、俺は興味深く見ていた。
果たして、『雑音』という特異性はここから何を起こすのだろうかと。
名は体を表すのだとして、すでに雑音は生じているのだから、これ以上は予想がつかなかった。
スサノオはジリジリとジョージに近付いて行く。
近付いて、近付いて、近付いて、やがて、ジョージの眼前に立った時、無造作に振るわれた『破天荒快男児』によって、スサノオの頭部は見事に弾け飛んでしまう。
そして、同時に雑音が止んだ。
「で?」
信長を見やり、俺は問う。
彼も戸惑っているようだった。
だが、すぐに会心の笑みを閃かせる。
いや、閃かせたつもりなのだろうが、ニヤニヤ笑っているようにしか見えなかったのは、彼が道化だったからだろうか。
「来た、大本命だ」
その言葉には、俺も反論は無かった。
情報によれば、俺よりもランクは上。
『鬼速』シャリの登場だった。